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「東照公御遺訓」──実は池田松之介の創作

■東照公御遺訓


人の一生は重荷を負て遠き道を行くが如し。急くべからず。
不自由を常と思へは不足なし。心に望みおこらば困窮したる時を思い出すべし。
堪忍は無事長久の基。怒りは敵と思へ。
勝つ事ばかり知りて負くる事を知らざれば、害、其の身に至る。
己を責めて人を責むるな。
及ばざは過きたるよりまされり。

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 「東照公御遺訓」は、徳川光圀(水戸黄門)の遺訓とされる「人の戒め」をもとに、明治時代に、元幕臣・池田松之介が創作し、徳川家康の花押を付けた偽文書であり、高橋泥舟らが各地の東照宮に納めた。

  池田松之介の凄いとことは、徳川家康が言いそうな名文で、かと言って広くは知られていない文章を選んで語調を整えたこと。徳川家康の遺訓だと言われて、誰も疑わなかったばかりか、ありがたがって石碑も建てられた。

※2021年NHK大河ドラマ『青天を衝け』(第1回)では江戸時代には存在しなかった「東照公御遺訓」が使われた。徳川光圀の遺訓「人の戒め」の方を紹介すれば、主人公と水戸藩の絆を予感させる逸話になったと思うと残念である。(ただ、実際の渋沢栄一は徳川光圀の遺訓「人の戒め」を知らず、「東照公御遺訓」を徳川家康の遺訓だと信じていたようである。)

※江戸時代にも『東照公御遺訓』は流布していたが、「人の一生は…」とは異なる。
https://websv.aichi-pref-library.jp/wahon/detail/140.html
https://websv.aichi-pref-library.jp/wahon/detail/141.html
https://websv.aichi-pref-library.jp/wahon/detail/142.html
https://websv.aichi-pref-library.jp/wahon/detail/198.html
https://websv.aichi-pref-library.jp/wahon/detail/143.html

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