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不安虫

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私の頭の中には虫が住んでいる。
少ない日は1匹、多い日には数百匹の虫がせっせせっせと頭の中を動き回っている。
彼らもしくは彼女らは、毎日私の脳みそを少しずつ食べて成長している。
この虫たちの存在に気付くまでに30年以上もかかってしまったが、少し振り返ってみようと思う。


私は、小さい頃から両親に「人に優しく」「人を傷つけてはいけない」そう言われて育てられた。

小学校受験で私は兄の進学した国立の小学校を受験した。
その小学校の受験は少し特殊で、筆記試験のあとに抽選がある。
校長先生の引いた番号のひとつ後ろの番号から、既定の人数が合格するという方式だった。
私は見事に校長先生の引いた番号のひとつ前の番号を引き、補欠が回ってくることもなく、私立の小学校へ通うことになった。

私は体が弱く、幼少期から病院によくお世話になっていた。小学校の頃も学校を休むことが多かった。小学生ではそういう小さなことも「いじめ」の対象となる。

ある日学校に行くと、挨拶をしても誰にも返してもらえなかった。
つい数日前に家に遊びに来たA子ちゃんも、一昨日電話で話したB子ちゃんも私が話しかけるとそっぽを向いてどこかに行ってしまう。私はその状況が全く理解できなかった。
お昼休みにお弁当を開けると砂まみれだったり、体操服が盗まれていて放課後に砂場にうめられていたり、そんなことが続いた。

今思えば「いじめの期間」はそんなに長くは続かなかったが、体調を崩して休むたびにいじめが訪れた。怖くてだんだん学校に行けなくなった。

母親がある日私に言った。「しょにゃちゃん、もう学校行かんでええよ。お母さんと二人でお勉強しよう!」その言葉に本当に救われた。多分母親は私がいじめられていることに気づいていたのだと思う。
お母さんに抱っこされて散々泣いた後、庭で紅茶とクッキーを食べて、夕方から一緒に勉強した。母親はボールペン字講座に入会してくれて、一緒に勉強してくれた。

その頃の記憶は、私に大きな影響を与えた。
「人を嫌な気持にさせると嫌われる」「気に入られるように生きていかなくてはいけない」
このふたつがこの身に沁みこんでしまった。八方美人しょにゃの爆誕である。

それに加えて、私は先天性で周囲に対して敏感な性質を持っている。
このような人たちを世の中では「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」と呼ぶらしい。生まれつき感受性が強く、敏感すぎる気質を持っている人のことで、全人口の1/5程度いるといわれている。この数字だけを見ると意外に多いように感じるが、裏を返せばその他の人たちはHSPではないため大多数から共感を得にくい。そこに生きづらさや劣等感を感じてしまうのである。簡単に言えば「群れから外れて飛んでいるカラス」「周りに合わせて色を変えられないカメレオン」といったところである。
こんな私の性質もまた、頭の中の虫たちにとっては居心地のいい空間となっている。

HSPの特性
① 過剰な刺激を受けやすい
音や光、におい、相手の表情やしぐさに敏感に反応する。
② 情報を深く処理してしまう
場の空気を読みすぎるあまり、疲れてしまう。
③ 共感しやすい
周りの人の感情を読み取り、自分をあわせてしまう。
④ 心の境界線がもろい
自分だけの空間に相手の侵入を許してしまう。自分が自分であるためのバリアがはがれてしまい、相手に同調しすぎるあまり本来の自分の姿が分からなくなる。
⑤ 自己否定をしやすい
些細な出来事もすべて「自分のせいなのではないか」と考えてしまう。

このような性質を生まれつき持っている私は、幼少期のいじめによってその特性に磨きがかかってしまった。
その後の大学時代に、以前noteで書いたような経験を経て、対人関係に嫌気がさした。

余談ではあるが、恋愛においては、人を信用するということが一切出来なくなってしまった。

「好きだよ」「ずっと一緒にいよう」という言葉は、私の中では何の意味も持たない。

相手の少しの変化に怯え不安になり、相手を問い詰めたり、勝手に泣き出してしまったり、自分でもどうしてそうなるのか分からないことが多くあった。彼が昔付き合っていた女性と自分を勝手に比較して勝手に苦しんだり、自分の価値を低く見積もったり、相手には到底理解されないところに私はいるのではないかと思う。
そんな私と一緒にいても相手はつまらないだろうと勝手に決めつけ、最終的に別れを切り出してしまう…文章にするとかなり意味不明なことをしてきた。

結局のところ、「誰とも付き合ったことがなく、生まれて初めて恋する相手が私」みたいな相手じゃないと安心できないのではないかと思うほど、こじらせてしまった。


大学を卒業してからは、機械(スロット)と向き合う生活に逃げることになる。そこで少しだけ生活に落ち着きを取り戻した。

そして1年半前からTwitterを始め、大多数の人とかかわるようになった。フォロワー数が増えていき、多くの人の目につくようになった頃、実生活にかかわるような嫌がらせを受けるようになった。

