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スポーツクラブがアパレルブランドでコミュニケーションを加速

 「スポーツクラブのアパレルブランド展開」と聞くとユニフォームやグッズ、アパレルブランドとのコラボなどの商品イメージが思い浮かびます。一般的には、サプライヤーやスポンサーとのコラボ商品が数多く出回っています。最近ではアパレルブランドの「niko and ...」とJリーグの複数のクラブとのコラボレーションTシャツが販売されています。

 しかし、長らく続いているストリートトレンドの波に乗るように、近年スポーツチームでは単なるファッションとしてのユニフォーム、グッズの延長線ではないチームの垣根を超えた独自のアパレルブランド設立が目立ってきました。スポーツチームは持ち前のブランド力を活かしたライフスタイルブランドで、新たな収益源の開発、ファンのレンジを広げる潜在能力を備えています。今回はJリーグのクラブを中心にクラブチームが立ち上げたアパレルブランドについてお話します。

Jリーグのクラブがアパレルブランドを立ち上げ

 8月11日、Jリーグの人気クラブである鹿島アントラーズが新アパレルブランド「F.D.」の立ち上げを発表しました。クラブのスローガンである「Football Dream」から着想を得て、日常とサッカーの調和を元にこの新ブランドが誕生しました。サンセリフ体のわかりやすいブランドロゴ「F.D.」をあしらった商品を展開しており、オーバーサイズTシャツはリラックス感をうまく取り入れ今らしいシルエットに落とし込んでいる魅力ある商品です。


 また、一足早く新ブランドのローンチを行ったのが現在J2リーグに所属するツエーゲン金沢。2019年11月にアパレルブランド「WAYZ」を立ち上げ、スポーツの枠にとらわれない毎日を支えるブランドとしてTシャツやコート等の衣類に加えサングラス、ポーチ等の小物も展開しています。


 カターレ富山はコロナ禍を背景にアパレルブランド「K.B. /con te.」を立ち上げました。入場制限が続き、日常からクラブが少し遠のいた今「K.B. /con te.」を通し様々な思いを届けたいという思いをコンセプトに立ち上がったブランドです。リードタイムの問題はあるものの、完全受注生産を採用しており発注ロット数を考えても、在庫を最小限に留めることができ、キャッシュを滞らせず売上につなげることで、普通のアパレルブランドとは違うJリーグチームならではの戦略をとっています。


スポーツチームとアパレルブランド立ち上げの親和性

 スポーツチームのアパレルブランド立ち上げでクラブは新たな収益源の開発、 非スポーツファンの獲得、既存のエンゲージメントの高いファンのさらなるロイヤリティ向上を見込め、ファンとチームの新しいコミュニケーションの取り組みとしても活用できる可能性があります。

 ここ数年、ファッションの傾向として、とにかく押されていたスポーツミックスファッションやストリートトレンド。若干ドレッシーなトレンドに移行してはいるものの、この流れはスポーツをベースとするクラブのアパレルブランド発展を大いに後押ししているようにも見えます。

 またインターネットに起因する服飾技術と発注方法の民主化で、より簡単で安価にアパレルブランドを立ち上げることができるようになりました。これによりユニフォームやジャージなどのいわゆる本業であるスポーツウェアの枠を飛び越えた商品展開が可能になったのです。

 販売方法においても時代に適応しています。従来購入場所や顧客とのロイヤリティ構築の役割を担っていた店舗ではなく、店舗での販売を行わず自社運営のECサイト上でのみ販売することでファンのクラブチームへのロイヤリティを活かしながら販売しています。

これから

 競技を問わずクラブチームは服飾以外を手掛ける土台がすでに出来上がっています。既にSNSプロモーション活動、データ活用、チケットやグッズの販売促進などアウトプットする知見が備わっており、ファンの中にはブランドイメージ、世界観を共有し共感している人もいるのではないでしょうか。

 アパレルブランド立ち上げが容易になったとはいえ、継続することはやはり難しいものです。そこには当たり前のことながら購入してくれる顧客がいて、利益を得る事が必須です。単調な商品構成ではイベントやお土産売り場に溢れる安易なグッズ商品、記念品と差別化はできません。しっかりとしたブランドビジョンの元、継続的にトレンドを取り込み商品開発を行い、クラブチームならではの顧客との関係を構築できれば、クラブチームのアパレルブランドとして成功を収められるかもしれません。 


(文:SXLP2期/浦口元気)

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