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最後にして最初の人類|訪れたスポメニックを振り返る(写真家/星野藍さん)

写真集「旧共産遺産」の著者である写真家・星野藍さんに8月29日(日)、『最後にして最初の人類』上映後のトークイベントにご登壇いただき、およそ3年前に訪れた旧ユーゴスラヴィア・スポメニック群に訪れた際のお話を伺いました。一部トークイベントの様子をお届け致します。


―――さっそくですが今回、トークイベントに合わせて、劇中に登場するお写真をお持ちいただいたということですが・・・
(星野)映画の中では抽象的に登場する記念碑ですが、わたしが行った作品をみると印象が異なるので、その点を楽しんでいただけたらなと思っています。

最初にお見せするのは、今回「完全読本」の表紙に使用されている“太陽”が映されているスポメニック「ポピナ記念碑公園」(セルビア)です。

▼完全読本の表紙

完全読本表紙01

(星野)山の上にあって、結構街から離れているんです。すごく霧が出るエリアでして、撮影に行った際にも深く霧が出ていました。霧も含め、あまり思うように撮影できなかったのが印象的で、今回このイベントのために3年振りに写真を掘り起こして現像しました。このイベントで初めて出す写真です。

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―――スポメニックは人が暮らすエリアからは離れているものが多いのでしょうか?
(星野)スポメニックによって異なりますね。建造物を巡る際に公共交通機関を使う方もいらっしゃるそうですが、かなり人里離れているところもあるので、私は最初からレンタカーを借りて、ボスニアの首都サラエボからクロアチアの国境を抜けて、西に行って、そのまま南に南下していくルートをとりました。そこからモンテネグロに向かって、北上してサラエボに戻るようなイメージです。
大きな街を拠点に見に行けるスポメニックだと、まずは長距離バスで移動してから徒歩かタクシーで行く事が出来ますが、それでも首都からバスで2~3時間そこからプラスアルファなど、かなり時間がかかると思います。

―――スポメニックに行くきっかけはどんなことだったのでしょうか?
(星野)インターネットでみつけて、素敵な場所だなと思っていました。数年後、思いつきでいってみようかな、と思い、旅立ったという感じですね。
スポメニックはロケーションや見る角度で表情がかなり変わるので、映画や写真を見た時の印象と実際に行ってみるのでは印象が大きくかわるんじゃないかなと思います。

―――日本版の映画ポスターの「モスラヴィナ人民革命記念碑」(クロアチア)にも訪れたということですが、実際の印象を教えてください。

▼「モスラヴィナ人民革命記念碑」(クロアチア)「勝利の翼」を表している

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(星野)中心の目の部分は、アルミニウムの板で出てきていて、光を表しています。表側はつるつるしていて、裏側は凸凹していて、実際見ると個人的にちょっと気持ち悪いなと(笑)。高さは10メートル、幅が20メートルの大きさです。とても異様ですよね。ポツンといきなり建っていて、自分とスポメニックしか居ないような空間。なんていっていいかいいのかわからない気持ちになります(笑)。月光の下で撮影できないかな、夜の撮影に挑んだんですが、街灯がない場所なのでかなり心細さがありました。

(星野)「石の花」と呼ばれるスポメニックはクロアチアにあって、その名の通り花のような形です。元々は5つの収容所のあった場所です。スポメニックの中に入ると、献花ができるようになっています。映画のなかでは、中からのカットはなかったので、実際に行ってみるとまた印象が変わると思います。

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(星野)途中出てくる様子で「ブバニ記念公園」のモニュメント(セルビア)は、亡くなった人たちのこぶし(男性・女性・子供)を表していて、犠牲となった人々を表しています。映画で撮影されている様子もとても無機質に思えますが、スポメニックの背景にあるものはとても人間的なものを含んでいるんです。近くには博物館もあるので、時間がある方はよってみると時代的背景も含めて楽しめるかもしれません。興味がありましたら、ぜひ足を運んでみてください。

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―――最後に『最後にして最初の人類』を御覧いただいた方々にオススメの書籍・映画などジャンル問わずございましたら、教えていただけますでしょうか?
小説はディストピア物がとても好きだったりします。「華氏451度」「1984年」、「すばらしい新世界」、「われら」、「死のロングウォーク」、日本の作家だと安倍工房の作品など。

映画は『草原の実験』、『TAMALA2010』、『馬を放つ』、『ファンタスティック・プラネット』、『光のノスタルジア』、『インターステラー』、『エヴォリューション』、『春夏秋冬そして春』辺りが『最後にして最初の人類』を御覧いただいた方々に刺さる可能性が高いかな、と思いました。

星野藍さん著『旧共産遺産』
全国書店にて発売中です。アマゾンはこちらから。
映画と合わせて、写真集もお楽しみください!

旧共産遺産_書籍書影

~番外編~
『最後にして最初の人類』は映画館で体験していただきたい1本となっておりますが、星野さんにとって「映画館での映画体験」と言われて思い出す作品があれば、教えてください。

作品 :「ゴジラ」

(星野)はじめて映画館でみたと聞かれて思い出すのは「ゴジラ」です。映画の趣味もほとんど映画のお父さんの影響が濃いんですよね。物心つき始める2歳くらいのときからゾンビ映画とかも見せられていたので(笑)。先日帰省した際も深夜に放送されていたジョージ・A・ロメロの映画を二人でみたりしました。そう考えると幼少期からお父さんの趣味の映画をさんざん見せられていたんですが(笑)、楽しかったし、いろいろ影響されているかもしれませんね。
出身地が福島なので、映画はフォーラム福島でよく見ていました。とても地元の人たちに愛されている映画館なので、これからもずっと残っていてほしいなと思ってます。最近はいけていないので、久しぶりに行きたいですね。

いかがでしたでしょうか?映画『最後にして最初の人類』をすでに御覧の方もこれからの方も合わせて、星野藍さんの「旧共産遺産」を手に取ってみてはいかがでしょうか?

映画『最後にして最初の人類』公開劇場情報はこちらからご確認いただけます。

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