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あたりまえがやれない僕らのための『発達障害サバイバルガイド』

【7/20 お問い合わせが多かった下記2点について追記しました】
「発達障害なんでも人生相談」のオンラインイベントには、本をご購入いただいた方はどなたでも(書店様や紙・電子は問わず)ご参加いただけます。
②当日イベントにご参加いただいた方には、本に入りきらなかった「未収録原稿」のURLをプレゼントいたします。

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 いつもありがとうございます。借金玉です。7/30に、2年ぶりの新刊『発達障害サバイバルガイド』を発売することになりました。 
 僕は先週くらいからこの告知の文章を書くのすらギリギリの鬱状態かつ極めて強烈な不眠が重なり、3日眠れていないのに仕事は何一つ進まないみたいな状態が続きました。もうそれ生活と呼べるの?というあれなのですが、そんな奴が書いた本ということに意味があったらうれしい、そんなことを考えています。少なくとも、僕が今後「俺は生活を上手くやれてる」と見栄を張る必要のあるような内容は一つも書かれておりません。

 8/7に、この本をご予約、あるいはご購入いただいた方限定でオンラインイベントもやります。「発達障害なんでも人生相談」ということで、(医療的なものとかめちゃくちゃ怒られるやつとか以外の)いろんな悩みにお答えしたいと思っています。よかったらご参加ください。イベントに当日ご参加いただいた方には、前回に引き続き未発表原稿をプレゼントする予定です。いっぱい予約が入るとアマゾンランキングがいい感じになり、本屋さんもいっぱい仕入れてくれて世界は幸福に包まれていく。そういうあれもあります。あるものはあるんだ、仕方ないんだ。何卒一つ購入ご予約のほどをよろしくお願いいたします。

 あとは僕がどうしてこの本を書いたか。印税収入が欲しかったという理由ではない方の、少しだけ大切なお話を。

ぜんぶうまくいかないことに気づいた小学生

 人生で一番最初に悩んだこと。僕はわりとはっきりそれを思い出すことができます。「ぜんぶうまくいかない」そんな気持ちです。時期はぼんやりしてるけれど、たぶん小学生の半ばくらい。ささやかな自我が生えてくる時期に、僕は周りの子供たちと比べてなにもかもぜんぜんうまくいかない。もちろん、毎日ちゃんとランドセルに必要な教科書を入れて登校できないとか、朝どうしても起きられないとか、身だしなみが上手にやれないとか、どうしても体育着を忘れてしまうとか、友達との関係がぎくしゃくするとか…そういう具体的な問題はいくらでもありました。でも、それは体感的に言うと、自分を取り囲んでいた世界が急に親密さを失っていくような、海を泳いでいたら急に温度の低い層にぶつかったような「怖さ」として印象に残っています。当時の僕は様々な問題を一つ一つ弁別して認識することができなかったんでしょうね。今は出来るのかと言われれば、それも怪しいですが。

 そして「怖さ」はもちろん現実のものとなって、僕はまさしく何事も上手くいかない人生を送ることになるわけですが、その問題が具体的にどんなもので、それを解決するためにはどうすればいいのか。そういうことが、34歳になってやっと形にできました。つまり、僕はどうやってこの人生を生きていけばいいか、もっと正確に言えば毎日をどうやって暮らしていけばいいかということです。だから、今回はそんな本を書きました。相変わらず、大したことは書いてありません。人生を劇的に好転させる方法とか、大金を稼いで社会的階段を駆け上がるテクニックとか、僕だって本当のことを言えばそういうことが書きたいんですよ。でも、僕に書けるのは「なにもかもうまくいかない時に、どうやって生き延びるか」くらいが相変わらず限界です。

いろんなことは全部「紙一重」

 ただ、この歳になって気づいたことがあります。それは、いろんなことは結構「紙一重」のところにあるということです。めためたな失敗と快哉を上げるべき成功、塗炭の苦しみと豊かで幸福な生活、欠乏に耐える日々と充足した毎日。こういうものは一本の線の右端と左端みたいな場所にあるわけではなく、むしろほんのちょっとの違いから生まれてくるんじゃないかと思うんです。大砲のタマを発射するときの角度がほんの3度くらい違うと、着弾点はまるで違う場所になるみたいに。そして、その”ほんのちょっとの差”の一番重要なものが「毎日を快適に暮らせる技術を持っているか」なのではないかと僕は考えました。それは、この世界を生き抜く「サバイバル」の技術を持っているかと言い換えてもいいかもしれません。そして、その「紙一重」をあるべき側に押し込む本を、あなたの人生の角度を3度だけ良い方向に変える本を、僕は書きたかったんです。

