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ウツボを釣った夏について

 僕の会社が潰れた。

 事業というのは始めるのこそ簡単だけれど、法人を構えて従業員を何人も使ってとなればその終わりはとてもめんどうくさい。でも、この「終わらせるのがめんどうくさい」ことはある種、人間を救う効果がある。というのも事業の片づけが終わるまでは死ねない、そんな心理が働くことになるから。


 さて、そんなわけで長い長い撤退戦が終わって、僕は完全なる無職になった。正確に言えば、大借金を抱えた無職だ。ほそぼそとした仕事を除けば何のあてもない日々がやってきた。もちろん、僕としてもとても働いて借金を返すことは出来ないにせよ、すぐに働こうと思っていた。でも、動けなかった。身体も心も限界だった。そんなわけで、数か月完全に眠って暮らした。

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