会社のお問合せページに私のアカウントをバラすメールが入ったり、会社に何度も電話が来た。私個人の動画をフォロワーさんに送り付けたり、私の住んでいる地域をさらされたり、明らかに私を個人的に知っている人の仕業としか思えなかった。
簡単に人を信用するのもどうかと思うが、ここでもまた絶望してしまった。人の目につくことがこんなに怖いことだとは思わなかった。


半年前から朝起きれなくなり、友達との約束もドタキャンすることが増えた。大好きだった稼働もめっきり少なくなり、朝から稼働なんてことは滅多になくなった。
泣きながら起きることが増え、周りを困らせることが格段に増えてしまった。

だんだん「周りに迷惑をかけているのは私が存在するからだ」「周りの人がかわいそう」そう思うことが増え、死ぬことも真剣に考えるようになった。

私は、自分のことを完全に諦めかけていた。
でも、周りの人間があきらめなかった。みのを初めとした友達が、一生懸命私の症状を調べてくれて病院を探したり、話を聞こうとしてくれた。みのは私にTwitterを勧めたひとりだったので、責任を強く感じていたのだと思う。

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そして、みのに連れられて、新宿にある「新宿ストレスクリニック」でうつ病の検査(光トポグラフィー検査)を行った。


うつ病の検査は、頭にたくさんコードのついた帽子をかぶり、発声したり特定の文字から始まる単語をできるだけ多く答えるという検査だった。
検査の結果は「うつ病」だった。前頭葉の特定の場所が壊滅しており、ほぼ機能していないということだった。見つかったときにはかなり重症で、会社の出勤日を減らしてすぐに治療をすることを勧められた。

結果を聞いたとき、病院を出て泣いた。
恥ずかしい気持ちと、どうしたらいいのか分からない気持ちだった。

新宿ストレスクリニックは、治療費用がとても高く、一括支払いを求められもう少し安価で受けられるクリニックに通うことにした。(このクリニックは現在通院中のため名前は伏せます。)

その病院で先生が「うつ病はメンタルがやられているのではなく、脳の病気です。脳の中には不安な気持ちを打ち消す役目をしてくれる部分があります。頭の中に虫がいることを想像してください。その虫たちがその部分を食べてしまっているので、悲しい気持ちや不安な気持ちが拭えなくなっているだけです。どんな人でもうつ病になる危険性はあります。」と言ってくれた。少しだけ光が見えたような気がした。

現在は、週4で病院に通い治療をしている。
治療(TMS治療)は頭に器具を付けて、電流を脳の前頭葉部分に流し活性化させるのだが、最初はそれが耐えられないくらい痛かった。
タオルを口にくわえて噛まないと我慢できなかった。しかし、薬物療法と違い副作用も少なく、再発のリスクも少ない。

治療が10回目を超えたころから、少しずつ朝起きれるようになった。周りの人にも「明らかに効果があるように見える」と言われることが増えた。
個人的には完治とは言えないが、かなり良くなったように思う。
その他にも、適度な運動や料理がいいといわれたので、積極的に取り入れるようにした。

うつ病の治療の後は、「認知療法」という心理療法を受けることになっている。
人は成長するにつれ、固定的なスキーマが形成され、それに基づいて歪んだ思考方法や考えの歪みが現れる。その歪みに焦点を当て、認知を軌道修正していくという方法が「認知療法」である。

正直効果があると期待しているわけではない。だが、うつ病が“脳の病気”と知れたことだけでも私にとっては大きな意味があった。

認知療法を受けることによって、少しでも生きやすい人生が待っているならやってみる価値はあると思う。考え方を少しでも変えることができれば、私の脳内が不安虫にとって居心地の悪い場所になるため、その数も少しずつ減っていくかもしれない。

不安虫の存在を認識してからは、不安に感じた時や嫌な気持ちになったとき、「おい、不安虫!邪魔をするな!」と脳内で語りかけている。そう言うと奴らは「あっかんべー」と言って、また動き回っているが、少しだけその存在が愛らしく思えてくるくらいにはなった。

この世には「メンヘラ」と言われている人が多くいる。でもそういう人たちの頭の中には、不安虫が一定数動き回っていて、各々の努力では打ち消すことが難しい。それに一番苦しんでいるのは、その人たち自身なのである。
どうかそういう人たちに出会ったときは、ただ「メンヘラ」で片づけるのではなく、個性として受け入れてあげてほしい。

長くはなりましたが、このnoteが数人の不安虫の飼い主さんの力になることを祈って。

しょにゃ

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