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【006】「文字を読むためには文字を読め」2022年7月の日記➁

・最近、何をするにしても体力がない。まだ28なのに。いや、もう28だからか。

・社会人になってから本を読む機会がめっきり減ってしまっており、大学時代に蓄えた語彙力が擦り切れ始めている。そこで本を読む習慣をつけるべく、毎日10ページの読書ノルマを設けた。一日10ページ。少ないと思うだろうか。しかしいまの僕にはこれでも精一杯である。そもそも僕の読書スピードは1ページ1分なのだ。300ページの文庫本を読むのにも5時間は掛かる計算だ。

・読書スピードを上げていくことも課題にしようかな。でもそこは本質的な問題ではないので意味を見出せない。しかしスマホを眺めているのも目が疲れる(読書にはkindleアプリを使っている)ので、液晶に向かう時間は短い方が良いのも確かである。プライムデーの時にkindle端末を買えばよかったな。

・何はともあれ、そんな習慣をつけたおかげで、今年に入って最初の「読了」を経験した。読み終わったのは藤井太洋氏の「ワン・モア・ヌーク」。発売当初に購入したので読了までに2年を要したということである。

・もともと半分くらいまでは読んでいたのだけど、流石に内容を忘れていたので最初から読み直した。面白かった。藤井太洋氏の小説にはハズレがない。

・藤井太洋氏は元システムエンジニアで、SF作家の中でも緻密で正確な技術描写が魅力的な書き手である。そんな藤井太洋氏の作風として「明日には古典になってるかもしれないSF」というものがあると僕は思っている。これを変換して「超近未来SF」と僕はジャンル付けしている。

・この「ワン・モア・ヌーク」は特にそれが顕著である。そもそもこの作品をSFと呼ぶべきなのか?

・この「ワン・モア・ヌーク」では、オリンピック直前の東京で勃発した核テロを描く物語である。ここで勘の良い方は気づくだろう。僕はこの小説の読了に2年掛かった。つまりこの小説は2年前に刊行された。より正確に記すならばこの小説の発売日は2020年の1月27日だ。

・2020年はまさに東京オリンピックが開催される予定だった年だ。答えを明かすと、この小説は刊行時期にリンクした時間進行で描かれた小説なのだ。刊行から1か月後には「過去」になっている。いや、なっていたのだ。

・SF作家にとって自作が過去になるというのは怖いものなのではないか。しかし藤井太洋はそこに恐怖を覚えない。古典になることを怖れない強さが彼の小説の強さなのかもしれない。

・藤井太洋さんの作品ではデビュー作の「Gene Maper」と「ハロー・ワールド」がオススメ。

・まだ読み切れてない作品もあるので、この調子で読破していきたい。文字を読む習慣が付けば、文字を読む力が付いてくる。それが習慣化すればかつての語彙力も元に戻ってくれるだろう。何かを好きになるには、それを好きになることを突き詰めることこそが一番の良薬だ。トートロジーかもしれないけど、実は世の中、トートロジーに当てはめる方が上手くいくことの方が多いはずだ。

・文字を読むためには、文字を読むしかないのだ。

・たとえば冷凍食品のパッケージ。「この袋をあけずにこちらの面を必ず下にして、凍ったままの商品をそのまま電子レンジに入れ過熱してください。」と書いてある。日本語が読めるって素晴らしい。

・日本が読めないって素晴らしくない。いや、パッケージの裏に書くなよ。破いた後に気づいたぞ。嘘だろ。これは識字力に関係がない。僕は悪くない。と、ほざいていたら、

・タレもついてないらしい。タレ、ないんだけど。これはパッケージの表に書いてあった。言い訳のしようがない。

・文字を読むには、文字を読むしかないってことだ。

・なぜなら文字は文字としてしか記述されていないのだから。語彙力の前に取り戻すべきものがあるな……。注意力を……。

・おいおい、そもそも注意が身についていたことなんかあるか?

・ガハハ。

(おわり)

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