インスタライブは選挙中の握手と同じ!?【スペシャル座談会 後編】
若者の政治的リテラシーや政治参加意識を育む「主権者教育」をテーマに活動し、実際に高校で授業も行っている古野香織さんをゲストに迎え、データを元にZ世代の「選挙の捉え方」「投票に行かない理由」「大人世代の課題」などを学校総選挙の石井、吉田が伺ってみました。
学校総選挙スペシャル座談会 前編はこちら
対談者
古野香織
認定NPO法人カタリバ
みんなのルールメイキング事務局
石井大樹
CCCマーケティング株式会社学校総選挙プロジェクト責任者
吉田聡美
CCCマーケティング株式会社学校総選挙プロジェクト
日曜討論は怖い!
国会中継で寝ている議員などネガティブイメージが8割
石井: マスメディアの報道も、各政党の施策の不確定な要素やデメリットを含めて、有権者が比較しやすい情報ってあまり無いですよね。**特に若者の目線でフラットに情報を並べてくれたら、参考になって少しは投票しやすくなるのではないかとか思います。
古野: 最近、政治に関心を持ったという若い世代の人と話してると、政治家が自分の言葉でビジョンや政策を語ってるYouTubeやTikTokを見ている方が多いですね。テレビの話は、ほとんど出てこないです。日曜討論みたいな長い尺はそもそも見ませんし、対立チックで討論する「怖い」スタイルは響かないようです。あと、政治とか政治家っていう存在をプラスに捉えている若い人ってほんとに少ないですね。大体みんな汚職か不倫か、あとは国会中継で寝ている議員とか、そんなところばかりがネタとして消費されていっているような気がします。
古野: 政治家と生徒がディスカッションする現場を何回か見たことがあるんですが、だいたい終わると、生徒は「なんか、ごめんなさい」みたいなところから始まるんです。「政治家ってなんか汚いとか良くないと思ってたけど、今回話せて、ちゃんと考えてくれてるんだってことがわかりました」みたいな感じです。そういう直接的な温度感が伝わってくれば、きっとプラスに捉えられるんです。でも、若者の8割9割は政治や政治家をすごくネガティブに見ていると思いますので、それを変えるには、SNSがいいツールですよ。
石井: それ、本来はメディアの役割だと思いますけどね。番組の企画としては長いのであれば、テレビ局のTwitterアカウントで紹介してみるとかでしょうか。
インスタライブは直接語りかけてくれるツール
選挙中の握手と同じ!?
古野: ライブ配信とかやればいいと思います。インスタライブとか、Twitterとか、最近はよくやってますよね。政治家の方が来て若い方が質問しているというような。ああいうのはすごく興味持って見てもらえる。
吉田: 若い世代にとってインスタライブやTwitter配信は直接語りかけてくれている感覚があるみたいですね。オンライン配信って演者対多数の構図で自分はそのうちの一人だと思うんですが、若い世代からするとスマホを通じて自分に直接語りかけてくれている、一対一という感覚のようで。なので、言葉がダイレクトに刺さるし、感じることがあるようです。政治家がテレビのコメンテーターに向かってしゃべる言葉よりも、自分のための言葉っていう感覚なんですよね。
古野: そう考えたら握手してなんぼ、っていう本質は変わってないですね。一対一だから刺さるっていう。デジタルの空間で、いかにその握手みたいにコミュニケーションを図っていくのかが肝ですね。
メディアは記名情報を増やすと伝わりやすいかも
石井: WEBメディアの情報発信にしても、記名記事をもっと増やしてほしいなあと個人的には思っているんです。SNSは個人が見えてるじゃないですか。ただ、新聞もWEBも記名記事とそうでない記事が混在していて。ただメディアが発信している、というだけの情報だと若い人達からの信頼は薄れるんじゃないかと思うのですが、古野さんはどう思いますか?
