戦う心構え

日本人は議論を避けようとする傾向にある。互いの理解のためには、対話が不可欠であるにもかかわらずだ。

映画「いまを生きる」を見た。

いわゆる名門校である全寮制学院ウェルトン・アカデミーに、同校の卒業生でもある英語教師ジョン・キーティング(ロビン・ウィリアムズ)が赴任してくる。彼はある日の授業で突然机の上に立ち、「私はこの机の上に立ち、思い出す。常に物事は別の視点で見なければならないことを! ほら、ここからは世界がまったく違って見える」と話し、生徒にも体験させる。キーティングの授業を通して生徒たちは自らの目で見、感じ、判断し、行動するようになる。

ニール(ロバート・ショーン・レナード)は、キーティングが学生時代に「死せる詩人の会」というクラブを作っていたことを知り、仲間とともにクラブを再興する。クラブで語り合う中で、生徒たちは自分が本当にやりたいものは何かを考え、行動し始める。

ニールは俳優を志し、「真夏の夜の夢」の主役の座を獲得する。しかし、それは厳格な父には内緒だった。舞台に立つことを反対されたニールにキーティングは父に自らの思いを伝え、説得するよう諭す。当日、父親はニールの芝居を見に来たが、俳優になることを認めず、ニールは拳銃自殺を遂げる。キーティングは生徒をそそのかし、自殺に追い込んだとされ、辞職させられる。

映画では、詳細には描かれなかったが、ニールは父親を説得しなかった。議論から逃げたと私は解釈した。それまで、何事も父親に従順に従い、優等生として育ってきたニールにそれはハードルが高すぎたということなのであろう。

舞台は、1950年代のアメリカであるが、現在の私たちもまた、同じ問題を抱えてはいないか。生徒の側になってみれば、親の言うこと、先生の言うことをよく聞く生徒を良しとしながら、突然、対話しろ、議論しろと言われても・・・・・・ということだ。目覚めさせたキーティングが悪いのか?勿論、そうではない。そこに踏み出すための何かが大きく欠けているのだ。

それは、対立を恐れず、理解するまで「戦う心構え」だ。「戦う心構え」なくして自立はありえない。戦う相手は、議論の相手だけではない。対立を恐れ、変化を恐れる自分自身の心もまた、そうである。

子どもたちに「戦う心構え」を身につけさせる学びは不要か?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?