Échecs
数年前に読んだイーニッド・ウェルズフォードの「道化」。
もう30年近く前に出版された名著。
道化の歴史を体系的にまとめた最初の本だとかなんとか。
翻訳の問題か私の理解能力の問題か、ちょっと読み辛かった。
道化の歴史を古代から遡って、
色んな地域・時代においての「道化」または「愚者」等の形態を書いている。
権力者が何故、愚者を侍らしていたかという考察は実に興味深い。
リア王とかね。
詳しい内容は、不愉快になる方もいると思うので割愛。
その中で17世紀(だったはず)フランスの愚者集団のことが書かれていた。
彼らは「狂った母」「愚者の王」「無垢な子供(うろ覚え)」等と言われ、
すさまじい乱痴気騒ぎをするらしい。
そのなかで非常に興味を引かれたのが、
「彼らは祭りの際全ての価値を転覆させ、何もかもをあべこべにしてしまうことができ、愚者が聖職者になって出鱈目なミサをしたりする…」という説明。
ここで・・・ふと思い出されたのがチェス。
始めてフランスでチェスをした時の事。
駒の名称を教えてもらったとき、一つを除いて基本的に全て同じだった。
その一つとは将棋の角の動きをするビショップである。
そもそもビショップの駒は、
チャトランガというチェスの元になったという盤上ゲームの象の駒が、
恐らく駒のデフォルメの過程か何かで頭の部分が司教冠に似た形になり、
間違えられてイギリスでビショップと呼ばれるようになったとされている。
詳しくはチェスの歴史などを参照されたし。
さて、その問題のビショップの駒。
フランスではなんと呼ばれているかと言うと、
「Fou」つまり「愚者」なのだ。
フランスでチェスをする度この呼び名の由来をフランス人に聞いたが
誰も知っている者はいなかった。
当時私は教会権力を虚仮にするためにつけたのか?などと考えていたのだが、
愚者集団の一人が司教冠をかぶり司教の代行をすることと、
チェスのフランスでの普及の時期とを関連付けて考えると、
一考の余地はあるのではないかと考えたわけである。
縦横無尽に狂った様に街中を走り回る姿を駒の動きを重ねたのでは!?(強引)
先日の電車の中でチェスの本を読みながら思いついたことなので
実際色々資料を漁らないとなんともいえないが、
この謎が解明できれば、何かすごく嬉しいと思う。
点と点が繋がり線になるのか・・・
なーんて一人興奮してたんやけどさー、
先日ウィキペディアのフランス語版でチェスのページを閲覧していたらさー、
名称に関しての語源が説明されていたわ。
「Fouの語源は、この駒本来の名称である古代ペルシャ語のFoule(象)が由来である。その後時代が下りフランス古語のFol(キ〇ガイ)に音が似ていたことによりFouと変化した云々…」
ガーン…
こ、答えはこんなに近くにあった…