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Sports X Leaders Program修了生によるキャリア論女性”Sports Xer”のキャリア展望

多種多様なバックグラウンドを持つ人材が集まるSports X Leaders Programのメンバーのキャリア論に迫る企画第2弾!

今回はSports X Leaders Program(以下SXLP)1期生の箱田裕子に語ってもらいました。1期生唯一の女性参加となった彼女にキャリアについての考え方や、多様なセクターを渡り歩き、時にはマイノリティーとして奮闘する中でSports X Initiativeを通してどの様な事を達成したいか、その思いを聞きました。

*Sports X Leaders Programは、様々な視点を持つ人材を集めて課題に対して多角的な視点やアプローチを持つ事を大事にしています。本プログラムの2期では女性メンバーが3人となりました。3期は女性メンバー6人になり年々女性メンバーの応募・参加も増えています。今後もジェンダーに限らず、多様性を確保するために様々なバックグランドを持つ仲間を積極的に募集していくつもりでいます。

箱田裕子の経歴

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●保健体育教諭、学級担任、部活動顧問、中学校体育連盟陸上競技専門部会
 →学校教員の重責さ、ブラックさに自分自身を見失いかける。
●青年海外協力隊
→根本的に自分自身がアップデートされなければ、職業人としてもうやっていけないと思い、休職参加。初めての海外で2年間行きっぱなし。セントビンセントおよびグレートナディーン諸島国で体育科教員として活動。現地の体育科教育の開発促進に助力。国際社会における涵養を身に着ける。この国で過ごした2年間が、体育科教育やスポーツに係るwhy・whatを徹底的に考える原体験となり、結果的に教員を辞める決定打に。
●帰国後、国際開発分野に転職を決意。→大学院留学。
●青年海外協力協会へ就職
→日本国政府主導のオリパラ招致公約のひとつ「スポーツ・フォー・トゥモロー」を履行するため、「スポーツの価値を世界の国々に届ける」企画のプロジェクトマネージャーでアフリカのマラウイへ。オリパラ機運に乗り、この企画が世に出る。のちにレポートが大修館発行の高校英語の教科書に採用される。(https://comspo.net/community/challenge-in-malawi001
●JICAに転職。組織初のスポーツ分野担当として従事
→国際協力の現場で日本が過去50年以上に渡り体育科教育やスポーツを通じて行ってきた事例、一つひとつのピースを裏付けし、構造化。それらを未来志向で組織行動指針にまとめる。行政会議にも多く出席。
https://www.jica.go.jp/activities/issues/sports/index.html
https://www.youtube.com/watch?v=eNmAjPx_QRo

●現在は個人事業主として独立しクライアントさんのニーズに応じ、海外関係先との折衝、組織運営支援、システム開発などを中心に行っている。プライベートではSXLP受講中に結婚、出産を経験し、限られた時間の中で既存の枠にとらわれない働き方を目指している。

キャリアを進める中で感じた課題感

中学の保健体育の教員になり現場に赴任した時にまず感じたことは、女性は常にマイノリティーであること。保健体育の教員採用における男女比は当時9:1(男性:女性)程度だった。そんな中、自分の目指したいロールモデルも周りには居なかった。

日本より社会的課題があると思いがちな開発途上国のなかには、ジェンダーや宗教などの背景を問わず、相手を尊重する事がコミュニケーションの大前提という国もある。
外国人でありながら、その中で自分の仕事や行動が正当に評価された経験から、実は日本には根深いジェンダーギャップがあり、無意識のうちにジェンダーバイアスがある事に気づかされた。

イギリス(ロンドン)に飛び出して感じたことは、ジェンダー課題は一つの問題でしか無いと言うこと。移民も多いイギリスは、多様な文化、宗教の違いを持つ人たちがどの様に一つの国、社会、街、またはコミュニティーを作っていくべきかの意識づけが長い年月を通して模索されている。スポーツはそれらをうまくまとめるツールのひとつとして活用され、生活の中で愛され続けている。

様々なスポーツの現場や学校教育の課題を語る前に、この辺りの社会的基盤の違いも視点として持ち合わせた上で、スポーツの活用の仕方(How)を突き詰めていく必要があると感じた。

スポーツの価値は誰もが感じることができ、間違いなく存在するもの。それを見える化だったり言語化することがこれからの日本のスポーツの課題であり、社会課題にアプローチすることでスポーツの価値を少しでも身近なものとして感じでもらう事をライフワークにしている。

今後の展望 

自分のキャリアはスポーツの2次的活用に集約。選択肢を多く持つ事。

スポーツの2次的活用とは、スポーツ本体に接して、例えばパフォーマンスを向上させるということではなく、スポーツを使って(Howとして)教育を行ったり、コミュニティーを作ったり、社会的課題にアプローチする事を意味する。

最近の事例だと、日本ブラインドサッカー協会で携わったプロジェクト「UB-Finder」である。人が障がいや障がい者に対して無意識に持つバイアス(偏見)を数値化・可視化することができる。

協会のビジョンである「ブラインドサッカーを通じて視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること」を、さらに推進するためにできたプロジェクトである。

これは、まさにスポーツを活用して社会的課題にアプローチをしていくものだ。

もう一つ、私が実現したい事は選択肢(オプション)を持って働ける働き方を確立したい。
女性、男性に限らず選択肢が無いためにスポーツ界で働けない、何かを犠牲にしないと働けない、旧態依然とした構造に課題を感じている。

人生におけるイベント、結婚出産育児や介護など、様々な事がある中でも働きながら自分の選択肢を減らさないためにも現在の独立する選択肢を選んだ。

最近では、Mom athlete(おかあさんアスリート)の活躍が世界で取り上げられるようになった。昔は、出産か現役続行を天秤にかけていて選択肢が無かった女性アスリート達を取り巻く環境が変わり始めている。

今ではセリーナ・ウィリアムズ選手(テニス)やアリソン・フェリエックス選手(陸上)などMom athletesの活躍を目にするようになってきた。日本では寺田明日香選手(陸上)もMom Athleteとして活躍されている。

アリソン・フェリエックス選手は、女性アスリートが安心して出産やマタニティー休暇に入れるように、スポンサーにマタニティー休暇中もスポンサー料の減額をさせない事を主張した。
ナイキは選手と契約上のマタニティーポリシーを改め、女性アスリートを守る事を発表した。同時に、他のスポーツアパレルブランドも女性アスリートのマタニティーポリシーを改正する事で女性アスリートのスポンサー収入や権利が守られる事になった。

家族やパートナーの理解やスポンサーやスポーツ産業全体が課題を共有し、理解し合うことで選択肢が増えてきている良い事例である。

個人的には、これからも選択肢を奪われることなく、様々なオプション持ったキャリアや働き方を実現してきたいと思っている。

これからSXLPを受講を考えている方へのコメント

スポーツを取り巻く環境は今大きく変化しています。
課題がある分、伸び代が大きい分野です。
プログラムを通してスポーツの目に見えない価値を見える化することや、構造化することで自分次第で変えていけます。
是非、一緒にスポーツの価値を見える化することで社会の中で役立つスポーツを作っていきましょう。


[参考文献]
Allyson Felix: My Own Nike Pregnancy Story, Lindsay Crouse, Taige Jensen and Max Cantor, New York Times

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