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映画、ドラマよりも面白い!?各社が注力するスポーツドキュメンタリー

 サブスクリプション型ストリーミングサービスの普及により、自分好みのコンテンツに手が届きやすくなりました。公開間もない映画やドラマ、アニメ、オリジナルコンテンツなど膨大な映像コンテンツに加え、近年動画配信サービス各社はスポーツドキュメンタリーの制作、配信への力の入れようがうかがえます。今春世界中で話題になり、日本ではNetflixで配信中の「マイケル・ジョーダン: ラストダンス」やAmezon Prime Videoで今秋配信予定のトッテナム・ホットスパーに密着した「オール・オア・ナッシング」シリーズ等各社が展開するドキュメンタリーコンテンツと、参入する目的についてお話します。

動画配信サービスならではの切り口


 既存のTVでは配信枠や広告スポンサーを背景にした事情により、なかなかシリーズ化したスポーツドキュメンタリーは生まれにくい土壌でした。ドキュメンタリーというとニュース内の特集ものや、単発30分〜120分程度で放送するいわゆる特集番組が主流でした。しかし、インターネットの普及に伴い定額制動画配信サービスの市場が広がったことにより、配信側は持ち前の資金力とプラットフォームを武器に従来型のTV放送様式にとらわれない、1エピソードにつき1時間ほどの番組をシリーズとして制作、配信することができるようになり、また視聴者はオンデマンドで視聴することができるようになりました。

 Amazon Prime Videoの「オール・オア・ナッシング」ではアメリカンフットボールやサッカー、ラグビーのトップチームにシーズンを通し密着し、ロッカールームやチームミーティング、選手やコーチの私生活、ドラフトや移籍時の様子、経営陣の話など普段目にすることができないチームの舞台裏を詳細に描いています。また、トップチームだけではなく今季17年ぶりにプレミアリーグに昇格したリーズ・ユナイテッドも英2部チャンピオンシップ所属時の18/19シーズンに密着した「ホームに連れて行って:リーズ・ユナイテッド 」等が配信されています。


 ESPNとNetflix社ではNBAのレジェンド、マイケル・ジョーダン、2度目の3連覇を達成し今なお語り継がれるシカゴ・ブルズの黄金期を築いた選手や関係者のインタビューと当時の映像を交えながら制作された「マイケル・ジョーダン: ラストダンス」がコロナ禍でNBAが中断していた今春に、本来の放送スケジュールを前倒しで放送され話題になりました。(アメリカではNetflixではなく、ESPNでの配信)また個人やチームではなくF1をシーズン通して密着した「Formula 1: 栄光のグランプリ」は既にシーズン2が配信されるなどスポーツドキュメンタリーの盛況ぶりがうかがえます。


なぜスポーツなのか


 動画配信サービス事業者にとってはスポーツを扱うことでコンテンツの幅を広げる事ができます。特にグローバルに事業を展開している会社においてはスポーツコンテンツとの親和性が高く、世界各国にファンを持つスーパースターやチーム、リーグなどを題材にすることで翻訳以外のローカライズが必要なく、既存のファンに素早くリーチさせ配信、獲得することができます。また配信権利においてもコンテンツを自社で制作している場合は、権利費用や権利期間に左右されることなく自ら編成し配信していくことが可能です。

 またアメリカとイギリスでは国内屈指の人気スポーツリーグであるNFLとプレミアリーグをライブ放送するべくAmazon Prime Video会員向けに年間数試合の試合中継を行っています。先んじて配信していたNFL、プレミアリーグの「オール・オア・ナッシング」の視聴データはファンベースやライブ中継の潜在的な視聴者の分析に大いに寄与したでしょう。
 

 最近はプロチームのSNS戦略やメデイアプロモーションが強化され、チームの公式アカウントでトレーニング風景や会見の様子など試合以外の部分を覗くことが容易にはなっていますが、あくまで即効性のある切り取ったコンテンツです。ドキュメンタリーで注目されることでチームにとっては、試合やハイライト、ニュース以外での露出が増えるうえ、ドキュメンタリーならではの映画にも引けを取らない映像制作力と編集力で各国非スポーツファンの獲得にも大いに貢献しているでしょう。

 近い将来グローバルに配信できるだけの独自の価値をもったチーム、リーグが国内で誕生した時、世界中で日本独自のドキュメンタリーを目にする時代がやって来るかもしれません。


(文:SXLP2期/浦口元気)

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