見出し画像

世界の縮図、それがホテル

ホテルは、本当にいろいろな人がいる…。
と書くと「あ~、色んなお客さんがいるよね~」と思われる方が多いでしょうが、お客さんサイドではなくて、そこで働いている人たちもそれに負けず劣らず多種多様です。

ホテルは総合格闘技、とおっしゃった方がいたが本当にそのとおりで、普通のオフィスワークをする会社と比べると、多種多様な人がいないと成り立たない業種だ。

画像2

ちょっと考えてみてもわかるけど、ホテルの顔!とばかりに華やかなフロントやレストランスタッフ、暑いキッチンで戦うシェフ、客室やパブリックエリアをいつも清潔に保つハウスキーピング、あちこちで何かが壊れたり不調になるのを片っ端から修繕するエンジニアリング、「姉さん、事件です(古いか)」があったら即座に駆けつけるセキュリティ、いつも誰かとコミュニケーションしてるセールス&マーケティング…まだまだあるけど以下略!

これだけ多様な職種が必要なので、そこで働く人も当然多種多様になる。

年齢からいっても、勤続何十年という大ベテランから、ついこないだ高校を卒業したばかりのティーン・エイジャーもいる。

学歴をみても義務教育だけの人もいるし、もちろんシェフやエンジニアリングスタッフはそれらの専門学校を出て、資格を持っている。かといえばオフィスで働いている人の中にはかなりの高学歴の人もいる。

性別にしても、男女比はかなりイーブンだと思うし(まあこれはオーストラリアではどの業種でも同じかな)、もっと言えばゲイのスタッフも多い。

でも、やはりその職に合った「特性」があるようで、ある一定のパターンが見えてくる。

例えば、こちらではHuman Resources と呼ばれる部署(日本でいうと人事、庶務という役割だろうか)は、圧倒的に女性が多い。実際ウチのホテルは全員女性だ。

こちらのHuman Resourcesは、人事だけではなくてスタッフの悩み事、文句を聞くといったカウンセリング的な仕事をすることも多いので、共感力の高い傾向がある女性の方が向いているのかなあ、と思う。

私個人としても、なにか相談事があったら、強面のオジサンより、「うんうん、そうよね~」と聞いてくれる女性の方が話しやすい(もちろん例外もあり)。

ここまではどこの国でも似たようなものだと思うが、オーストラリアの場合これに人種がからんでくるので更に面白くなる。こちらでのあるあるだが、

IT関係のスタッフはインド系の人が多い。彼らがコンピュータ系に強い、というのは有名な話だが、実際にそのとおりでアタマがシャープだ。インド人恐るべし。

経理は、たいがい中国系のアジア人。これも本当にステレオタイプで笑っちゃうけど、皆さんよく勉強して会計士の資格を取ったりしている。「ちょと~、先月のインボイスの数字間違っていたわよ~」なんてビシビシ指摘してくるので、数字に弱い我々コンシェルジュはいつもタジタジだ。

ハウスキーピングは、圧倒的にフィリピン系のオバちゃんが席巻していた。まあ、パワフルでいつもポジティブ(で、やかましい)。だいたいもう子供を何人も育ててるので、多少のことでは動じない。

ただ、最近はそういったオバちゃんたちもそろそろリタイヤしてきて、その子どもたちは高学歴の傾向があるので、フィリピン系の牙城は崩れつつあるかなあ…。

セキュリティは、こちらではアイランダーと通称するサモア系、トンガ系、マオリ系のヒトが多い。

ナゼかといえば…ラグビーを見たら分かるよね?とだけいっておこう。

さて、私が働いているコンシェルジュ(ポーター、ドアマンを含める)はどんな感じかというと…

画像1

先日チームディナーをした時の写真。全員じゃないけどね。

まず、私の直属のボス(チーフコンシェルジュ)を含め、フィリピン系が多い。これはウチのホテルに限らず、ホテルのポーターやコンシェルジュにはフィリピン系のスタッフが多い。これはクルーズ船などでも同じですね。

DNAにホスピタリティという要素がたくさん入っているのかどうか知らないが、とにかくゲストのニーズを察知するレーダーが敏感で、ススっと対応できる。それから、人当たりがいいんだよなあ~。スマイルも、ゲストを無防備にさせるような力がある。あれはなんなんだろう。
フィリピン系の人に特有の、フェイク・アメリカ訛りの英語を聞くとちょっとクスッとしてしまう。それからバスケットボール大好きで、だいたいNBAの贔屓チームのキャップをかぶっていたりする。

次に多いのは、オーストラリアでWOG(ウォグと読む)と呼ばれる、南ヨーロッパ、中近東系の奴らだ。
ちなみにこのWOGという言葉は、以前は差別語だったが今ではそうでも無いようで、本人たちも自虐的に使っている(でもよほど親しくならない限り使わないほうがいいですね)。

ちょっと怪しげな仕事や、ギャングもここら辺の人が多かったりするのでちょっとネガティブなイメージもあるが、オーストラリアの移民社会では大きなパーセンテージを占めている。

奴ら…と書いたのは別に敵対しているわけではなくて、たまたまウチのスタッフがハタチ前後だから。

彼らのバックグラウンドはセルビア、クロアチア、トルコ、レバノンだ。この辺の国は以前お互い戦った歴史があるが、こういう若い世代は別に気にせず仲良くやっている。
彼らは、移民二世だから完全なマルチリンガル(家では母国語、外では英語)だけど、彼らの話す英語もちょっと癖があって面白い。
あと、彼らの話を聞いているとやっぱりアングロサクソン系とは違って、ヨーロッパ文化圏なんだなあ、と感じる。例えばフットボール(サッカーと言うとやや軽蔑される)が大好き、みたいな。

もちろん、インド系のスタッフもいる。

といっても、私の見た目からは皆インド系に見えるが、インド本国出身者は一人だけだ。まだ若い学生で、大学でITの勉強をしながら(やっぱりITか!)、パートタイムで働いている。
別の一人はタミル系の真っ黒な肌の色だが、実はフィジー出身者。フィジーは以前イギリス領だった影響か、インドからの入植者がけっこう多いのである。
もうひとりはネパール人で、インド人とみなされると、「オレはインド人じゃない!」とちょっとムッとするところは、どこの国も同じ感覚なのかな?でも、クリケットを熱愛する辺りは、やっぱりインド亜大陸のヒトなんだなあ~。

あとは、インドネシア人が二人いて、サモア系がいて、私日本人がいて…

…いわゆる「オージー」、つまりアングロサクソン系はいるんかいな?となるが、ハイ、います。

二人だけだけど。

これに年齢、学歴、既婚・未婚、子供の有無…なんて数えだしたら本当にまちまちで、まあよくも一緒に仕事しているよなあ、と驚いてしまう。

もちろん意見の相違とかはしょっちゅうあるが、それが人種を基にしたことは…なかったなあ。

ね、面白そうでしょ?毎日がちょっとした発見があって興味が尽きない。これだからホテルで働くのは楽しいのです。