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自己啓発書が行動に特化する理由

行動は多くの人ができる唯一のこと

『小さいことにくよくよするな』
という、リチャード・カールソンさんの著書をご存知だろうか。
私が自己啓発書に目覚めたのは、この本がきっかけだった。
本書の初版が出た当時は、1998年というまさに「世紀末」や「ノストラダムスの大予言」などが流行していた頃である。
こんな時代に流行を見せた“自己啓発書”というのは、1996年に出版された『7つの習慣』にも見られるように、まさに行動に重きを置いたものであった。
自己啓発というと、自分をより高みへと上昇させようとすることである。そのためには、何も『行動する』ことに特化する必要はない。
自分自身をより高みへと押し上げようとするためには、『考える』ことも重要な要素であるはずだ。それなのに、なぜ、自己啓発書は口うるさく『行動しろ』と言うのだろうか。

『小さいことにくよくよするな』を読んだ当時は、私は現在よりも、小さいことに一喜一憂するような人間だった。本当に些細なことで、くよくよしていたのである。
そんな時に、本書を読んだのだが、そこには行動することの重要性が書かれていた。
まさに「考えるな、感じろ」である。
映画『ベストキッド』のようなセリフを頭の中で何度も復唱しながら、この難局に耐え抜こうと踏ん張ったのだ。
しかし当時から、自己啓発書を読んでなんとかしようとする試みは、私にとってのベストな選択ではなかったように思っていた。
そのように感じている理由は、行動することによって頭を麻痺させていることに薄々気がついていたからかもしれない。

人はどんな時に一番自分に変化を感じるだろうかと考えてみた。
すると、“今までの自分では成し得なかったことを成し遂げたとき”であるように思う。
つまり、「今までの選択肢にはなかったような行動をとったとき」であると言える。
それは、“自分にとって”今までの選択にはなかったものであり、“他人にとって”は当たり前の行動だったりすることがある。
“自分にとって”は、特別な選択だとしても、“他の誰か”にとっては、歯を磨くように当然のことであるわけだ。
そんな行動ができたことが、自分にとっては“特別な出来事”として記憶される。
だから、本に書かれていることをそのまま『行動する』ことによって、「私は変わった!」と勘違いするのだ。

そう、『行動する』ことによって変わったのは当たり前で、その『行動』によって自分が変わったと思うのは、『大いなる勘違い』なのである。
そして、何よりも『行動する』ことへの大きな障壁は、「この行動が無駄な行動だったら嫌だ」と思ってしまうことである。
つまり、「無駄な行動はしたくない」という、ある種「楽をしたい」と考えてしまっていることにある。

その点も『自己啓発書』としては課題をクリアしている。
今からやろうとしている『行動』は、すでに実践されていることだ。しかも、過去に同じやり方で成功している人がいるため、信ぴょう性も高い。
「この方法で行動すれば、成功する確率が上がる」
そのように考えてしまう。それは『思考停止』以外の何者でもない。
自らで考えることを、まるっきり放棄している。

私は、自己啓発書を批判しているのではない。
むしろ『他人の成功体験を聞くことができる貴重な財産』とも思っている。
しかし、それを読む私たちの“読み方”が問題なのだ。
自己啓発書を『成功へのバイブル』だと思ってはいけない。
そのような間違った捉え方をしている人が後をたたないからこそ、「こんな方法は嘘だ」とか「同じやり方をしたが成功しなかった」と言ってクレームをつける。Amazonのレビューにも、よく書かれている内容である。

あくまでも、自己啓発と呼ばれているジャンルにならんでいる本は、『“他人の”成功した“事例”』であるということを忘れてはならない。
自己啓発書を真面目に読んで、そこに書かれていることを、いくら真面目にこなしても、成功するわけではないのだ。むしろ、成功しない確率の方が高い。
なぜなら、その本の著者と自分は、生活環境から性格まで、何もかもが違うからである。著者が外国人なら、尚更である。環境など、天と地ほどの違いがあるだろう。

私たちは成功を目指して生きている。
その『成功』の定義は人それぞれだが、その目標に向かって生きていると言ってもいい。目標のない人生では、糸の切れた凧のように、どこに飛んで行くのか分からない結果が待っている。そのような人はそもそも、自己啓発書など手にとったりしない。
成功を収めるのは、なるべく早い方がいい。
早ければ早いほど、“いい思い”に浸れる時間が長くなるからだ。
満たされた時間というのは、長いほど嬉しいものだと考えてしまう。

しかし、“その後”を考えたことがあるだろうか。
『自分なりの成功』を目標に掲げ、その目標に向かって駆け進んでいる今の自分が、最も輝いているのではないだろうか。
よく考えてみてほしい。
自己啓発書というのは、“著者が成し遂げた成功体験”である。
そこには、数々の失敗がある。そして、その“成功体験”を得るまでに、苦労した道のりが書かれていることがある。
『エジソン』や『一休』などの“伝記”と同じなのだ。その人の“生き様”が書かれている。そこから何を学び取るかは、自分次第なのだ。

自己啓発書は、私たちに多くの言葉を投げかけてくれる。
しかしその言葉を鵜呑みにするのではなく、自分なりに精査したり自分なりの言葉に置き換えるということを怠ることは、その著者に対して失礼だと思う。

本というものは、『勉強する』ことであるという人がいる。
しかし、教科書と大きく違うのは、“本を丸暗記する”ものではない。
本を読み、自分はその本から何を感じて、何を学ぶのかを考えることのきっかけにすぎないことを忘れてはならない。

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