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炎天下のジェットコースター

ヒット、ヒット、ホームラン

ヒット、ヒット、バント、ゴロの間にホームイン

センバツ出場をかけた都道府県ごとの予選。

初戦の1回表に怒涛の攻撃。

相手投手は、いかにもピッチャーらしいフォームのサウスポー(左投げ投手)でボールも悪くないが、立ち上がりでストライクを取りに来たボールを積極的に振りにいき、調子が上がる前に襲いかかる。

もともと背が高くパワーがあり、かつ足が速い選手が揃ったこのチーム。

文化祭でも実行委員長とかダンスパートとかでブイブイ言わす生徒が多く、良くも悪くもノリもある。

つまり「身体能力」「テンション」があるので攻撃力は高い。

ここまでつながるとは思わなかったが、幸先は良い。

経験の少ない新チーム。大会の初戦。ドキドキしている中、自分たちの形をいきなり出せたのはでかい。

さらに攻撃は続き、2回の攻撃を終えて7得点。

それでも、チームに楽勝ムードは漂わない。

それは、チームが成熟しているからではなく、投手力がまったく成熟していないという事実を知っているから。

このチームに投手はいない。全員が駆け出し新米ピッチャー。(ここ2年間は長身サウスポーの絶対的エースがいたため誰もマウンドに立ったことはない。)

2回を終えて7得点できたものの、新エースは四死球を出しながら2失点。正直リズム悪い。このまま変なリズムで試合を進行したくない。攻撃のリズムを崩さずに試合を展開したい。

炎天下の試合ということもあり、後半にもつれると分が悪い。

ノリはあっても体力はない。体力がなければノリは維持できない。

ということで、3回からチーム1の安定感をもつショートの選手をマウンドに上げた。お疲れエース。頼むぞショート。

チーム全体も「これで守備が落ち着くな。」という希望が見えたところでさらに得点を重ねる。これで9得点。

さあ、安定感を見せてくれ!!

四球、四球、四球、なんかがあってまた四球。

押し出し連発の大炎上。

おお。。この展開は聞いてないぞ。メロンパンと思って頬張ったら「スクイーズかい!!」という感じ。炎天下もあってまともな思考判断はできません。

2イニングで5失点。

さらに投手を代えるも四球連発。押し出し、押し出し。

5回終わって11対11。

自分たちで打ってとった得点を押し出し5個でチャラにする。刺激強すぎるやろ。

6回からの後半戦は日々の練習量の差、追いついた者と追いつかれた者の差が如実に出始める。

「失点しても追いつけた。なんとかなる」というメンタルと「得点しても追いつかれるんじゃないか」というメンタルの違いはでかい。

相手投手は復活し、攻撃を封じられ万事休す。

「焦るな」と言っても焦ってしまうし、そもそも炎天下のなか長時間守っていることもありかなり体力を消耗している。

なかなか前半のような当たりが少なくなり、外野に飛んでいた当たりも内野へのライナーになる。

漂う「ヤバい」という雰囲気。

それでも、打球に飛びつき、声をかける。

でも相手の攻撃を抑えることができない。

結果的には11対18の7回コールド負け(野球は地方大会だと5回で10点差、7回で7点差がつくと、その時点で試合終了)

圧倒的な攻撃力を見せた前半、押し出し連発の中盤、絶望の後半。期待と不安のドキドキ、勢いよく加速し、勢いよく失速。留まることを知らない試合展開。気付けば放心状態で試合終了の大熱戦。まるでジェットコースターのような試合。

試合前に、投手交代のタイミング、投げる順番などは選手と何回も話をしていたので後悔はない。選手もそこには、不満を持っていないようである。

野球はアウトを取れないと永遠に攻撃がつづくスポーツ。ストライクが取れないと永遠に攻撃がつづくスポーツ。

つくづく身にしみた試合となった。

あれから1週間が経とうとしているが、この試合を自分たちなりに咀嚼しメニューを工夫しながら練習をしている。

いま監督がやるべきことはアドバイスや提案といったことだけで十分。

悲壮感のない彼らの姿に、心が洗われている。

風の谷を作るには生徒の前向きな姿勢がなければ始まらない。

ここからすべてが始まったと思える試合にしていくことが、これからやるべきことである。


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