「リスク」とは何か?-リスクを評価し、特徴づけ、管理するためのフレームワーク
リスクという言葉が用いられる場面は少なくありません。「危険性」といった意味で捉えがちなリスクですが、この用語には数多くの定義が存在し、様々な専門分野で用いられる極めて多義的な言葉です。
リスクの一般的な定義は1980年代にさかのぼります。この定義に基づけば、リスクは人間が価値を置くものに対して、何らかの行動や出来事から悪影響が生じる可能性を意味しています(Kates, et al. 1985、Fischhoff, et al. 1984)。現在の潜在的な要因が、将来的に何らかの影響を及ぼし得る確率(蓋然性)と、その重大性という2つの次元を組み合わせたものがリスクの基本的な概念です。
ただし、悪影響の確率や重大性には、必ずしも否定的な意味だけが含まれているわけではありません。否定的、もしくは肯定的という価値は、人それぞれの認識に依存しており、客観的な判断基準が存在しないからです。
例えば、気候変動をリスクと考えた場合、将来的にもたらされる地球温暖化という帰結は、人によって受け止め方が異なるかもしれませんよね。北欧の人々は、わずかな気温の上昇で農業の生産性や観光業の業績が向上し、大きな利益を得ることができると、肯定的な見方をするかもしれません。一方、アフリカやアジアの人々は、地球温暖化によって農業生産性の低下、あるいは干ばつや洪水など、自然災害の増加で苦しむことになるかもしれません。
リスクとハザードの違い
リスクと混同しがちな専門用語に「ハザード」があります。医学論文に親しみのある方ならハザード比という統計指標をご存じでしょう。一般的には生物災害を意味するバイオハザードという言葉の方がなじみ深いかもしれません。
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