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オーストラリア、大丈夫?デルタ株との戦い

いやはや、栄光の座から堕ちるのは早いね…。

昨年末からつい3週間前までは、ゼロコロナを謳歌していたオーストラリアだが、ここにきて何やら不穏な空気が漂っている。

なぜというなら、6月26日より私の住んでいるシドニーはロックダウンになっているからだ。

そしてそれが他の州にも広がりつつあり、オーストラリアの全土が不安、不穏な空気に包まれている。

下の写真は7月2日に撮ったシドニーのど真ん中だけど、金曜のお昼時である。ご覧のように、人がほとんどいない。

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経緯

そもそもの始まりは、6月16日に国際線パイロットを送迎していたドライバーが感染してしまったことだ。

オーストラリアは水際対策が厳しくて、今でもほぼ鎖国をしている。少数の海外からの帰国者は空港から即座にホテルに送り込まれ、14日間の隔離生活をしなければならない。その間外出厳禁。道路に面した非常階段の出口にはセキュリティが(暇そうに)座っている。

飛行機のパイロットなどは、空港からホテルまで送迎され、部屋からは出られない。

そんなシステムなのでかなり万全なハズなのだが、それでも壁から水が染み出るように、これまでもホテルのスタッフなどから感染者が出ることはあった。

そのたびにその感染者がいつどこへ行ったか、等といった情報が公開され、市民はすわ、アウトブレイクか!とビビるのだが、この国はとにかく検査・追跡・隔離が徹底しているので、これまでは大事に至らず何日かすると抑え込みに成功していた。

しかし今回の誤算は、例の変異株というやつだったということ。通常のより感染スピードがとても早いデルタ株ってやつですね。

そのドライバーが無症状だけどウイルスを持っている時点で普通に買い物に行ったりカフェに行ったりしていて、そこで別の人にうつしてしまう。

その別の人がまた別の人に…というパターンで、感染者数が倍々ゲームのように増えていき、7月1日の時点での累計感染者数が200名弱となっている。

シドニーのあるNSW州は、今まで感染者が出ても滅多なことではロックダウンをしなかったのだが、これにはたまらずロックダウンをしたわけだ。いや、デルタ株恐るべし。

ロックダウンのシステム

ロックダウンというと、「え、家から一歩も出ちゃいけないの?」と思うかもしれないが、今回のロックダウンはそれほど厳しくはない。そういえば、州政府は、Stay at Home Order (日本でいうステイホームですね)という言葉を使っている。

移動制限、つまり自分の住んでいるエリアから離れてはいけないとか、外出制限、つまり不必要な外出はしてはいけないとかいう感じだ。もちろん旅行なんてもってのほか。

ではあるが、どうしても通勤しないといけない人は通勤してるし、スーパーや薬局といった生活必需品を扱うお店は通常営業している。ここに酒屋が含まれているのはオーストラリアらしいというか…。でも、ストレス溜まるから家で美味しいワインでも飲んでないとやってらんないよね。ロックダウンで飲酒量が増え、家庭内暴力が増えるという問題もあるけど、まあその話はここでは触れない。

パブやバーは営業してはいけないが(この辺は日本のロジックと同じだ)、レストランやカフェはテイクアウェイやデリバリーは可能なので、それでなんとか頑張っているお店も多い。こんな状況でもコーヒーを求めてカフェにちらほら列ができているのを見ると、やっぱりオーストラリアだなあ、と少しホッとする。

今日、街のど真ん中をランニングしてきたが、目につくのは蛍光色のシャツを着た建設関係の人ばかり。まあ、道路工事とかビルの改装とか、普段だと周りに配慮しないといけないから大変だけど、街なかに人がとても少ない今は絶好のタイミングだからなあ。

ダメージを被っているビジネス

という感じで、普通のオフィス職の人はもちろん在宅勤務しないといけなかったり、出張が出来なかったりで不便ではあるが、仕事自体はできているようだし、先に触れた建設業の人たちは、いつもよりかえって忙しくなっているかもしれない。

しかし私が従事しているホテルのような、人が移動してくれないとショウバイにならないビジネスは、こういうロックダウンがあると非常にこたえる。ロックダウンが始まってからはキャンセルに次ぐキャンセルで、もう、ホテルを開けている意味なくない?というほどの人しか泊まっていない。どれくらい人が少ないかというと、あまり大っぴらに公表するのはマズいのかもしれないが、まあ野球のチームすら作れないほどの人数である。

というわけで最低限の人員でホテルを回しているのだが、正社員も年休を使って勤務日数を減らすよう頼まれているし、パートタイムの社員は必要最低限の勤務時間しか割り当てられていない。収入が減るのは厳しいが、まあこんなにガラガラなんだから仕方ないよな…と思ってしまうほどだ。

また、他の完全に店を閉めなくてはいけない業種の人ももっと大変だろう。特に個人業主のビジネスはロックダウン明けまでどうやってしのぐのか、物理的にキツイと思う。

さすがに今回は政府も支援策を出すようで、小規模なビジネス、ホテルなどの業種には支援金、減税などがされるようだ。

ナニが問題なのか?

