なぜ「退職」で企業と個人の関係が終わるのか?
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なぜ「退職」で企業と個人の関係が終わるのか?

Kenji Tomita / Runtrip

私が目下注力しているスタートアップのチーム作りが「スタートアップのクラブチーム化」です。

詳細は上記noteをご参照頂ければと思いますが「スタートアップのクラブチーム化」の要点あらためて端的にまとめると次のような新たなチーム作りの話です。

▼背景
・テレワークの浸透による業務効率の劇的な改善
・細切れ仕事ニーズの爆発的増加とマッチングプラットフォームの浸透
・新たな人材(人的リソース)流動性のビッグウェーブ
▼クラブチーム化
・雇用ではなく契約をベースとした人材の獲得
・1を前提としたハイパフォーマンスを生むための環境作り
・1を前提とした正社員の期待値再定義とカルチャー作り

このようなアウトラインになります。このチーム作りの実態としては多くのスタートアップも同様な状況であることも少なくないと思いますが、他のスタートップと異なるのは以下のポイントだと思っています。

▼クラブチーム化の肝要
・組織/チーム作りにおいて雇用をゴール/メインとしない
・企業と個人がプロスポーツのように短期(3ヶ月〜1年)契約でお互いの期待値を明確にしてプロフェッショナルにコミットする、これをチーム・組織作りのコアに据える
・上記"プロ契約選手"が生き生きと輝ける環境/チーム作りに注力する

さて、そんなスタートアップのクラブチーム化を推進する上で久々に読み返して「ここに一つの答えがあった!」と思わず唸った文献がありました。

そこで、今回のnoteではあらためてこちらをベースに「スタートアップのクラブチーム化」や「アフターコロナの企業と個人の全く新しい関係値」についてさらに思考を深めて行こうと思います。

人と企業が"信頼"で結ばれる新しい雇用

遡ること2015年に日本語版がリリースされた本書は、リンクトイン創業者のリードホフマンらが副題にもある通り「人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用」をテーマに、むしろそれが「シリコンバレーの企業が世界的成功を収めている真の理由」として論じています。

本書を貫く根底となる前提や思想は次の通りです。

▼ALLINANCEの要点
・シリコンバレーでは企業と個人との間にパートナーシップの考え方"ALLIANCE(アライアンス)"が浸透している
・それは長期雇用やジョブホッピングではない新しい企業と個人の「コミットメント期間」をベースとした関係値
・期間と役割を明確にすることで、会社・上司・社員の3社が実際に守れる約束を土台にした関係が築けるようになる

そして、あらためて目から鱗だったのが次のマインドセットです。

例えばなんとなく「雇用」と「短期契約」には次のような対比的イメージがありませんか?

・雇用 = 長期的な信頼がベースの安定した関係値
・短期契約 = ドライな利害をベースとした不安定な関係値

私も「短期契約のプロ契約」をベースとした人材がマジョリティとなるチーム作りにおいて、いわゆる「信頼」をベースとした優れたチームが作れるのか、最初はとても不安でした(今だにその側面はありますが)。

しかし、リードホフマンらシリコンバレーの主とも呼べる彼らは次のように説明しています。

まずはプロスポーツチームを例えて

プロのスポーツチームは終身雇用を前提としていないにもかかわらず、相互信頼と相互投資、そして互恵の原則が機能している。
個人の栄光よりもチームの勝利を優先するほどメンバー同士の信頼が強い時、チームは勝つ。
逆説的だが、そのようにしてチームとして勝つことが、メンバーの個人的成功にとっても最短の道になる。
常勝チームのメンバーは他チームから引っぱりだこになるが、それは彼らがスキルを発揮することに加えて、新しいチームでも「勝つためのカルチャー」を築くことができるからなのだ。

次に、本書が提唱する「アライアンス」のベースとなる、長期的関係を築くための「コミットメント期間(短期〜中期の期限を明確に定め、その期限に向けたミッションやお互いの期待値をクリアにすること)」を、軍事用語の「ツアー・オブ・デューティ」に例えて

