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11.商品を考える<ニーズ・トレンド・オリジナリティ>

「商品はお客様が求めるものを」「いやオリジナリティが大事」「旬の売れ筋商品こそ大事」と立場が変わると商品についての考え方が変わります。あなたがブランドを作る場合はどれを重視したらよいのでしょう。

※このNOTEは2010年発行「好きを仕事にする自分ブランドのつくりかた」の一部を再編集して紹介しています。

テーマ17:マーケットから発想する

◆お客様が欲しいモノを考える

デザイナーのなかには、商品のデザインや素材ばかりにこだわり、それがどのように使われるかには興味がないという人がいます。しかし、商品の価値はそれを生活のなかでどのように活かすか、どのように着用するか、どんな魅力があるかによって決まるのではないでしょうか。
現在の買い控え傾向が強いマーケットでは、企画段階から消費者が憧れるライフスタイルの提案や使いやすいアイテムは何かを考えなければ、どんなにデザインが優れていても買ってもらえないでしょう。

お客様が欲しがるものを企画することは、売場がお客様に売りやすいものを提案することでもあります。作り手は、デザインは何かを考える前に、売り場に行って店長の話を聞き、お客様が欲しい気持ちを起こすためには何をしたらいいかをもっと知ったほうがいいでしょう。

◆オリジナリティとトレンド

デザイナーは、トレンドを捉えるのはブランドのオリジナリティを損ねると考えたり、マーケットに合わせた商品をデザインするのは自分の才能を押し殺すことだと思ったりする場合があります。
しかし、ビジネスの本質は、お客様が欲しい商品を提供すること。だから、消費志向の方向性を示すトレンドの活用が有効なのです。これは、色・柄・素材などのトレンドに限らず、売れるアイテムのトレンドについても同様です。

売れているブランドにとってマーケットの傾向やトレンドを捉えることは基本で、それを前提に商品開発を行います。他社も同じようにマーケティングを行い、競合関係になることもわかっていますから、同質化してしまうのは想定内。マーケットやトレンドを参考にしながらも、ブランドのオリジナリティで差別化を図ります。マーケット+トレンド+オリジナリティという3段構えで商品を企画するのです。
それに対して、売れていないデザイナーが考えることは、マーケットorトレンドorオリジナリティという3択。

マーケットやトレンドは、商品開発の基礎のひとつであり、それだけで商品が作られるわけではありません。自分の個性や創造力、デザイン力に自信があるなら、ほかの人と同じトレンドやマーケットを参考にしたアイテムやモチーフ、カラーでも、そこに自分らしい個性を出せるはず。もし、自分の好きなデザインでしかオリジナリティが出せないなら、まだまだ基礎力がたりないのかもしれません。

◆お客様が次に欲しがるものを考える

「デザイナーはマーケット志向であるべきです」と説明すると、短絡的な人は売れ筋商品のコピーをしてしまいます。しかし、それでは売れません。なぜなら、売れ筋商品は、デザイン・素材・価格・ブランドといったさまざまな要素が組み合わさっているから売れているのであって、デザインやモチーフだけマネしても、売れるようにはならないのです。
しかも、売れ筋商品のコピーは誰もが考えることですから、市場には同じような商品が溢れ、価格競争に突入します。価格競争になった場合、海外で大量生産できる大手メーカーが強いのは当然です。

マーケット志向とは、少し先に消費者が欲しがるものを提供すること。商品開発して売り出す頃には、市場の売れ筋はすでに過去になっています。だから、マネして生産しても遅いのです。
例えば、’90年代に大ヒットした紺のブレザー。後発で紺のブレザーに取り組んだメーカーは低価格競争に巻き込まれてあまり儲けが出ませんでした。このブームで儲かったのは、紺のブレザーを買った消費者が次に欲しがるものは何かを考え、ブレザーに合わせるシャツやベルトなどコーディネートアイテムを販売したところだそうです。これがマーケット志向ではないでしょうか。

ショップとの取り引きを考えても、すでに売場に置かれている商品のコピーでは扱ってもらえません。売場を見て、ここには何が必要か、次に何が加わればもっと売れるのか、この店のお客様は次に何を欲しがるのかという視点で考えなければならないのです。

売れているものをマネするのではなく、お客様がこれから欲しがるものを、高い精度で予測するのがマーケット志向ということ。すでにあるものではなく、先のものを作るのですから、デザイナーの発想力が重要です。特に新進ブランドの場合はデザインに鮮度が必要。売れ筋の二番煎じは避けなければなりません。
マーケット志向とオリジナリティは対立する概念ではないので、自分のオリジナリティを生かしながら、マーケット=お客様が求めるものを提供してください。

◆お客様の声を受け止める

消費者の96%は不満があっても伝えず、同じく96%は不満がある店には再び足を運びません。さらに、現場でのクレームが経営トップに伝わる確率は、1/50~1/1000ともいわれています。つまり、売っている本人・作っている本人がお客様の不満の声をもっとも知らないということなのです。伝わるのは褒め言葉だけなので、自分のブランドを過信して、買ってくれる人だけ相手にするようになります。
本来、お客様の声によって作られた商品こそ共感を得て売り上げが伸びるものなのに、商品開発を担当するデザイナーがそれを知らないようでは、売れる商品ができるわけがありません。売れない原因は「お店にお客様が少ないから」などと非難する前にするべきことがあるはず。お客様のナマの声や不満の声を知ることが必要なのです。

例えば、中高齢の消費者に海外ブランドの服が売れている理由を考えてみてください。購入する人に話を聞けば、「スタイルや着心地の不満を解消してくれるからこの服を買うのだ」と言うでしょう。身体とパターンを立体で捉えているうえに、上得意客に中高齢の人が多い海外著名ブランドは色・柄・シルエットという見た目だけではなく、着心地や機能においても優れています。お客様の潜在的な不満を解消するから喜ばれるのです。普段デザイナーは、このような不満の声を聞く機会はほとんど無いので、意識して話を聞くようにすべきでしょう。

お客様の言いなりになれということではありません。大切なのは、声を受け止め、それをいったん消化して、自分なりの解決策を提案することです。


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