新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と予防対策(最終更新2020/02/29)

【新型コロナウイルスの感染対策】 
 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路は接触感染、及び飛沫感染です。感染者のくしゃみや咳によって発生したウイルスを含んだ飛沫を直接吸い込んだり、ウイルスの付着した手で鼻や口に触れることで感染します。感染対策はいたってシンプルで、手を介した感染経路の遮断が重要です。そのため、手洗い、もしくはアルコールベースの消毒が感染予防に重要です。

感染対策

 非感染者に対するマスクの感染予防効果については、あまり明確ではありません。ただし、感染者が飛沫を広範囲にまき散らすことを防止する意味で有用です(咳エチケット)。なお、米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)では非感染者のマスク着用は推奨していません。

【新型コロナウイルスの臨床的特徴】 
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の特徴について以下のスライドにまとめます。感染者の多くが軽症例で、中には無症状の人も存在します。また、感染初期では発熱症状も決して多くないようです。ただし、無症状の人でも症候性患者と同等量のウイルスを有している可能性が報告されています(PMID: 32074444)。

臨床的特徴

 致死率と基本再生産数(R0値)について、他の感染症との比較図を以下のスライドにまとめます(PMID:31986257 / 29928743 / 32032682より作図)。なお、感染症にける基本再生産数とは、感染力のある1人の感染者が、免疫の獲得もしくは死亡によりその感染力を失うまでに何人の未感染者に伝染させたかを表す数値です。

図3

 感染症に関する疫学データはロケーションによっても異なることに注意が必要です。致死率については、中国CDCによる約7万例の解析で2.32%と報告されていますが、武漢のある湖北省以外の地域では0.4%となっており、現段階で確定的なことは不明です(PMID: 32064853)。

 地域ごとの特性を踏まえないと他の感染症との比較は難しいように思いますが、SARS-CoV-2はインフルエンザと比べてR0値が大きいこと、発症までの潜伏期間が長いことから感染経路を特定しにくいこと、致死率はやや高めで高齢者で重症化しやすく小児では軽症例が多いことが特徴といえそうです。若年で発症者が少ないSARS-CoV-2は、2009年のH1N1とは対称的かもしれません。以下のスライドにインフルエンザ感染症との比較図をまとめます。

インフル比較

【新型コロナウイルスの検査について】
 保険適用をめぐり、インターネット上でも話題になっている新型コロナウイルスの検査について簡単に触れておきます。同ウイルスの検査方法はPCR(Polymerase Chain Reaction)法と呼ばれるものです。検査結果で「陽性が出れば感染している」「陰性が出れば感染していない」、一般的にはそのように端的な理解がなされていることも多いですが、結果の解釈は対象となる被験者の状況によって異なります(以下スライドをご参照ください)。

図

 被験者から採取した検体にウイルスRNAが含まれていれば陽性となりますが、調べているのはウイルスRNAの有無であって、病原性や感染性ではないことに注意が必要です(つまり陽性でも無症状の人がいる)。ちなみに、COVID-19から回復し、検査で陰性で退院した患者4例において、その後5〜13日間にわたり、検査陽性だった症例が報告されています(PMID: 32105304 )。この場合の陽性反応も、既に不活化されたウイルスの核酸断片である可能性があり、必ずしも感染性がある状態とは言えません。

 また、検査結果が陰性だったとしても感染を否定できませんし(偽陰性)、感染していない人でも陽性が出ることがあります(偽陽性)。検査結果の解釈は、感染症罹患の事前確率によって変わってくるため、検査を実施するか否かを決定するのは医師の臨床判断となります。このことはインフルエンザ感染症の検査にも同様に当てはまります。

 検査後確率の上昇、低下の度合いに影響を与えているのが「感度、および「特異度」と呼ばれる数値で、検査方法ごとに異なります。数値が高い検査手法ほど結果の精度に優れているといえますが、感度、特異度、いずれも100%の検査方法は存在しません。感度・特異度について知りたい方は以下、記事をご参照ください。

 SARS-CoV-2およびCOVID-19については以下のブログ記事もご参照いただければ幸いです。


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