 かつて僕は、勝手に「ノーススラム」と呼んでいるあまりガラのよろしくない北の方の街で、友人たちとシェアハウス暮らしをしていました(この呼び名は同郷の人間にたいへん好評です)。この時、周囲には「サバイバル」が上手くやれない友人たちがたくさんいたのを覚えています。さまざまな事情で(例えば母親に恋人が出来たとか、実家に自分がいると生活保護が受給できないとか)家から出なければいけなかった子どもたちの多くは、サバイバルテクニックをまるで知らなかった。彼らは限られた収入を上手く使えず、あるいは生活を豊かに整えていくことも出来ず、乱雑にモノが積み重なったそれでもほとんど何もないような部屋で暮らし、いつもお金の不足に苦しんでいました。お金を返さない友人の家まで取り立てにいったら、古びて黄ばんだドアの郵便受けから、生け花みたいにカラフルなサラ金の督促状がニョキニョキ生えていたのを今でも思い出します。モノ自体はたくさんあっても生活拠点としてはまるで機能していない、あの寒々しい殺風景さも。隙間なく雑多な小物が置かれたコタツの前の、へたって色あせたクッションソファに座って彼と話した、当時の僕たちとしては絶望的な話も。

 僕の原体験は、たぶんこのスラムにおけるシェアハウス生活にあります。本当にお金がない十代の子供が三人集まって、なんとか生活を作り上げていった記憶。それは時間の経過による美化と、僕が初めて「自由」と呼ぶべきものを手に入れた喜びの記憶も相まって、「ロビンソンクルーソー」を読んだときみたいな楽しさを伴う思い出になっています。最初は洗濯機がなくて風呂で足踏み洗いをした洗濯物の、袖口の黄ばみがまるで落ちていなかったこと。お金を出し合って買った洗濯機のあの驚異的な利便性。やっと机と椅子を手に入れて本を読み、文章が書けるようになったあの快適さ。生活が積みあがっていく確かな喜びがそこにはありました。そして、僕の大体においてはお金がなかった人生を支えたのは、きっとこの原体験とそこから生まれてきた技術なんだろうと思います。

働かなくてもいいけど、生きていくために

 生きていくには働かなければいけない。これはもう完全にウソです。福祉に頼ったっていいし、お金に僅かなりとも余裕があれば別に働かなくたっていい。でも、生きていくためには生活をしなければならない、これは絶対に揺るがない事実です。そして、その生活が豊かで温かなものであれば、それは人生の揺るがぬ土台になります。僕が以前書いた本は「働く」ためのもので、もちろんそれは僕としても必死に書いたものではあるのですけれど、そこには「生活」の観点が抜けていました。それはもしかすると、「サバイバル」とは「働く」ことであるような強迫観念を植えつけてしまうものであったかもしれません。だから、二作目は「生活」について、あるいは生き残ることについて書きました。それも、出来るならば幸福に生き残ることについて、何もない状況から豊かな生活を作り上げていく「サバイバル」の技術について。この本に書かれていることはそれだけです。

 代わり映えしないことに、この本に僕がこめたメッセージは前作とまったく同じです。生き延びよう、それも出来るなら幸福に生き延びよう。たったそれだけのことを僕はあなたに伝えたいと思っています。そして、もう一つ。この本におけるサバイバルとは、汚れた水を啜り、蛇を生のまま齧り、なんとか生だけをつなぐような、必要最低限の物資と設備で生き残っていくことを目指すような「ストイック」さは一切ありません。僕が少しでも楽に、少しでも気楽に、少しでも余計な負荷を負わず人生を生きるために考えたことの全てと言ってもいい内容となっています。ただでさえ苦しい人生です。「生活」でくらい楽をしないでどうするんだ。そういう気持ちが込められています。他になにひとつ誇れるものもありませんが、意識の低さだけは相変わらず間違いありません。それだけは信じていただけると思います。

 さて、本を一冊書き上げるというのはなかなかにしんどい作業なのですが、今はみなさんにこの本がどう受け入れられるかということに僕は途方もなく怯えています。恐怖から目をそらすためにこの文章を書いているところもある。それでもまぁ、もう本は印刷に入ってしまっているのでどうにもなりません。そんなわけでみなさま、とりあえず必死で書きました。何卒よろしくお願いいたします。

