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【SXLP 5期レポート#2 膳所<ZEZE>】スポーツを通じたシビックプライドの見つけ方・育て方

現在、Sports X Initiative(以下、SXI)では、Sports X Leaders Program(以下、SXLP)6期の参加者を募集しています(4/21(金)23:59(JST) 締切)。
★募集要項はこちら!

過去のSXLP参加者たちがどのような問いを立て、システムデザイン思考を用いて議論やワークをし、最終的なアウトプットをしたのか、ぜひご覧ください。
※本原稿はSXLP5期終了時に執筆していただいた内容です。


世代を超えて地域ぐるみで自分のチームを応援し、生涯競技を楽しむ。

<出典:『GIANT KILLING』 作:綱本将也、画:ツジトモ>

ヨーロッパでは、スポーツクラブは下部リーグであっても地域に支えられ、そして地域の誇りとなっているという。日本ではそんなまちをつくることはできないのだろうか。ほとんどのまちにはプロスポーツクラブはなく、スタジアムやアリーナも存在しない。日本のほとんどを占めるそんな「ちいさなまち」がスポーツが誇りになっているまちを作ることはできないのだろうか。そんな問いからチームはスタートした。

◯スポーツが誇りとなっているまちとは?

そもそも、スポーツがあふれ、スポーツが誇りになっているまちとは何か。それはスポーツの力がウェルビーイングに大きく作用しているまちだと定義した。

■スポーツがひととひととのハブになっていること。
 ➡○○が好き!というだけで仲間が作れる状態

■スポーツのおかげで心身が健康に保てること
 ➡忙しくて時間がなくても、年をとっても、自分のペースで自分に合う強  
  度でスポーツを楽しめる環境があること

■スポーツがシビックプライドの源泉となっていること
 ➡スポーツが中心となったまちに誇りを持っていて、離れてもまた帰って
  来たくなる状態

そして、まちのひとが「自分はこの素晴らしいまちを構成する一員で、ここをより良い場所にするために関わっている」という当事者意識に基づく自負心を持っていること
 
そのようなまちを実現する持続可能なシステムを検討すべく、下記の理由からまずは実証の場となるまちを設定した。

①実証の場を設定することでプロトタイピングを重ね、ワークの精度と得られる経験値を上げたい。

②実行力を伴わないアイデアは(あまり)意味を持たないため、グループワーク終了後も継続できるスキームを作り価値あるアクションを実施したい。

実証の場所に選んだのは、滋賀県大津市にある膳所(ぜぜ)(平野学区)


■「まち」を学区規模とすることで、施策実施や効果検証がしやすくなる
■メンバーが住んでいるのでまちの様子が調査しやすい
■メンバーが勤務するBリーグ滋賀レイクスのリソースやネットワークが使いやすい

さらに、理想とするまちの実現プラン策定に向けて下記のアプローチを設定した。

①膳所ディープダイブ(実地調査)
②各種フレームワークを用いた構造化・可視化
③まちの課題抽出・解決方針検討
④「問い」のリフレーミング
⑤必要なソリューションの設計
⑥実行プランの策定 

各プロセスでのワークの内容を詳述する。

①膳所ディープダイブ(実地調査)

まずは膳所に飛び込み、下記のステップで膳所に住んでいるひとよりも膳所に詳しくなることを目指した。

STEP1:デスクトップサーチでZEZEマニアブックを作成し、各種データの把握や大津市の政策を調査
STEP2:まちづくり協議会や周辺団体の活動を調査し、まちづくり活動の概況を把握
STEP3:商店や住民に飛び込みヒアリング
STEP4:地域活動の担い手や平野住民の中のキーマンへのヒアリング

また、同時並行で抽象度を上げて海外や国内のまちづくりの成功事例をインプット・分析を実施。

②各種フレームワークを用いた構造化・可視化

ステークホルダー分析、Pain Gain分析、因果ループ図等を用いて①膳所ディープダイブにて得られたインプットを整理することで、膳所におけるまちづくりの取り組みの全体像を把握し、手の付け所を見える化に取り組む。

