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「2020年9月8日のこと:無理に学ぶことをやめる」 (スウィング・木ノ戸)

誰かが言った。知らないことは罪だと。そうかもしれない。
でも知ることで先入観や偏見を強くしてしまい、実はその時その時、常に起こり続けている自分自身の初体験を曇らせたり、不自然な制限を心身にかけたくもない。

たとえばスウィングはこれまで殆どの場合、「私たちが何者であるか?」を語らず、ただアクションを起こし続けてきた。
僕たちを見る人、接する人に便利な言葉やラベルやカテゴライズで余計なバイアスをかけず、えらそうだけれどそれぞれに感じ、考えてもらうために。

このプロジェクトを計画して以降ずっと迷い続けてきたのだが、9月8日(火)、6回目となるゴミコロリに臨む直前、東九条について積極的に“学ばない”ことを、ようやく決めた。
学び、知ることを放棄しようというのではない。
無理矢理に詰め込む知識ではなく、東九条に生身の素人として関わる中で出会う人や繋がる何かから、無理なく自然と得られるものを大切にしないと自分の中に骨肉化……とまでは言わなくとも、腑に落とし切れない、そう考えたからだ。

この決断を大きく後押ししてくれたのは、プロジェクト自体の期間延長(ほぼ)決定だろう。
ひとつの土地、そこに生きる人たちや文化、歴史に向き合うのに1年間という時間はあまりに短すぎる。ものすごいスピードで何かが進んでいるように感じる一方で、コロナ禍の影響から当初の計画通りに事が運んでいないのも事実だ。
1年ではなく2年。思い切ってこの提案をしてみたとき、もちろん2年でも短いに違いないが、チーム一同に安堵感のようなものが漂ったことは確かだと思う。おそらく皆同じように「短すぎる」と感じていたんじゃないか。

というわけで2021年3月に催す展覧会はいわば前半、第1弾、Vol.1、あるいは途中経過となり、その後も東九条に関わり続け、2022年3月にその続きを展示する。
このようにプラン変更をいたしましたので改めてどうぞよろしくお願いします!

9月8日(火)、京都ダルクさん発案の清掃活動(毎月第2火曜日実施)に初回6月から連続で4度目の参加。

これまではただ集まってゴミを拾ったり、草刈りをしたり、刈った草をゴミ袋に詰め込んだりしていたのだが、今回はじめて集合場所である「京都市 地域・多文化交流ネットワークサロン」(以下、ネットワークサロン)前で自己紹介タイムが持たれた。
(ひょっとすると僕たちが毎回微妙に遅刻をしていたからなのかもしれないが……)この遅れてやって来た自己紹介タイムはかなり素敵だった。

物心がついて以降「この世から初対面がなくなりますように」と叶わぬ願をかけ続けている。初対面ってやっぱり緊張する。緊張するのに自己紹介とかしなければいけないから、尚のこと緊張する。
でも何度か顔を合わせ、時間を共にしたその後にはじめて自己紹介をし合えば、そんな居心地の悪い緊張を感じる必要もない。なんて素晴らしい! 緊張しいの増田ブルーも下を向かずに青々と爽やかだ。これはもっと広く社会に普及したほうがいいんじゃないか。世の中、初対面にこだわりすぎやねん!

前回、ヤバい酷暑の中でゴミブルーを決行したことがモノを言ったようで、9月初頭のゴミブルーたちは「ぜんぜんイケる」「すずしい」と、口々に楽勝発言を連発していた。
やはり時には無理して頑張って高い壁をよじ登ることも大切なのだ。頑張るとか頑張らないとか、難しいったらありゃしないよね。ぷんぷん!

清掃場所はいつもと同じ、ネットワークサロンすぐ近く、「希望の家カトリック保育園」に隣接する「北岩本児童公園」。10月中頃に保育園の運動会がこの公園であるらしく、今回の僕たちのミッションはもっぱらグラウンドの草引きだった。
草引きにはある種の快感があり、ハマって夢中になれば手が止まらない。おまけに子どもたちともしょっちゅう顔を合わせて「ありがとう、ありがとう」と言われるもんだから、俄然おっちゃんたち張り切っちゃった。

しかしながらゴミブルーに接近することさえ決死の覚悟の幼子たちと違い、年長さんくらいになると、次第にゴミブルーへの違和感を覚えはじめることを僕たちは経験的に知っている。

ゴミブルーの中には、絶対におっさんが入っている。

やはりバレたか。でもそれでいいのだ。おっさんが中身になったダサいヒーローが、君たちにとって当たり前の景色になることを我々は願っているのだから。

たくさん草を抜いてグラウンドをさっぱりしたつもりが、終わって眺めてみるとそうでもなかった。園長先生に聞けば、子どもたちがつまずいたりしないように、運動会までには綺麗にしなければいけないらしい。よし、また来よう。次来るときにはもっともっと涼しくなっているだろうし。

終了後、自己紹介と同じく、やはりはじめてネットワークサロン内で水分補給をしたり、雑談を交わしたりした。僕は以前から児童館や食堂も存在するこの場の組織運営の仕組みについて興味があったので、見事な仕切りでこの清掃活動を引っ張ってくださっているスタッフの宇山さんにいろいろと話を聞いた。
「京都市地域・多文化交流ネットワークサロン」が場所の名前ではなく、「地域福祉センター希望の家」が京都市から委託を受けて実施する事業名であること。サロンの登録団体になるのに特に大きな制限はなく、THEATRE E9 KYOTOを運営する「一般社団法人アーツシード京都」も登録団体であること。そうか、ネットワークサロンはスウィングにおける「オレたちひょうげん族」みたいなものだったのか。オレたちひょうげん族も、ややこしいけど実は事業名だものね。
えっと、じゃあスウィングも登録団体になれるんでしょうか? うれしい! お誘いしようと思ってたんです。ホントですか! よろしくお願いします。あの、来月の第2火曜日を待たず、もっかい草引きに来たいと思ってるんですが。え! 私たちも参加したいし保育園との調整も必要なのでまた教えてください。

すると京都ダルクさんもすぐさま「ぜひ一緒にやりたい」と言ってくれたもんだから輪をかけて驚いた。うれしい。超新参者のスウィングの思いつきのような提案にめちゃくちゃ乗ってきてくれている……。

このほか宇山さんにしつこく色々と話を聞かせてもらった後、いつものように「にこにこや」でお昼ご飯を食べていると、「よければ読んでください」と宇山さんが、毎月発行(すごい!)されている「ネットワークサロン通信」のバックナンバーをわざわざ持ってきてくださった(この通信には既にゴミブルーも登場させてもらっている)。

ああ、僕は今知識ではなく、心を渡されたのだ。
絶対に。絶対に読みます。

2020年9月24日
木ノ戸昌幸

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