「ツアー・オブ・デューティ」という比喩的な表現を使うのは、軍と民間企業のいずれのコミットメント期間にも共通する重要なコンセプトを伝えることができるからだ。
それは「 ミッションを期限内に成し遂げることに専念し、そこに個人の信用をかけている」という考え方だ。

目下のスタートアップのクラブチーム化における実体験も含めて要点を再度まとめあげますね。

短期〜中期の契約関係では、最初から良い意味でお互いへの期待値がクリアで、期限も明確である
・期待値も期限も明確なので、お互いがその枠内で最大限パフォーマンスするように努力する
・長期的に安定した雇用の関係じゃないからこそ、お互い「企業」と「個人」の「信頼」をその期間にかけることになる

当然これは「長期的雇用」を前提に実現できないことではありませんし、上司部下が定期的1on1などを通じて実現すべき"本来の企業と個人の関係値"だとも思います。

ただ、ここで声を大にして言いたいことは、この「信頼をベースとした会社と個人の関係」を、「短期契約をベースとした会社と個人の関係」でも作れるということと、むしろ作りやすいということです。

本書では「雇用」を前提とし、その上での「コミットメント期間(ツアー・オブ・デューティ)」をベースとした「信頼関係」の構築を解説していますが、むしろこの会社と個人の関係値において大切な「有期ゆえの信頼関係」は、スタートアップのクラブチーム化において実現できるということです。

最初の「雇用」と「短期契約」の対比的イメージに戻ると

・雇用 = 長期的な信頼がベースの安定した関係値(企業や上司次第)
・短期契約 = 有期ゆえに信頼をベースとした安定の関係値が作りやすい

だとあらためて考えています。

「就職/転職」か「退職」の二社択一で考えない、本当の「働き方新時代」へ。

その上で、企業も個人も、企業は「人的リソースの調達方法・チーム/組織作り」を、そして個人としては「働く」ということを

「就職/転職」か「退職」の二社択一で考えない。

というのが本当にこれから大事なマインドセットだと考えています。

企業側はあらためて「雇用」が人的リソースのメインの調達方法でなくて良いということです。つまり、「組織」内部の人材だけでなく、会社の外にいる「市場」の人材を会社の経営資源として活用できる環境が今まで以上に整ってきているからですね。

そのトリガーとなっているのはもちろん個人の働き方、生き方の変化です。そして数年前までは「思想」のみが先行していましたが、今との明確な違いはマッチングプラットフォーム × 業務のオンライン化(要はリモートワーク)によってその「思想」を企業も個人も具体化できるベースラインが整ったんです。

コロナ/リモートワーク化によって個人の業務効率は圧倒的に改善し、自らの人的リソースを特定の企業のみに奉仕し続ける必要が無くなってきました。

繰り返しますが、自らの人的リソースを "特定の企業のみに奉仕し続ける必要”が無いんです。

今、"労働環境"で加速度的に起きていることは、終身雇用は崩壊し、過度な成果主義も崩壊し、オフィスの重要性が下がりオンラインワークが中心となる世界での「企業と個人の関係の再構築」です。

その上で最重要ポイントは、今まで以上に「会社の信頼」をベースに優秀な人的リソースを引きつける、「個人の信頼」をベースに働く・生きるということが大切になってきているんです。これはむしろ「チャンス」と言って良いでしょう。個人側の「生き方/働き方革新」だけでなく、企業サイドも同様で、今まで以上に「会社の信頼」がより良いチームを作り続ける上で重要になっています。

故に、企業と個人を繋ぐものはこの「信頼」なんですね。

つまり「雇用」か「契約」かなどというHOWの前に、前提条件として突きつけられているのは「信頼」です。

雇用だろうが契約だろうがそれが一旦終了しようが、その企業と個人の間に「信頼関係」があればその関係は永続的に続くことができるということです。

オンボーディングとオフボーディングがなぜ重要なのか?

