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鬱のこと、コーヒーのこと

 空から巨大な塊が落ちて来るみたいに鬱が始まる日がある。坂道を下るようにゆるやかに悪くなっていくこともあるけれど、僕の場合はある日目を覚ましたら世界の色合いがまるで違ったり、あるいは道を歩いていてふと足を止めた時に何かが空から落ちて来るみたいに鬱が始まったりする。もう20年以上も付き合っている病気なのに、何度やってきても新鮮に辛いのだから大したものだと思う。

 鬱になると起きることとして、コーヒーが淹れられなくなるということがある。これは、僕の中で「かなり悪い」の水準に分類される状態で、要するに「自分にとってのちょっとした楽しみ」すらできなくなった状態と言える。もちろん、僕はコーヒーが大好きだし結構こだわりがある。ミルからドリッパー、豆までお気に入りのものを揃えてある。それを淹れるというのは日常の中の確かな幸福というべきことで、これが「出来なく」なる状態というのは人間として最低限の幸福が手に入らない状態と言っていい。

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