【書評】劉慈欣『三体』

 僕たちが観測できていると信じているこの世界は、実はごく一部の特殊解に過ぎないのではないだろうか? ヒュームに指摘されるまでもなく、人間が考える不変の物理法則なるものが、一時的な気まぐれに過ぎない可能性を誰にも否定できない。

――つまり、物理学は存在しない。

 世界の法則性が突如として消え失せ、全くでたらめに変化しうるとしとしたら、別様に変わりゆく現象を偶然として受け入れることができるだろうか。それとも、その背後にうごめく必然性を感じるだろうか。

 中国人作家、劉慈欣氏による長編SF小説『三体』。光吉さくら氏、ワン・チャイ氏、大森望氏が翻訳し、2019年7月に早川書房から出版された。


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