さて、「こんなになったのは誰のせいだ!」と犯人探し(英語ではWitch-huntという…魔女狩りですね)をするわけでもないが、ここで問題になっているのが、オーストラリアではワクチン接種率がかなり低いという事実だ。

そもそもの発端となってしまったドライバーが、なんとワクチンを打っていなかったということが判明し、「え?なんで~?」と思った人が多かった。

だって、海外からのパイロットを車という密室で送迎するドライバーなんて、ハイリスクじゃん。

しかもゼロコロナのオーストラリアでは、最初に感染するのはいつだって外国人と接する人なので(国内に感染者がいないので)、その人たちがワクチンを打っていれば、例えワクチンの効果は完璧ではないにせよかなり防げるはずだ。

その後も、ワクチンを打っていない病院勤務の看護師が感染者になってしまっていて、ちょっとこれはずさんだなあ…と、モロに生活の影響が出ている業種に携わっている私としては恨み言をいいたくもなる。

政府が確保していたのがアストラゼネカ製のワクチンで、その後副反応の問題が出たためそれを使えるのが60歳以上の人だけになった…、という不運もあったが、ワクチンに関しては後手後手にまわっている。

日本が遅い遅いと非難されているが、それといい勝負…といったところで、完全に接種が終わっている人は人口の1割も行っていない。

ちょっとゼロコロナを達成したということで、油断していたという面はあるなあ、と思う。

今後の見通し

さて、この後どうなるか?ということだけど、私は時間は少しかかるけどたぶん2-3週間で鎮静するのでは、と思っている(そうじゃないと困るので切望している、と言い換えてもいいけど)。

まだ新規感染者は出ているけど、だいたい一日20名ほどで推移しているし、なにぶん対策に要する労力が半端じゃない。毎日のように感染者が訪れた場所が公表され、この場所に行った人はすぐ検査行って!なんなら14日間自宅隔離して!というお達しがバンバン出てくるからだ。

また、検査の数もどこかの国とは比べ物にならないほどい多い。

7月1日の検査数は、6万弱。それだけ検査すりゃ、そりゃあ感染者数もそれなりに出るわけで、これはパニックしなくてもいいと思う。

ただ、最近はオーストラリア人もこの鎖国体制、即座にロックダウンする体制にうんざりしている人も増えているようだ。政府も明確なExit Planを打ち出せていないようで、このままいつまで鎖国が続くの?と思っている人が多い。

もう、ウィズコロナでもいいじゃん!という人も増えているようだ。

特に、海外に家族やパートナーが居る人は、とにかく移動が制限されるというのはキツイだろう。それは分かる。

ただここで忘れてはいけないのは、コロナが風邪だったら、どうして世界中でこれだけバタバタと人が亡くなっているのか、ということだ。インドなんか悲惨だったものなあ…。そして、ワクチン接種がかなり進んだヨーロッパや北米でも、死亡者は減っているらしいが感染者数はそれほど減っていないようだ。

ひるがえってオーストラリアは、これだけ厳しい水際政策、少しでも感染が広がりそうになったらロックダウン!という体制だったからこそ、感染者数や死亡者をかなり少なく抑えることが出来たはずだ。だって、オーストラリアでは、コロナで命を落とした人は…えーと、いつのことだろう?っていうくらい昔の話だ(調べてみたら昨年の10月だった)。

ウィズコロナを主張している人は、それを忘れているのではないかな、と思う。

そりゃ、私だって特に生活がかかっているホテル業で働いているから、ウィズコロナで、国境ももっと開けちゃって…という方が仕事は保証されるし、生活は安定するかのように見える。

でも、もしかしたらそのおかげでコロナに罹ってしまうかもなあ…という、「漠然とした不安」を抱えて毎日を暮らす、というのは果たして正解なのだろうか?

「ただの風邪」ならば薬を飲めば治るけど、この病気、まだまだ未知数が多いし、どんな後遺症が残るかもまだ分からない。

結局、ワクチン接種率が上がるまではしばらくタイトな水際対策をして、たまには今回のようなロックダウンもあるかもしれない、という覚悟をして生活をしていくのが現状では正解なのではないだろうか。

そのためには国は物質的、精神的に落ちこぼれる人がなるべく出ないように配慮しつつ政策を進めて欲しいし、国民はその制作に是々非々はあるとはしても、決められたルールには従って生活していかなければいけないのかな…そして、周りの人への配慮を忘れずに。

こんなに安心安全だったオーストラリアでも一転してこうなってしまうのだから、この戦い、長丁場だ。自暴自棄になることなくよく考えて日々の生活を送らなくては…。

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こんなに素晴らしい天気なのに、なにか皮肉だね。