古野: 私もそう思います。最近では記者さんがTwitterで「今日はこれを書きました」と記事リンクを貼っていたりするので、どの新聞だからというより、好きな記者さんが問題意識をもって取材されていているからこそ読みたいっていうのがあるんですよね。誰が言っていたかを今の若い世代はすごく気にしてるので、その人をフォローして、その周辺情報や関連情報を得るっていうほうが慣れているし、得意だと思います。
友達がフォローしてるから信頼する共感の世代
石井: 今の10-20代のように物心ついたころからSNSがある世代にとって、自分のほしい情報は、あんまり深く意識せずとも取りに行けるものなんですか?
古野: そうですね、共感の世代っていいますけど「自分の友だちがそれを支持しているとか言うからシェアする」みたいな観点で、情報を見たり評価したりする傾向がありますね。友達がフォローしている相手は信頼できるし、自分も無意識に共感するという感覚が生まれやすい世代です。
石井: 判断基準として友達は重要なんですね。
古野: あとは、気になるコメンテーターの人がある問題についてどう言っていてるかとか、政党についてどう言っているかを知ってから、自分は投票に行きましたって方も結構いるなって。逆にその人が言ってくれないと正解がわからないので、その人の話していることは無意識的に正解だって認識するっていうところはありそうだなと思います。
石井: 若者たちには正解を選びたい!失敗をしたくない気持ちが強い!という印象は個人的には強く持っています。そんな10〜20代が投票しやすくなるにはどうアプローチしたらいいんでしょう?
古野: そうですね。まず「不確定要素が多い」とか「正解がないこと」に対するアレルギー反応みたいなものは、できるだけなくしていきたいなと思います。何か意見を言うとか自分で判断することを、特に小中高生のところから体験ができるといいのかなと。それって政治的な有効性感覚だと思うんです。
古野: いま、NPOカタリバでは「みんなのルールメイキング」という事業に携わっています。生徒が中心となり先生や関係者と対話しながら校則・ルールを見直していく取り組みです。この経験を通して、身の回りの課題に気づき、当事者意識をもって行動する力や、社会参画への意識を高めていくことを目指しています。このプロジェクトでも、生徒自身が感じているちょっとしたモヤモヤ感とか違和感を伝えることを、まずは大切にしています。自分の意見がきちんと尊重されるっていう環境作りから、学校教育現場や社会全体でやっていくことが大事かなと思います。
自分ごととして刺さるイシューなら投票率が跳ねる!?
石井: 僕が今、学校総選挙をやっていて困るのは、10代〜20代の人たちから「なんで投票しなきゃいけないのか」と問われたとき。どう答えればいいのかすごく難しいなと思っています。若い世代の人たちは無目的に何か行動することに抵抗があって、意義や目的をとても大事にしている印象があるんです。「選挙って行くものだよね」とか「若者の声を届けにいかなきゃいけないから」とか言われるけど、若者世代がどんなに投票しても、高齢化社会で60歳以上の方に人数が勝てないって、わかっていますし。古野さんなら、どう答えますか?
古野: ざっくりいうと、投票や選挙って、あくまでも「自分たちがちゃんと見てるぞ」っていう指標面の一つで。そこが結局なくなってしまうことの危うさっていうか、怖さっていうのは絶対にありますよね。国民が主権者として、自分たちの間接的な代表が何を大事にして、何をないがしろにしようとしているのかを見て、投票行動として意思表示しているよということだと思います。
古野: それこそ今、若い人たちの投票行動は、イデオロギーベースというよりはイシューベースになっていると思います。ダイレクトに自分たちに関わるような大きいイシューなら投票するとか、自分達が行動する意味っていうのはすごくあると思います。自分ごととして刺さるイシューがでてきたときに、投票率が跳ねるかもしれないと感じるところはありますね。
社会の気になること10万人の若者にきいてみた
随時更新中
インタビューのほかにも「政治」「ジェンダー」「環境問題」といったテーマでマガジンを随時更新しています!ぜひご覧くださいね。