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#私を構成する5つのマンガ

筆者は別に豪語する程のマンガ好きではないし、かといって全然マンガを読まないか?というと、1日に数回はマンガアプリを立ち上げて好きなマンガを無課金で読む程度には行為自体は浸透している。

自分でも、マンガと自分の関係性はとても中途半端であると思っている。しかし、そんな自分にも人生で出会って、価値観や考え方の礎となる程に震えるマンガがいくつかあったな、と振り返ることで気付かされた。数にして、ちょうどこのテーマで挙げるべき5つくらい。この5つのマンガの紹介をしながら、自分の価値観・考え方を改めて振り返っていきたいと思う。

俺節

歌うシーンが特徴的に描かれているマンガが凄く好きだ。

ロックフェスで自分が中高生の時に好きだったアーティストの歌を聴くと込み上げてくるものがあり涙したり、保育園で知らない子供が一生懸命歌う「手のひらを太陽に」を聴いて涙したり、若い頃振られた時にイースタンユースの「例えば僕が死んだら」を聴いて涙したり、歌はいつでも自分の感情を揺さぶってくれる。

このマンガの主人公も、不器用ながら人の心を撼わす歌声を持っており、彼が歌う描写は劇画調で、とても力強い。この力強い描写を目の当たりにする度に、前述のシーンの時のような感情の起伏が自分のなかに起こるのである。

主人公がとても純粋で一途であることもこのマンガの魅力だ。不器用な主人公が傷つきながら、愛する人と離れながらも泥臭く愛する唄と共に生きていく主人公(コージ)の生き様を見ると、世間体や絵に描いたような成功ではなく、自分が追い求めるものを純粋に追い続ける人生がどれだけ豊かであるか、を考えさせられる。

道に迷ったり、人間関係に疲れた時に読むと引き込まれる名作。夜、ひとりで一気に読んでもらいたい。

HUNTER x HUNTER

言わずと知れた名作中の名作。もはやここで語る必要もない程にあらゆる方から分析され、魅力が発信されている作品だが、筆者もこの作品の世界観には強く影響を受けている一人である。

筆者の学生時代はFF7がプレイステーションでリリースされ、エヴァンゲリオンが映画化され、マトリックスが映画館で上映されていた頃。重厚で濃密な仮想世界を描いた作品が世に多く登場し、同年代の友人は例外なくこの世界観に引き込まれていた。そして、HUNTER x HUNTERはこの重厚に構築された世界観を楽しむエンタメとしての集大成、完全形態と言っても過言でないように思う。

あれから約20年。中学時代に想像していた大人よりもずっと未完成で、ずっと成熟していない状態の自分がいるわけだが、今読んでもHunter x Hunterの世界は僕を没頭させてくれる。この世代にとってHunter x Hunterを筆頭とするジャンプ作品群は自分たちにとってのアイデンティティと言って過言ではないのではなかろうか。

BECK

俺節同様、ボーカルの歌唱シーンが特徴なマンガ。ロックバンドを描くマンガは数あれど、BECKこそがロックバンドをテーマにしたマンガの模範であると言っても過言ではないように思う。

バンドというのは個性の結集であり、化学反応でもありチームワークの模範でもあると思う。皆が互いを意識して一体感を醸成するだけでは個性が死んでしまうし、個性を光らせようとするとバランスが崩れてしまう。BECKでは、そんなバンド同士の友情や、時には他のメンバーへの嫉妬などが丁寧に描かれている。

メンバーが純粋にバンドでの表現を求め続けるのもこのマンガの魅力だ。音楽社会の慣習に染まろうとしないバンド、BECKはライバルからの妨害行為にも折れず、ただ自分たちのサウンドを表現できる機会を求めている。これが結果大きな成功に繋がる、という少年漫画らしい展開が、世のバンドキッズたちを熱くさせたのだ。

当時と比べてバンドの勢い自体は大人しくなってしまっているようにも感じられるが、それでも今、バンドを組んでいる人であったり、過去にバンドを組んでいた人が読めば、必ず心を熱くさせること請け合いな作品である。

新宿スワン

映画ならシン・シティ、小説なら花村萬月さんの作品が好きな筆者はとにかくダークヒーローが好きだ。綺麗事だけを求めない、純情ゆえに悪に手を染めてしまう主人公、ストーリーに引き込まれてしまうのだが、このマンガもまたそういう魅力を持っている。

新宿歌舞伎町のスカウト(キャバクラ、風俗、AVで働く女性がターゲット)をテーマにした作品で、物語はホスト、闇金融、そしてヤクザにまで展開する、大人の裏社会を右往左往する主人公を中心に展開していくのだが、その様々な世界に登場する大人が全員主人公級に魅力的でカッコいいのだ。

なかでも筆者は、主人公(龍彦)の上司である真虎が大好きで、このキャラは好きなマンガ5選のなかのキャラでもトップクラスに好きなキャラクターである。優しいのに冷徹で、復讐心を糧にしているのに部下に対しては情に熱い、様々な矛盾を秘める、奥深い真虎さんが自分にとっての理想の上司...とまで思ってしまう。

裏社会をテーマにしたマンガは数多くあるが、その中でもR指定な表現は多くあるものの読みやすい!と感じる数少ないマンガのうちのひとつが新宿スワンである。裏社会を生きる漢の生き様にグッと来ること、間違いなし。

ハチミツとクローバー

このマンガに対する自分の思いは複雑だ。無邪気に「好きだ!」と一言言い切るだけでは表現し尽くせない、切ない思い出も脳裏を過ぎる、正に自分を構成する一冊そのものと言える作品である。

舞台は筆者も通った武蔵野美術大学をモチーフにした美術大学。大学生活や恋愛、仕事など美大生や美大卒業生のあるあるを凝縮した作品であると言っても過言ではない。森田さんみたいな変わった学生は実際に構内を歩いているし、真山さんみたいなクールな建築家やデザイナーを目指す学生が多く集まるし、しかし結局みんなはぐちゃんや森田さん、真山さんにはなれなくて、もがきながら何とか生きる、竹本みたいな学生が集まるのが筆者の時代の美術大学だった。

実際に卒業制作を作っていた時には「何がハチミツとクローバーじゃ!」と皆でやさぐれながら言い聞かせて乗り切ったし、竹本が自転車で自分探しの旅をしたみたいに、筆者もフィンランドにひとり旅行をしたりしたものである。

自分の学生時代を照らし合わせることが出来る作品があるという事は自分の人生にとってかけがえのない財産であると思うし、ハチクロを読み返す事で、筆者は自分自身を振り返る事が出来る。人生の一部を構成してしまっているハチミツとクローバーは間違いなく自分を構成するパーツの一部と言えるだろう(重ねて言うと、ハチクロほど純粋で甘酸っぱい大学生活ではなかったのだが。)

終わりに

5作品を取り上げ、振り返るとそれぞれに共通点があるような無いような...それぞれが作品として際立っているものの、全てに純粋無垢な主人公がいるなど、根底の部分で自分が大事にしていることはなんなのか?を改めて考えさせられるラインナップになったと思う。(基本はメジャーなラインナップになったのも、自分らしい結果だなぁ...と思っている)

マンガってやっぱりイメージと文章が一緒に訴求されるものなので、凄く脳裏に残りやすいですよね。だからこそ、その作品で描かれるものが後々の自分の考え方の一部になりやすいし、影響を受けやすいのだな..と、当たり前のように思える事実を、この5作品を見ていて感じさせられたのであった。

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