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なぜ「赤だしの味噌汁」が美味しくできないのか?―― 名古屋めし料理家のレシピ #5

味噌汁。それはおうちごはんの基本中の基本。ほかほかご飯とおいしい味噌汁、焼き魚にお漬け物が二切れ三切れついてこれば、ほっと温まる立派なごはんになります。

全国各地で様々な味噌汁が飲まれていますが、名古屋ではもちろん豆味噌を使った「赤だし」が主流。

しかしこの赤だし、どうも他県他地方の人たちには不人気のようなのです。

曰くしょっぱい、曰くいがらっぽい、曰く味が濃すぎる……。

こんなに美味しい赤だしなのに、不思議で仕方がありませんでした。

しかし、先日調べ物をしている中で偶々見かけたレシピに、昔から抱いていたこの疑問に対する答えがありました。

このレシピどおりにやったら、100%マズい赤だししか出来ないわ……

見つけたのはごくごくありふれた「味噌汁」のレシピ。しかし、そこに書かれている材料の分量が赤だしLOVEな私にとっては「え、こんなの絶対うそやん……」となるものだったのです。

いや、そのレシピは決して間違ったものではありません。たぶん麦味噌や米味噌を使ってこのレシピ通りに作ったら美味しい味噌汁ができるのでしょう。

しかし、赤だし味噌≒豆味噌では美味しく仕上がりませんでした。何度やってもダメ。しょっぱくて、濃くて、いがらっぽいようないやな味。

つまり、味噌汁のレシピで赤だしは作れない。「赤だし」と「味噌汁」は全く違う料理として考えなきゃダメだったんです。

名古屋めし料理家としてこれはゆゆしき事態。ぜひ本当においしい赤だしを知ってもらわねば……!

ということで、今回は名古屋めし料理家が本気で研究した、「本当においしい『赤だし』」の作り方をご紹介します。

■本当においしい『赤だし』

≪材料(2人前)≫
・お好みの具材(ネギ、油揚げ、ワカメ、豆腐、貝類などなど)
・水 400ml程度
・だしの素 小さじ1.5~2程度
・みりん 小さじ1程度
・豆味噌 大さじ1程度 
赤だし味噌を使う場合には出汁の素を小さじ1.5程度、赤だし味噌を大さじ1+小さじ1程度にしてください。
≪作り方≫
1.具材を適当に刻む
2.沸騰させたお湯にだしの素を入れ、具材とみりんを加えて中火で一煮立ちさせる
3.キャベツや玉ねぎがほどよく煮えたら、豆味噌を溶き入れる。
4.蓋をして食べるまでとろ火にかけて温める。

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正味のところ、調理工程自体は一般的な味噌汁の作り方と変わりがありません。

大きく違うのは「出汁の量」と「味噌の量」の2つ。一般的な味噌汁のレシピでは「だしの素小さじ1、味噌大さじ2+小さじ1」ぐらいが目安ですが、それに比べると「出汁はうんと濃い目」「味噌はうんと控えめ」になっています。

赤だしを作るならこのバランスが重要。なぜなら、赤だしにおいては「主役は出汁、味噌は脇役」だからです。

これが他のお味噌汁と決定的に違う部分ですね。

麦味噌や米味噌は「主食になるぐらいの炭水化物」が入っていますので、甘味があってそれだけで十分美味しい。実際、料理研究家の土井善晴先生先生も「出汁なし具だくさん味噌汁」を提唱されています。

しかし、豆味噌ではこうはいきません。大豆と水と塩だけで作られる豆味噌にはそもそも炭水化物がほとんど含まれていないため、そのまま食べても甘味を感じることはありません。

実は豆味噌は米味噌や麦味噌よりも塩分濃度が低いのですが、それでも「しょっぱい」と感じるのは甘味成分が圧倒的に少ないためなのです。

極端に言えば豆味噌は「固形の醤油」と考えても良いぐらい。

だからこそ、味噌そのもので美味しさを作るのではなく、出汁を支える味として味噌を使うのが正解となるのです。

ちなみに、みりんを少し加えるのは足りない「甘味」を補うため。これは名古屋の料亭でも実際に行われている裏技です。

「味噌汁のレシピで赤だしを作る」なんて無謀なこととはもうオサラバ。

赤だしは「出汁が主役、味噌は脇役」。
出汁は普段の倍、味噌は普段の半分、隠し味にみりんを少々。

この二つさえ頭に入れておけば、本当においしい「赤だし」をいつでも自由自在に作ることができるでしょう。

ところで、赤だしのお味噌汁に合う具材は何だと思いますか?

ネギ、油揚げ、貝類、ワカメ、豆腐、大根などなど、定番のモノはだいたい何でも合います。強いて言えば「旨味」や「甘味」が出る具材の方がより相性が良いと思われます。

もう一つ言うと、豆味噌は「肉」や「脂」とも相性が良いんですよね。

だから、冷蔵庫の中で半端に残ってしまった「キャベツと玉ねぎ」に「ベーコン」を足しても、本当においしい「赤だし」が出来ちゃうんです。

さらにトマトを入れてもまた面白い風味になりそうな予感。

少し長くなりましたが、名古屋めし料理家として「赤だし」と本気で向き合ってみました。

本当に美味しい赤だし、ぜひ一度試して見て下さい。





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