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渋谷らくご(20年11月17日 20時)

■演目
一、 あくび指南(あお馬)
一、 お血脈(寸志)
一、 マザコン調べ(百栄)
一、 猫の恩返し(福笑)

■所感
祝、六周年!
11/17(火)20時会は古典→古典→新作→新作と馬鹿馬鹿しい中でも更に尻上がりに馬鹿馬鹿しさが増していく、楽しい会。ゲラゲラ笑い過ぎて終演後には心地よい疲労感に包まれた。

あお馬さん「あくび指南」。
コロナ禍での進化する落語の仕草が面白い。新しい生活様式という要素が増えたこと自体も面白いが、その仕草で何をしているかが観客全員が共有認識を持っている点が更に面白い。たかだか6ヶ月強で常識が塗り替わってしまった、新しい概念が定着したことに驚いた。本編「あくび指南」。指南所の奥様に惹かれて云々の件は無く、単純に欠伸に魅せられたというアレな感じが増した形。指南所の欠伸師匠が列挙する欠伸の型、単に列挙で終わらず、その中から一つを例示するのが面白い。師匠も、仮弟子もバタバタはしているが騒ぎ過ぎず、どこか上品な感じで噺が進んでいくのが心地良い。

寸志さん「お血脈」。
寸志さんが語る枕は着眼点が面白く、またクローズアップする部分の見せ方が巧いので身辺雑記も楽しい楽しい。お血脈は善光寺建立の経緯と、地獄の入居人対策の2部構成だが、特に善光寺建立に係る仏像のキャワイイ口調と話す内容の渋さのギャップが面白い。必要以上に仏像の大きさに言及して、これでもかと大きさをネタにする、そのしつこさが“ぽくて”見ていて楽しかった。

百栄師匠「マザコン調べ」。
前方のあお馬さんと寸志さんの寸評……初めて噺を聞いたという中々に面白失礼から開始。失礼をテーマに枕を振って、観客の『あれ?!アノ噺するのかな?』という期待を煽ってから本編「マザコン調べ」。登場人物の強烈なキャラクターが煙幕となり、角度を変えると人物の見え方が全く違うという中盤以降の展開の妙が嬉しい裏切りとして表れる。現代版と言いつつ、因業な大家と啖呵を切る店子という関係性が、立場の上下が入れ替わっているが故に設定と相まって非常に楽しい流れになっている。全てが巧い。本家「大工調べ」でお馴染みのフレーズが効果的に使われており、文言はほぼ同じなのに全く聞こえ方が違う、という楽しい体験。ゲラゲラ笑った。

福笑師匠「猫の恩返し」。
百栄師の勢いが色濃く残る中、自己紹介がてらの時事枕。要素と要素を畳み掛けつつ、或るフレーズに着地する、というセットを何回か繰り返して、この師匠はどういう方なのか、笑っていいのか悪いのかも含めて会場全体に共通認識が浸透していく。あ、(良い意味で)不謹慎な人だ。笑っていい人だ。という共通認識が構築された後に本編。猫も人間も、阿弥陀如来も、欲に正直で非常に人間臭くて面白い。小林旭「自動車ショー歌」がシブラクの会場で受け入れられている奇跡を目のあたりに出来て楽しかった。
以上

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