 そして人生を出来るなら幸福に、やっていきましょう。

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【目次】
はじめに 「食っていくための」生活術 

CHAPTER1 生活環境――サバイバルに絶対必須の設備ハック
発達障害サバイバルの大原則【生活環境編】設備投資できない病がすべてを狂わせる
●Hack01 食洗機が「先延ばし人生」を解決する  
●Hack02 健康が一番高い。今すぐ「寝床」に課金せよ  
●Hack03 机とイスは、あなたの家の「知の生産拠点」 
●Hack04 「ぶっこみ収納」で汚部屋から脱出せよ  
●Hack05 「いつも何かを探す人生」を断ち切る神ツール  

CHAPTER2 お金――貧困と借金から学んだマネーハック
発達障害サバイバルの大原則【お金編】必要なのは「金を稼ぐ」技術より「貧乏でもやっていく」技術
●Hack06 「世界一ラクな家計簿」で浪費が止まる  
●Hack07 多重債務生活を今度こそ終わらすたったひとつの方法  
●Hack08 「貯金0円」の発達障害者が100万貯める技術  
●Hack09 食費を削りたいならスーパーに行くな  
●Hack10 借金は、ちょこちょこ借りるな  

CHAPTER3 習慣――くりかえしが苦手な僕らの365日ハック
発達障害サバイバルの大原則【習慣編】生活の「スタートコスト」を下げろ
●Hack11 「1日1箱」で習慣を固定しよう  
●Hack12 やることパニックは「他人に」整理してもらう 
●Hack13 「決断疲れ」には週1カレーが効きます  
●Hack14 「風呂に入れない病」を解決するスゴ技   
●Hack15 起きるハードルを極限まで下げた目覚めハック2・0 
●Hack16 睡眠薬を飲んでも眠れない夜を救う「強制終了」 
●Hack17 「パジャマ」でアルコール依存を防ぐ  

CHAPTER4 在宅ワーク――だらだらに勝つ自宅作業ハック
発達障害サバイバルの大原則【在宅ワーク編】よき日常があってこそ、よき仕事がある
●Hack18 何よりもまず「働かないイス」を用意する  
●Hack19 発達障害のための最強「机コックピット」  
●Hack20 「手洗い儀式」でだらだら癖を追い払う  
●Hack21 「過集中で脱水症状」は小型冷蔵庫で防ごう  
●Hack22 タスクはデカい「ホワイトボード」に全部ぶっこめ  
●Hack23 すっぽかしをゼロにする「究極カレンダー」  
●Hack24 「お菓子を贈る」でゆるい絆を維持する  

CHAPTER5 服――おしゃれとか以前の身だしなみハック
発達障害サバイバルの大原則【服編】服に「センス」は必要ない
●Hack25 あなただけの「ライナスの毛布」を手に入れよう  
●Hack26 「アップルウォッチ」で時計マウンティングを回避する  
●Hack27 「ジャケット+スラックス」を信じろ  
●Hack28 「部族のユニフォーム」はミリ単位で微調整しよう  
●Hack29 「たたむ」「しまう」は悪い文化です  
●Hack30 安物のスーツでも「ちゃんとした人」に見せる

CHAPTER6 食事――ずぼら完全対応版自炊ハック
発達障害サバイバルの大原則【食事編】もう、レシピは覚えなくていい
●Hack31 最低限生きていく「食のベース」を常備せよ  
●Hack32 「味の素+塩」で9割の料理はおいしくなる  
●Hack33 「しょうゆの入れすぎ」が全てを台なしにする  
●Hack34 レシピは「メタ化」すると無限に応用できる
●Hack35 皮は一切むかなくていい  
●Hack36 料理の効率は「熱源の数」で決まる  
●Hack37 皿テトリスを終わりにしよう  

CHAPTER7 休息――生き延びるための休日ハック
【発達障害サバイバルの掟】働かなくても休むことができるが、休まなければ働くことはできない
●Hack38 「頑張る」は惰性、「休む」は意志の賜物  
●Hack39 完全な休日は「現実逃避」に徹する  
●Hack40 「初心者に優しい」娯楽は危険です  
●Hack41 「コンビニ散歩」を娯楽にする   

CHAPTER8 うつ――不安とともに生きる再起ハック
【発達障害サバイバルの掟】「どん底から再起する」技術を身につけよう
●Hack42 「一発逆転マインド」を捨てる 
●Hack43 「向いていない職種」を徹底的に避ける  
●Hack44 「貧乏人」とも「金持ち」とも広くつき合う  
●Hack45 うつの自分を「数字」でモニタリングする  
●Hack46 「死ねばいいや」の麻薬に頼らない  
●Special Hack 今、「うつの底」にいるあなたへ
おわりに 本当のあなたを「ハックするな」

1_発達障害_Aプラス

2_発達障害_Aプラス

3_発達障害_Aプラス

4_発達障害_Aプラス

5_発達障害_Aプラス


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