③まちの課題抽出・解決方針検討

膳所の課題として見えてきたものは大きく3つ。

A.まちづくりの担い手の先細り
B.ひととひととのつながり不足
C.スポーツ実施率の低さ

中でも、まちのひとたちの興味関心を因果ループ図で整理すると、BおよびCは対応する取り組みがなされてはいるものの、Aについては要素が不足していてループが完成しないことが判明し、そこがレバレッジポイントではないかというインサイトを得た。

④「問い」のリフレーミング

まちづくりの担い手を増やすために、まずまちづくりに取り組む価値とは何かをValue Graphを用いて整理し、下記のインサイトを得た。

1.  楽しい・色んな人とつながれる・自己成長・自分の居場所を確保することなのでは?
  ↓
2.  スポーツがまちづくりの価値を代替できるのでは?
  ↓
3.  「スポーツをする人・関わる人」と「まちづくりに取り組む人」は親和性が高いのでは?
  ↓
4.  スポーツ実施者はまちづくりの担い手となりうるのでは?

※本ワークにおけるまちづくりとは、「住民が自分が住んでいる場所でやってみたいことにトライできること、結果としてまちに楽しみや居場所が増えて住みやすくなること」と定義
 
つまり、「まちづくりの担い手を増やすには?」という問いを「スポーツが好きなひとに、自分が住んでいるまちで住民が参加したいと思えるスポーツイベントを楽しみながら企画・実施してもらうには?」とリフレーミングした。まちのイベント企画が増えてその参加者が増えると、さらに関心を持つひとが増え、企画者が増えるという正のループとなるのではと考えた。

⑤必要なソリューションの設計

参加者から自ら企画する立場になるという主体性の発揮には段階があり、「やりたいことを地域でやってみる」というフェーズに移行させる機能を実装する必要がある。
 
その機能の要求定義として下記を実施。

a)ライフサイクル分析
b)必要な機能の抜き出しおよびスポーツでの実装方法を検討
c)機能フロー図で抽象度や前後関係を整理
d)物理検討において具体的な施策を立案

その結果、必要な機能の答えは、「イベントを実施して参加者と関係を作っていく」という、当たり前のことを工夫しながらも愚直にやっていくことであるとわかった。まちづくりという複合的で根深い課題に対しては一足飛びに解決するようなスペシャルなソリューションは存在しないということを改めて認識する。

⑥実行プランの策定

上記で抽出した必要な機能を実装する地域に根差した複数のスポーツイベントを検討。その結果、「膳所版シャルソン」をプロトタイピングとして実施することに決定。
シャルソンとは、パーティするように走ることを通じてまちを再発見し、人と人とが繋がるイベントで、企画者は自身も参加するため楽しみながら企画することができ、全員が元参加者からスタートという各地域をつなぐ企画者のコミュニティがある。将来的にはイベントではなくシャルソンがスポーツ習慣の受け皿となることが狙いだが、まずは膳所版にカスタマイズして実行し、そこから得られたフィードバックからプランを再検討することとする。
 
プランの実行については道半ばだが、「スポーツ×まちづくり」への取り組みに対して下記の所感が得られた。

■まちづくりもスポーツもビッグワードであるがゆえにどこを刺しに行くのか、まちへの想いが大事

■まちづくりの成功事例は想いの強いひとが面白いことにチャレンジしてそれが実を結んだというケースが多いが、システム思考でまちの課題を構造化・細分化してスポーツの力でアタックしていくチャレンジをしていきたい

■「ソリューションの型化」は難しいが「まちへのアプローチの型化」はできるかもしれない。そしてそれがスポーツを通じたちいさなまちのシビックプライドの見つけ方・育て方の方法論にできる可能性がある

〇6期受講検討中の方へ

SXLP5期を通じてとても多くのものが得られました。

①思考力
 システムシンキングという新しい思考OSのインストール
②実行力
 現場に飛び込む&アクションを前提とした施策立案
③出会い
 アルムナイというコミュニティが大きな財産

特にPhase4のグループワークは抜け道が見つからない思考の迷路に迷い込み、苦しみを味わいましたが、苦労せずに得られるような学びは小さいもの。
覚悟を持って飛び込み、苦労を買ってでもできる方に受講していただきたいです。
スポーツの力を信じる仲間が増えることを楽しみにしています!



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