白い家|ショートショート
つい最近、私が住むアパートの横に、一軒家が建った。白い壁の、素敵な家だ。
築18年、1LDKの賃貸アパートに住んでいる私は、「どんな人が住んでいるんだろう」と、羨ましさと妬ましさの入り混じった思いで、気になって時々見ていた。しかし、いつまで経ってもその家に人が住む気配はなく、夜になっても電気がつくことはない。
――まだ引っ越してないのかな。
人の気配がなく、夜になると闇夜にぼうっと浮かび上がる白い家が、だんだんと不気味に思えてくる。
ある日、近くを通りかかると、白い家から人が出て来た。
――えっ?
思わず息を飲む。その家から出て来たのは、私と……別れた妻だった。2人とも、満面の笑みだ。
――そうだよな。あんな風に笑ってたんだよな。お互いに、ちゃんと顔を見て。
呆然とする私をよそに、2人は白い車に乗り、走り去った。
思い出した。
その白い家は、私と別れた妻が「こんな家に住みたいねー」と、思い描いた家だった。
目が覚めると、いつも見ているすすけた白い天井があった。
――変な夢だったなぁ。
そう思って何となくスマートフォンを見ると、別れた妻からの不在着信があった。
私は顔を洗ってかけ直した。
(了)
ネットラジオ「大原さやか朗読ラジオ 月の音色~radio for your pleasure tomorrow~」の「月の文学館」に応募し、採用された掌編です。
テーマは「夢の話」でした。
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