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雑感:『ルール?本 -創造的に生きるためのデザイン』(フィルムアート社/2024)

先日刊行された『ルール?本』を読み終えた。

2021年、スウィングはこの本の元になった『ルール?展』に作家(という意識はないがともかく)として参加をした。

当時、僕の頭の中では<自由を拡大するためのルール化>というテーマが渦巻き、スウィングの中でさまざまな試行錯誤を繰り返していたのだが、『ルール?展』の企画趣旨に驚くほど近いものを感じ、断る理由なんてないくらいに惹かれてしまったのだ。

更には京都人力交通案内というよく分からない、「それが展示になるのか?」という活動に目をつけてくれたことも嬉しかった。

※ スウィングでの試行錯誤については『ルール?本』に寄稿。2年以上前に書いたものだから、今の考えや状況とは多少の開きが生じてはいるが。

そうして僕たちは『ルール?展』に参加をし、参加したからには実際にその空間を体感したいと、コロナ禍とスケジュールの網の目を縫うように会場へと足を運び、簡単に言うとそこでとても嫌な思いをしたのだった。

「仏つくって魂入れず」みたいなことを書いたように思うけど、その苦い経験を記した下記ブログも『ルール?本』の中で紹介されている。

ともかく僕は企画に熱烈共感、現場(運営)に痛烈失望した立場からこの本を読んだわけだが、その感想は「やっぱり面白かったんじゃないか!」。

読書について「時間がない」とか「読むのが遅い」とかいう言い訳を言いがちだが結局面白いものは読む。読みたいから時間をつくり睡眠時間を削ってでも夢中になって読む。『ルール?本』の前では勅使川原真衣さんの『能力の生きづらさをほぐす』(どく社/2022)がそんな本だった。絵本以外では。

難解なテーマではあるし、小難しいカタカナ語は少々鼻についた。正直読みにくいなと感じるところは飛ばした。

けれど文章表現は基本的にやさしく、特別なことを言いたいんじゃない、自分のこととして考えてほしいという意志が真っすぐに伝わってきた。それに誰の身近にもある<ルール>というものについて、あらゆる角度からここまで掘り下げ、上から下から斜めから考え抜いた本って他に例がないんじゃないかと思う。

『ルール?展』についても数万人が来場して大成功! なんて語り口ではなく、むしろ商業的な成功はほとんど無視して、真摯に冷静に多角的に振り返られており、僕の視点から言えば、「企画に熱烈共感、現場(運営)に痛烈失望」した経緯や理由がはじめて分かったような気がした。

やっぱり面白かったのだ。

でも企画者(著者)の思いどおりにいかなかった点も、そりゃあたくさんあった。それらの過程がとても正直に赤裸々に綴られ、とりわけ最終盤での「失敗が更新のチャンスになる」という考察には痺れた。その通りだと思う。

Swing鼻クソRADIOでも似たようなことを話したように思うけど、『ルール?展』はうまくいかなかったこと(=失敗)を含めて成功だったんじゃないかと今では思う。

「成功」という表現がおかしければ、展覧会という非日常空間でありながら、とことん現実的な空間だったんじゃないかと。

だって僕たちの目の前の現実はいつもうまくゆかない。
うまくゆってると思える時期はあっても、やがては必ずほころびが生まれ、そのたびに手で縫ったりミシンをかけたり布をあてたり布自体を替えたり、ひどい場合には諦めて捨ててしまうことだってある。

著者がそうした現実に地に足をつけて踏ん張った上で、<ルール>という手強い入口から、なんとかかんとかある種の希望を現実世界に描き出そうとする試み。それが『ルール?本』であり、『ルール?展』だったのかもしれない。

まずは一緒に現場に行って、同じように苦い思いをした沼田君に「読んで読んで」と勧めたい(QちゃんやXLは興味ないと思うので)。

自由な場所をつくることを簡単に考えていない人、コチコチに固まってしまった場所に悩んでる人にもお勧めしたい。

答えなんて書いてないから、そこが信頼できる。

どうでもいいけど、家にある育児本と『ルール?本』の素晴らしいデザインが似ていることに気がついて驚いた。

どうでもいいけど、こちらの育児本もお勧め。ルールに縛られ過ぎない余白ある育児が学べる。

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