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19.自分だけの仕事から組織としての仕事へ

「一人で商品に向き合うのが仕事」という職人のようなクリエイターもいます。でも一人でできることなんて多くはありません。起業してブランドを大きくするためには、関わってくれる人、応援してくれる人を増やしていくことが欠かせません。なかには人に何かを頼むことが苦手、自分でできることは自分でやるべき、という人もいますが、それでは事業を大きくするのが難しくなってしまいます。

こんにちは。台東デザイナーズビレッジ村長の鈴木です。このNOTEは著書「好きを仕事にする自分ブランドの作り方」の内容を分割して紹介しています。モノづくり系クリエイター(アパレル、皮革、ジュエリー、クラフト、雑貨など)が独立起業して自分のブランドを作り、ビジネスを育てていく内容になっています。

テーマ25:自分だけの仕事から、人と関わることが仕事に

クリエイターとして一人で仕事を始めても限界があり、事業規模を拡大させてながら組織化をしていくことになります。個人から企業へ、に向かうための話です。

◆応援してくれる人との協力関係

手作りからビジネスに変えていくときの大きなポイントは、自分だけでする仕事から人との関わりで仕事をするようになることです。
クリエイターには、モノを作る表現者としての側面と商品を売りブランドを大きくする経営者としての側面があります。どちらにとっても、人との関わりは大切。人と関わらずモノとだけ向かい合い、好きなものを作ることが個性で、それがビジネスになると信じ込んでいる人もいます。しかし、モノとだけ関わるのは、自分のなかの資源だけを用いている状態。つまり、自分にできることしかしていないのです。できることだけしていては、成長はありません。

自分のブランドの売り込みに必死になり、相手の立場や気持ちを考えられないようでは、たとえ商品を見てもらえたとしても相手が応援してくれるようにはならないでしょう。
ビジネスの先行きが不安になると、どうしても自分の心配ばかりに。その結果、周囲を気遣う余裕がなくなり、トゲトゲしくなって付き合いづらくなります。そして、助けてもらって当然とばかりに感謝をしなくなりますから、それまで応援してくれていた人からも見放されることも。

例えば、人に話を聞いてもらいたかったら、何をするべきだと思いますか? 答えは、相手の話を聞くこと。相手に自分の作品を評価して欲しいなら、自分も相手の話の内容について感想を伝える。話を聞かせてもらったことを感謝する。商品やポートフォリオを見てもらったら、きちんとお礼をする。そういう礼儀が大切。

創業者は、自分だけでは仕事が成り立ちません。評価して引っ張り上げてくれる人と、後ろから応援して押し上げてくれる人が必要です。引っ張り上げてくれるのは、主にメディアやバイヤー。工場が押し上げてくれる人です。
もしこれらの人が周囲に見当たらないのなら、ギブ&テイクのギブを忘れて、テイク&テイクになっていないか、見直してみてください。応援してくれる人がいるかどうかは、ビジネスを伸ばすうえでとても大切なのですから。

そもそも人と人とが関われば、新しいことが生まれる可能性があります。たとえそれが直接仕事と関係がない人との交流であっても、決して無駄ではありません。人との積極的な交流は、ビジネスにもプラスになります。
挑戦も勇気も葛藤も不安も怒りも、すべて人との関わりによって得られるもの。応援してくれる人との関係を良好に保つのは基本中の基本です。

◆不安を感じさせない配慮

創業期には、信用を高めることが何より大切です。
最初の段階では、取引しても大丈夫だという安心感。この安心感を作るために配慮していますか?

例えば、名刺にしても、プリンターで出力したものをいい加減に切っていれば、仕事がいい加減だと思われます。パソコンの標準フォントを使っていれば、こだわりが低いと受け取られるかもしれません。角が折れている名刺を渡されれば、相手への配慮に欠ける人なのだなと判断されます。名刺ひとつでも相手に安心感、不安感を抱かせることができるのです。
名刺に限らず、展示会や電話での対応、販促ツールの有無や出来など、顧客との接点になるすべての場面において、不安を取り除くためにやるべきことがたくさんあります。

星の数ほどブランドがあり、たくさんの商品がある状況では、不安を感じるブランドとわざわざ取引する必要はありません。
まず、お金をかけない範囲で、信用を高める方法を実践しましょう。そして、どの方向から見られても、不安を感じさせない体制を作り上げることが大切です。

ブランドや商品のイメージを考えることも重要ですが、それは本人の信用という土台の上に作られるもの。この土台がなければ、イメージも活きてきません。ビジネスにおいて、信用は不可欠です。

◆法人化して信用を高める

どうしても信用を高めたいなら、法人化したほうがいいでしょう。百貨店などとの取り引きで、取引口座を開くために法人化を求められることもあります。法人化によって得られる信用がビジネス上の優位性につながる場合は少なくありません。若手デザイナーは、信用不足から取引先に不安を感じさせてしまいがち。株式会 社の代表取締役になるのは、不足する信用を高めるためにとても効果的です。大きくても小さくても、社長は社長。役職上は相手と互角に渡り合えるのです。
複数のメンバーで事業を行っていて、個人事業主同士では事業経費や仕入れ、売り上げなどの分割がややこしくなる場合も法人化したほうがいいでしょう。

ただし、設立にも会社の維持にも手間と費用がかかります。設立手続きを委託すれば30万円程度かかりますし、税理士にも年間20万~30万円の経費を支払わなければなりません。社員を雇えば、社会保険も必要になります。

また、法人化するタイミングも重要です。
年収が600万から800万程度になれば、法人化の検討を始めるとよいでしょう。法人化することで節税効果も出ます。急に売り上げが伸びて、消費税の支払いが多額になった場合も法人化がオススメ。資本金1000万円未満で法人化すると、2年間は消費税の支払いが免除されます。

◆企業体質を強める

誇大ともいえるアピールで無理矢理集客したときのことを考えてみましょう。期待度を高めると、顧客が満足を感じる水準も高くなりますから、相対的に満足度が低くなります。
感度が高いお客様は、展示会にしてもショップにしても、オープンして間もない頃に訪れるもの。本来、顧客として長く付き合って欲しいのに、無理矢理集めた多数のお客様の対応に追われて、手を抜いてしまったり、未熟な対応になってしまったり。これではせっかく来てもらっても「ここは口だけで、実力が伴わない」と判断されてしまいます。
このようなお客様は周囲に対する影響力があり、知らないうちに企業の悪い噂が広がる可能性も。

顧客の満足度を高めるという基本を忘れていると、お客様は逃げてしまいます。企業を成長させるには、派手な広告宣伝や売り込み、イベントで一時的に売り上げを増やすよりも、企業の体質自体を強くするほうが効果的なのです。


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