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MLB Column 2007: 10. イチロー選手の契約延長

【こちらのコラムは筆者がMLB選手エージェント事務所にてインターンをしていた2007年当時のブログからの抜粋です。当時の記憶を保存することを目的としているため、修正なしで掲載しています。現在とは異なることもありますので予めご了承下さい。】

⚾︎▶︎▶︎ イチロー選手の契約延長 ◀︎◀︎⚾︎

イチロー選手の契約内容の詳細に関する記事。

AP通信の記事が日本の紙面にも載っていたが、少し検証してみよう。

総額90Mドルのうち、契約金が5Mドル、そして25Mドルは引退後に支払いが行われるというのは、なんとも大リーグの契約らしいところであり面白い部分でもある。 Marinersは2032年までにこの支払いを完済すればいい。現在33歳のイチロー選手はこのとき58歳。たとえ40歳で引退したとしても、その後 18年間は毎年億単位の収入があるわけである。更に大リーグには、引退後5年目もしくは10年目からもらえる年金制度もある。今後の日本経済の状況によるところもあるが、イチロー選手が引退後も含めた人生設計をする上で、またMarinersが球団経営を行う上で、この契約内容はとても効率のいいものであるように思う。

さてそれでは、少々複雑であるその契約内容を見てみよう。

まず単純に年俸を計算するとこのようになる。

(契約総額-契約金)÷契約年数=年俸

(90Mドル-5Mドル)÷5年=17Mドル

このうち25Mドルは引退後に受け取ることになっているから、この年俸から5Mドルを引いた12Mドルが、実際に2008年から2012年の間に毎年イチロー選手が受け取る金額となる。

しかしここには、5.5%の利率が乗せられている。すなわちイチロー選手の年俸は、単純計算では17Mドルということになるが、MLBでは重要になってくる年俸総額の計算上、およそ16.1Mドルという額で計算されることになるのである。

これはMLBが戦力均衡を図るために実施している「Competitive Tax」通称・贅沢税の抜け道となり得る手段でもある。この贅沢税に関しては、別の機会に譲ることにするが、この制度の制定以降、球団側もいかにして選手年俸総額を少なく見せるか、ということに関してあらゆる手段を探っているのかもしれない。


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