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「「幸せ」をつかむ戦略」が出来るまでの僥倖ーその6ー

<前回までのあらすじ>
あれよあれよという間にダンアリエリーとの面会が実現した漢。
ダンの話は滅法面白く、3時間があっという間に過ぎた。

史上最高に濃密な3時間となったインタビューで、疲れと達成感のちゃんぽんとなった漢だったが、程なくしてオフィスのキッチンで振る舞われ始めたワインのご相伴に預かれば、瞬く間にガス欠解決。

聞けば50名以上の社員が全員行動科学のPhDとのこと。通りで皆さん理知的な雰囲気である。トロントらしく色々なエスニックの人が入り混じっており、当初感じたアウェイ感は瞬く間に解消。

いい感じにワインが回ったら、洋画で良く見る、ワイングラスをフォークでチーンと鳴らす「学生注目」的なアレが目に入る。BEworksの共同経営者ケリーだ。
「今日はゲストも居るので、ディナーに行きましょう」
カナダに降り立った女性三蔵法師、と言った風情。春のひだまりのようなうららかさ、穏やかさで大軍をイタリアンのレストランに導いてくれた。

北米で頂くイタリアン、というと、ともすれば茹ですぎたさぬきうどんに数えきれないミートボールが投入されている物体と格闘しなければならないコロシアムを想像するが、そこはBEworksの皆さんのチョイス、自由が丘あたり裏通にある隠れ家的な抜かりなさ。
供される料理も、ベジタリアンが動物系タンパク質として魚のみを自分に許すペスカタリアン。中性脂肪と闘う身としては、願ったり叶ったりである。

インタビューと比べれば、今度はとてもリラックスした3時間を過ごし、宿に戻って夢の中で時間による選好の逆転だ損失回避バイアスと一頻り格闘したならば、時差ボケ中とは思えない爽やかさの目覚め。

晩ご飯の様に盛ったビュッフェプレートで極東のミステリーをさりげなく主張した後、山下さんと向かったのはオンタリオ美術館である。
もちろん観光ではない。そこでBEworksのユーザーカンファレンスが行われるのだ。
入り口で受付を済ませると、カンファレンスのユニフォームとして白衣手渡される。アートに囲まれた勉強会という設定といい、白衣のドレスコードといい、徹頭徹尾洒落ている。

「最後通帳ゲームは、現金でないものを対象にすると提案が異なってくる」という面白い実験、トロリーゲームでの選好が国やカルチャーで全然違う、という考えさせられる話。次々に飛び出してくるレポートに好奇心はとめどない。

かくして至福の2日間は大団円を迎え、ダン、ケリー、松木さんと固い握手を交わし、一行は美術館を後にした。
編集者とマーケターとして、10年近く行動経済学を追ってきた2人は、ダウンタウンの高層レストランがテーブルで、眼下にトロントの眺め愛でながら、地のクラフトビールで興奮に拍車をかけていた。

*つまりはこの本ができるまでの物語です。本日は日経クロストレンドでやっていただいた特集をご紹介

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00271/?i_cid=nbpnxr_right

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