大成功を狙うのであれば、いろんな人をごちゃ混ぜにして取り組んだほうがよい。

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエ イティブリーダシップ特論 第5回 江渡浩一郎さん(2020年6月15日)

 クリエイティブリーダシップ特論・第5回の講師は、メディアアーティストの江渡浩一郎さんです。
 江渡さんは、慶應SFC在学中(卒業年時から逆算すると1、2期生?)からメディアアーティストとして活躍され、インターネット関連の作品で数々の賞を受賞。2002年からは産総研の特別研究員として活動され、共創プラットフォームの研究に注力されています。

 日本でインターネットが普及する初期段階に江渡さんが様々な作品を発表されていた頃は、自分がベンチャーキャピタルに在籍して、いわゆる「ネット関連」の投資案件を追いかけていた時期に重なります。こちらは目先の投資回収を意識して、ユーザサイドの目線でビジネスとして早く立ち上がるのは何かという見方に固執していましたが(データだけで取引を完結できる音楽配信やネット証券に張ったりしていました)、江渡さんはずっと先を見て未来の「可能性」を探っておられたのですね。
 役割の違いと言ってしまえばそれまでですが、ビジネスサイドにいると「よくわからん世界」で何が考えられていたのかということを、大変興味深く聴かせていただきました。

 共創プラットフォームに関して特に興味を惹かれたのが、ダイバーシティとブレークスルー創出の相関性に関するお話です。
 メンバーの多様性と、そこから生まれたイノベーション(ここでは特許)の金銭価値の相関関係を分析したデータによると、多様性が高まれば失敗も増加するので平均値が低下する一方で、ブレイクスルー(金銭的価値が極めて高いイノベーション)は多様性の高いメンバーの組み合わせから生まれているとのこと。
 つまり、小さな成功・確実な成功を目指すのであれば、お決まりのメンバーで取り組んだほうが成功確率が上がるが、大成功を狙うのであれば、いろんな人をごちゃ混ぜにして取り組んだほうがよい
 そういえばベンチャーキャピタルにいた頃、よく「ベンチャーは『人』が一番重要だ」とか言って、いかにも仕事ができそうなバランスの良い経営陣が揃った企業に◎を付けたりしていましたが、資金を提供する側のそんな見方が、日本のベンチャー企業(今は「スタートアップ」と言わないと訂正されますね)を小ぢんまりとさせてきてしまった側面もあるのかもしれません。

 もう一点、質疑の中で「共創」ならぬ「競争」について、江渡さんが答えられた一言も印象に残っています。
 最初のユーザをいかに捉まえるかが重要で、そのためには使ってみたユーザが気持ち良く感じるものを創ることがポイントになるのではないか。江渡さんご自身がインスタグラムの初期の頃からのユーザで、とにかく使いやすくて気持ち良いから使っているうちに、自然にユーザが広がっていった、というご経験を踏まえてのご意見でした。
 これは、今まさに美大で学んでいることとドンピシャで、しっかり頭に残しておきたいと思います。

 

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