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本日も、ランニングシューズに足を入れ

今日も休日だ。いや、少なくとも今月いっぱいはそれが続く。
本も読んだし、メールのチェックもした。外は青空が広がっている。さて、走りにでも行くか...。

神経がズタズタになった3月

Covid-19がオーストラリアで猛威を振るっていた3-4月。ロックダウンの条件が厳しくなっていき、行ける場所、できることが日に日に減っていった。

私が勤めているホテルも、海外・国内旅行者がほぼゼロ、という状況のなか、いつ閉鎖してもおかしくない状況だった。

人件費をおさえたい経営者と、勤務時間を確保したいスタッフの間に立つ中間管理職としてはしんどい時期だった。

メンタルがずだぼろになり、やってらんねーよ、いっそ仕事を辞めたら楽になるかも、とさじを投げたくなったが、そんな時はランニングシューズを履いて外に走りに行った。走っている間は、一時的ではあるが携帯電話やメールといった仕事関連のしがらみから解き放たれて、頭がクリアーになるような気がした。

休職が決定、そしてさらに走る

4月のなかば、やっと政府の給与保証が出ると決まったので、私のホテルのほとんどの社員は休職扱いとなった。私も人事部に呼ばれ、向こう3か月休職するように、という通知を受け取った。

その時まず頭に浮かんだのは、

「ああ、これで毎日のように走ることができるな」という思いだった。

ランニングは、自分の数少ない「得意技」だと思う。定期的にランニングクラブに参加し、ハーフやフルのマラソン大会にも参加していた。

ただ、ホテルのフロントラインで働く仕事なので、勤務中はほとんど立ちっぱなし。仕事の後に走るのは脚が重たくて楽しくないし、仕事アフターの付き合いもかなりあったので、実際のところは週2、3回走れたら御の字、というかなりのテキトーランナーだった。

それが一転、全く仕事をしなくて良い、という環境に放り込まれたのだ。いつでも走りに行けるじゃん。

仕事しなくていいよ、と言われても、怠惰な生活に陥るのは絶対避けたい。質の高い本を読んだり、オンライントレーニングに参加したりしつつも、なるべくたくさん走ることによって、晴れて職場復帰を果たした暁には、頭も身体も向上しているくらいにしよう。
YouTube, Netflix, Spotify などといった誘惑に負け、ずるずると流れるように生活をしてしまったら、この情勢に「敗けた」ことになる。それはいやだ。

ロックダウンになったシドニー…。飲食店、美術館や図書館といった公共の施設が軒並み閉鎖となった。外出も、食料品の買い出しなど必要最小限にとどめるように決められた。

スポーツも、チームスポーツは禁止となり、、ジムやプールは閉鎖となった。辛うじてできるのは個人での運動だった。この時ほど、ランナーでよかったと思ったことはなかった。

ジムやチームスポーツを楽しんでいた人はいままでの運動ができなくなって大変困っただろうが、ランニングは問題なし。

そして、それは私がずっとこれまでやっていたことだから、何の変化もない。グループランが中止となったり、予定されていたマラソン大会が中止、延期になったのは寂しかったけど。

ただ、当初は外を歩く人は本当に少なく、たまの歩行者も神経質になっていたので、こちらも十分間隔をあけてすれ違ったり追い抜いたりと、かなり気を使って走った。向こうから来る歩行者に舌打ちをされたこともあったし、荒い息を切らして走ってくるランナーとすれ違った時は、こちらもナーバスになった。

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日中にオペラハウスの前がこんなにガラガラになるとは…

家にずっといると、やはり将来の不安が湧き上がってくる。本当に復職できるのかな…といった。そういったもやもやとした感じを吹っ切るためにも、外を走り、汗とともに嫌な気持ちを一時的でも飛ばすのは効果的だった。

そして、公園の草花が目に染みた。もちろん以前から花はそこにあったのだが、自分の気持ちが変わったので、目に留まるものも変わったのだろう。鮮やかに咲き誇っている花を見ると、生きているだけで充分だと思った。小さな花に勇気づけられる、というのも変な話だけれども。

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ランニングの途中で見た草花…

ある時は、10日間連続で走るということもした。なんとなく始めたのだが、止める理由もないのでどんどん続けてしまった。あれは何だったんだろう。
とりあえず連続日数がふたケタになるまでやったのだが、これはやはり脚に疲労がたまったのでおすすめは出来ない。でも、そのおかげで5月は、自分のランニング歴初めて月間走行距離が200キロに達したので、これはかなりグッとくるものがあった。
(きちんとしたランナーなら月間200キロは偉業でもなんでもないらしいが…)

しばらくすると世の中の状況がやや落ち着いてきて、様々な規制が少しずつ解除された。少人数グループの運動も出来ることになったので、ラン友とたまに一緒に走るようになった。一人で黙々と走るのもいいけれど、どうでもいいようなことをお喋りしながら、余りペースに気を配らずにゆっくり走るのも気が休まった。

トレイルラン

そんな時、ラン友から国立公園の中を20キロほど走るトレイルランに誘われた。

トレイルランは、山などの舗装されていない道を走るスタイルで、私も10キロほどの短い距離を走るレースに参加したことはあった。

ただ、誘われたコースは、野を越え丘を越え、砂浜を横切り…という、かなり過酷なコースだ。近所の公園の舗装された道を20キロ走るのとはわけが違う。

やや不安を抱きつつもなんとか走り切った。翌日はお尻や脚の筋肉がバキバキに痛くなったが、ほとんど人のいない海沿いの野山を走り、素晴らしい景色を楽しむことができた。


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こんな素晴らしい景色の中を走れるのがトレイルランのだいご味

そして、そんなキツいトレイルランをした後にパブに行き、ビールを飲むのは最高に美味だった。

これならもっとトレイルランやってもいいじゃん、ということで、トレイルラン用のシューズやバックパックも購入した。

それ以来、毎週のようにトレイルランをしている。遠足気分で、飲み物やスナックをバックパックに入れ、シドニーの今まで行ったことのない場所に行く。

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これはシドニーの街からたかだかフェリーで30分ほどの場所にあるエリアをトレイルランした時に撮った写真。やっぱりシドニーはいい場所だ。

家の近所にも景色のいいランニングコースがあるが、知らない風景を見ながら走るのは新鮮だ。そして自然のスケールが大きくなるほど、そこから自分に帰ってくるものが大きくなるような気がする。

平日だと、周りに誰もいないことも多く、「自然と個人」という状況に置かれることが多い。これがたまらない。

木々のざわめき、鳥の声、小川の水の流れ…といった自然の音と、自分の足音、息遣い…ただそれだけで、自分を見つめることができる。

今日も…走るか!

前々から走るのは好きだったが、このような状況になった今、本当にランナーで良かった。まだまだ先が見えない世の中の状態は続くし、正直私の仕事だってお先真っ暗…とまでは言わないが、かなりマズい職種である。
でも、この何か月かを通して思ったのは、大げさではなく、走れてさえいれば大抵のことは乗り切れる、ということ。

走れることに感謝。

さて、明日はどこを走ろうか?

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友人と、シドニーから2時間のブルーマウンテンでトレイルラン。

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