武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースクリエイティブリーダーシップ特論 第12回 佐伯基憲 氏

20190925 佐伯基憲氏

1947年1月、富山県立山町生まれ。1970年、早稲田大学第一法学部を卒業し三井物産に入社。二度にわたるロンドン勤務を含め、運輸・物流部門と1999年10月新設のIT推進部に勤務。2001年同社取締役並びに日本ユニシス取締役に就任。その後、三井物産上席執行役員を経て、2003年4月に同社顧問、同6月に日本ユニシス取締役常務執行役員に就任。同社関西支社長を経て、2005年4月より新設のCSR部門、10月より代表取締役常務執行役員として人事・人材育成・法務部門を担当。2009年6月同社顧問就任、2011年顧問を退任。現在、三井物産及び日本ユニシス社友。2001年より、早稲田大学理工学部(現・創造理工学部)経営システム工学科にて非常勤講師を務め、学部4年生の特別演習を担当。企業倫理と技術者倫理、社会人としての知見に基づく経営戦略論「私論・人財経営論(人を活かす経営)」などを講じ、平成25年度で13年目を迎えた。また現在、会社顧問や異業種交流の勉強会主宰者として、若手起業家や企業の人材育成を応援。同時に、区立小学校の学校関係者評価委員などを務め、地元貢献に尽力している。(一般社団法人彩志義塾HPhttps://saishi.or.jp/about/profile.htmlより引用)


1 知識の重要性

佐伯氏は、自身の豊富な経験を話されながら、まず「知識」を得ることの重要性を説かれた。リーダーシップを発揮するにも、イノベーションを起こすにも、「知識」がまずは必要だという。社会は常に変化していく、変化は常態であるため、変化に対応した「知識」を習得していかなければならない。しかし、「知識」があればいいという訳ではもちろんない。

それは、「知識」を「知恵」に変えていかなければならないということだ。「知識」をたくさん身につけも「知恵」に転換されない限りは意味はなく、経験を積み重ねることで「知恵」になったものを自身のものとする。その過程が、人間を磨くことになり、自分の人生観が形成されていく。そうして形成した人生観が、リーダーシップやイノベーションの元となる。


2 SDS

「知識」を「知恵」にする為に、佐伯氏は「SDS」が重要だという。「SDS」とは、「修羅場・土壇場・正念場」のことで、佐伯氏自身も多くのSDSを経験し、その度に「知識」を「知恵」にしていたという。今回の講演の前に課題図書として設定された『幸之助論』の主人公、パナソニックの創業者である松下幸之助も小学校時代に先生の話をノートに書くことができず、学校を辞めて自ら学び始めたという。話を聞きながら、「自分のSDSは何だったか。」と振り返ってみると、ただただやり過ごすことだけにいっぱいいっぱいになり、とても「知恵」に変えてやろうという視点すらもっていなかったことに気がついた。「時間は自分で作るもの」という信念で、佐伯氏は若いころに英語の辞典をもって通勤中に勉強していたという。時間や機会、状況をいかに自分のものにするかという、ハングリー精神が大切だということを学ばせていただいた。


3 学び続ける姿勢

人は、理解をした後、納得をして、初めてやる気に繋がるという。「実行無くして成果なし」という言葉をおっしゃっていたが、会社や組織の制度が立派でも行うのは人であり、「当たり前を当たり前に行うことが難しい」が故に、理念や指針に沿ったことが本当の意味で行われていないことが多いという。

会社は社会に有益なものを出し続けないといけない(プロダクトイノベーションをし続けなくてはいけない)が、実行するのは社員である。その為に、社員のやる気を最大限引き出さなければならない。組織のリーダーは、学ぶ環境は会社が整えるが、学ぶ義務は社員にあるというスタンスをもち、人事を行う際も社員が安心して行えるよう、社員の希望や個性を重視し、適材適所に配置することをしっかり行うことが大切だと話された。


まとめ

教師をしていると「学び続ける教師」が大切だとよく言われる。私自身、そのことは共感できるし、自分もそうでありたいと思っている。この大学院で学んでいることもそうだろう。だが、やはり日々の忙しさやそれこそSDSに遭遇した時は、自分の思いや理念を曲げそうになってしまうこともある。「当たり前を当たり前に行う」ことが、実は本当に難しい。今回の講義は、あらためて自分自身と見つめるきっかけを与えていただいた。


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