企業と個人の関係がゼロベースで始まる最初の大切な期間が「オンボーディング期間」です。「雇用契約」が始まる前後、オファー受諾から入社後おおむね90日前後がいわゆる「オンボーディング」期間ですが、前述の通り企業と個人のヘルシーな関係を最初に構築する本当に重要な期間です。

これは雇用でも契約でも変わらず、このオンボーディング期間で「お互いの期待値」をいかにクリアにすり合わせるか、これがその後の「信頼」構築に大きく関わってくるんですね。

ここでも「雇用」ではなく「契約」のメリットが顔をのぞかせます。長期の「雇用」が前提だと、より良い人材を採用するためにどうしても「自分を高く良く見せすぎる」傾向があります。特に企業、他社より経済条件等で劣りがちなスタートアップはより優秀な人材を採用するために背伸びしすぎるんですね。そうすると、最初の期待値設定にミスることになります。

逆に「契約」前提だと、良い意味でお互いもっと肩の力を抜いています。短期〜中期契約が前提なので、書面も含めて「期限」と「期待役割」が明確になっており、個人側も「自らがコミットできる領域」を非常にクリアにしていますから、この有期のミッション期間(ALLIANCEの言葉を借りるならコミットメント期間/ツアー・オブ・デューティー)において、シンプルにお互いの「信頼」をかけやすくなります。

このように「信頼関係」の始まりが大切であり、一度構築した「信頼関係」は余程の事が無い限り、ゼロにはなりません。

しかし、なぜか「雇用の終わり」において、企業も個人もその「信頼関係」までゼロにしてしまうんですよね。これは非常にもったいないことです。そのトリガーを引くのは、やはり大抵企業サイドになっています。

企業と個人の信頼関係が終わる時、それは「別れ際での態度」でもあります。それは「雇用」を前提としているから、企業は別れ際に去りゆく個人に冷たくなってしまうんです。

オンボーディングとオフボーディング、この「冷たい企業」を例えるなら

・釣った魚に餌はやらない(オンボーディングの失敗)
・去る者は追わない(オフボーディングの失敗)

ということです。この態度に根深く横たわっているのが「雇用」という"ゼロイチ思考"なことは明らかですね。特に企業サイドは、この「雇用」というゼロイチ思考から、「信頼」という"積み上げ思考"にサイドチェンジしないと今後優秀な個人を引きつけ続けることは難しくなるでしょう。

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終わりに

全てのスタートアップがクラブチーム化すべきとも思いませんし、今なお圧倒的成長を続け時価総額が1兆円を超えたサイバーエージェントは「終身雇用」に近い組織・チーム作りをしています。

我々も、今はあえて「雇用」とは逆サイドの「プロ契約」をベースとしたチーム作りに振り切っている状態です。ただ、だからこそ見えてくる企業と個人の関係値の本質がありました。

それは、「雇用」でも「契約」でも「始まり」を「信頼関係の始まり」と捉え、信頼関係構築に注力すること。

それは、「雇用」でも「契約」でも「終わり」を「信頼関係の終わり」と捉えず、可能な限り信頼関係を維持する努力をし続けること。

これは、これからの会社と個人の関係値において、あらゆる接点でこうあるべきではないでしょうか。「雇用」や「契約」という垣根を取っ払って、会社と個人の関係値を「信頼」という本質に根ざして向き合う世界が、コロナを経て一気にあらゆる組織の目の前にやってきました。

それは5年前でもなく、やはり「今」なんだと思います。むしろ、それを新しいチーム作りの「機会」と捉えれば、チャンスの最終列車はまもなく発車寸前だとも思っています。積み上げたカルチャーはそう簡単にはリデザインできません。なのであれば、今すぐこの「信頼」をベースにした新しい組織のカルチャーデザインに一緒に向き合ってみませんか?

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Kenji Tomita / Runtrip
symsonic.eth / Runtrip取締役USEN→VOYAGE→genesix創業→スマニュー8番目社員/組織200人までグロース→現職。組織寄りのスタートアップ経営者ですnote(17,000follow)書く走る筋トレする人 #HRを図解します #カルチャーデザイン