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22.合同展に出展する前に

ファッションだけに限らず、多くの業種で、新規の取引先を増やすために、展示会・合同展・見本市などに出展します。しかし単に出展すれば成果=取引先が増えるわけではありません。年々、ビジネスでは共有過剰な状態で、取引先を増やすことが難しくなっています。ではどうやって取引先を開拓していくのか、そのポイントについてまとめました。

※こんにちは。このNOTEはファッション・デザイン関連の創業支援施設「台東デザイナーズビレッジ」の鈴木村長が著書「好きを仕事にする自分ブランドのつくりかた」を素に書いています。

◆合同展出展のポイント

合同展に出展する際は、訴求・狙い・行動という3つの要素を組み合わせて出展商品やブースの造りを考えます。
訴求とは、お客様の購買欲求に働きかけること。その働きかけをブランド、商品、品揃えのいずれで行うかによって、商品のセレクトやブース演出が異なります。狙いは新規客開拓なのか、既存客のフォローなのか。目的は集客なのか商談なのか。それぞれを考え、プランニングしていきましょう。
何を狙い、そのために必要なプレゼンは? など、十分展示計画を立ててブースを造り、本番になったらお客様の反応を見ながら臨機応変に作り変えます。

気をつけたいのは、「商品や見せ方を絞り込むとターゲットが狭くなり、機会ロスにつながるのではないか」と心配して展示商品を増やしすぎること。
何をアピールしたいブースなのかがわからなくなり、ブランドとしてのインパクトが弱くなります。その結果、ブースへの集客は少なくなり、売り逃してしまうことに。まずは伝えたいことを絞り込んで印象を強くし、集客を多くする方法を考えましょう。本当に商品力があるのなら、ブース来場者による成約率は高いはずです。

十分にプランを立ててブースを造っても、予想したような反応が得られないときもあります。そんなときは、期間中にブースを造り替えたり、商品セレクトを変えたりと、臨機応変な対応も必要でしょう。

さて、合同展に新しいデザインを出すと大手にコピーされてしまうという話をよく聞きます。新進ブランドはデザインのユニークさやトレンドを斬新にこなすことで評価を得ますが、それを真似しようとする企業が多いのです。
知的財産をきちんと保護できないファッション関連業界では、対策も立てにくいのが現状。しかし、コピーされることを恐れて合同展に出展しないというのもバカバカしい。コピーされるのは市場性があるということですし、展示会に出ればビジネスになるのですから。
要は、コピー商品が出回る前にできるだけ利益を取っておくこと、販売チャネルを押さえておくことが大切。言い換えると、コピーされそうな良い商品ができたと思ったら、すぐに販売できる体制を整えておくことです。

◆バイヤーに見てもらう戦略を練る

出展成果は、「集客できたか」「ブランドの認知率を上げることができたか」「成約できたか」「客単価はいくらだったか」といったことで表されます。
つまり、来場者が多い展示会に出展し、ほかよりも目立ち、ブースに入ったお客様が買いたくなるような商品を提供し、できるだけ高価で多くの商品を購入してもらうことが成果になるのです。

若手ブランドの場合は、ブースへの集客数が足りません。これは、その先の成約率と客単価を考える以前の問題。ですから、まずは客数をできるだけ増やさなくてはなりません。展示会では人が集まっている様子を見て、さらに人が集まります。
そのためには、事前にバイヤーへの来場を促す働きかけが大切
ブースにほかのバイヤーがいることで、そのブランドは売れているという印象を与えられるのです。

ただし、商品を見てもらうだけでは、次につながりません。次につなげるために展示会では何をしたらいいのかを考えましょう。そして、バイヤーが次のような段階を踏むのを後押ししましょう。
「全くブランドについて知らない」
→「ブランド名を聞いたことがある・雑誌などで見たことがある」
  →「ブースがおもしろそう・興味を引く」
   →「ブース来場」
    →「商品に関心を持つ」
     →「欲しい・取引したい」
      →「他ブランドと比較して判断」
       →「取引しても大丈夫か検証」
        →「成約→満足→リピート」

「→」を促すには、それぞれいろいろな工夫や配慮が必要です。
次の段階に進ませるためにどのようなアクションをすればよいのかを考えれば、ある程度行動プランに落とし込めるようになるでしょう。
展示会には自分なりの目的をはっきり持って出展してください。

◆ダイレクトメールでの集客

展示会でもっとも重要なのは、集客です。しかしこれは、そう簡単にできることではありません。絞り込んだリストにDMを発送しても、来てくれるのは10%程度。まめにコミュニケーションをとっていたとすれば良くて30%、まったく初めてなら5%、何のイベントかわからないと1%程度でしょう。
集客率を高めるには、DMに力を入れることです。バイヤーにとっては新しいブランドを見つけるのも仕事のうちとはいえ、すべてのブランドの展示会に足を運ぶことはできません。数多く届く展示会の案内の中から、自分のブランドのDMを選んでもらうのです

では、具体的にしなければならないことはなんでしょう。まずはDMをいつ届けるかに注意です。展示会の遅くとも2週間程度前にはバイヤーのもとにDMを届けます。それから来場を促す連絡も入れましょう。

もちろん、内容とデザインも重要。まずは選ばれるために目立つこと。そして「自分がどうしてDMを送ったか」という理由を書いた手紙とともに、作品がよくわかるDM本体を届けましょう。
経験のないデザイナーは、どんなDMを出してもバイヤーが来てくれるものだと思ってしまいます。しかし、何の前触れもなく単なるイメージDMが届いても、多くの場合は読まずにゴミ箱行き。バイヤーに反応してもらう仕掛けが必要です。

バイヤーは、DMからいろいろな情報を読み取ります。ビジュアル・デザインからブランドの世界観を、文章からデザイナーの熱意を、文面・宛名・ひとことメッセージ・電話でのフォローから取引先に対する心配りを、DMのクオリティから仕事に対するこだわりや精度を、商品の写真から自分のショップのテイストに合うかを、所在地やホームページの有無から企業の信頼性を読み取り、感じ取るのです。 DMは入社試験のときの履歴書のようなもの。つまり、ブランドの一生を決めるものなのですから、大切に考えなくてはなりません。

※このNOTEは2010年発行「好きを仕事にする自分ブランドのつくりかた」の一部を再編集して公開しています。



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