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スコップ一杯のでたらめ   1

「ソレやらされてるの、
        それともやってるの?」


先輩に居酒屋に呼び出された
東京から程近い地方都市長野県松本市で舞台が計画されている事は先週聞いていたが自分達もそこに参加するとは思っていなかった

「地方都市っていっても街の中はそれなりなんだが、駅から離れた小劇場なんだ、東京と違って人がまったく通らんのだょそのは、」

役者になって6年子役から合わせればもう15年なる現場には慣れているし、稽古も欠かさない 映画やテレビもちょいちょいではあるが出演している 役さえもらえればそれなりに自信はある

先輩は知名度も高く評判が良い

「役者なんて、当たり役にハマれればすぐに売れちまうんだ!けど本当の勝負はソコからなんだょ、」

まだ知名度が低い僕からすれば、まず当たり役か欲しい所なんだが、恵まれてないのか?努力が足りないのかわからない

ただ言えることは 台本がなければ
役がなければ 演じることはたやすくない

「今回その小劇場でお前達二人で2日間
何でもいいから、やってみろよ チケ代全部お前らの稼ぎにしてやるから、」

「ありがとうございます!」

翔が目を光らせながら拳をぎゅと握り俺に合図してきた 

そうだよな やらなきゃわからない事だし 

今回は二人芝居 翔がイケイケなのは昔からそうだったが、僕はいつもついて行くほうだった。対照的な二人ボケとツッコミ翔はいつも身体を張ってトコトン泥臭い令和の時代に昭和男がタイムスリップしてきたような感じだ。僕はいつも誰かがやっているのを見てからじゃないと行動はしたくない慎重と言えば良く聞こえるが、ただ臆病なだけ

ないものねだり 
僕の慎重冷静を翔は羨ましいという

「ハル、何をやるか? すぐやりたいな!」

演目を考えるのは苦手ではあるが、舞台役者では偶にムチャブリされることがある

タイトルだけ決まっていて 中身をあとから作るなど 創造力をやしなう為の勉強なのだ

縁もゆかりもない場所で 腕試し
チャンスは嬉しいが手掛かりが見いだせない

そんなこんなで必死に考え絞り出す、まず何を表現するのか、二人一致した大義名分は最近東京で流行ってる舞台がどうも面白くない
斜に構えたような 気取っているような
一言でいうと「で、なんなの?」としか言えない

そもそも演劇は 大衆の娯楽なんだから
もっとシンプルに分かりやすい楽しめるヤツがいいんじゃないかな?

「そうそう俺なんて、ブリーフいっちょで挑んで見るよ!」

「翔、身体張ってくれるのほありがたいが、
脱げばいいってもんじゃないょ、」

「わかってるって、タイミングだろ!
 緊張と緩和ソコはさぁ、ハルがネタをひねってさぁー」

さて役割は自然にきまった孫氏の兵法でまとめるとしよう、ナポレオンもビル・ゲイツもキングダムも孫氏の兵法だ 何にでも当てはまるから使わない手はない

1道
大義名分  
「戦いに挑む相応しい理由」
★暗くなりそうな時代に分かりやすい娯楽 

結果報酬 「300人呼べば時給20万!」
(何を買う? 高級時計? 洋服?)

★なによりも役者としての経験 体験となる

2 天 タイミング 
これは戦う時のタイミングだか、自動的に決まってしまう どうにも出来ないが、
宣伝するタイミングを考えよう
「いつ 何処で 誰に どのように 何を 」

★例えば
日曜日 お昼 若者同世代  マックの前でみたいに絞り込んで 行動するべきかな?

地 地形 地の利を活かす
地域性からすると ミーハーな人はあまりいない
大学が2つあって 一つは真面目勉強出来る
地方から来ている もう一つは普通の大学

年間通じて寒い時期が大半?小劇場は人があるかない場所逆に車ならどこにとめる?街のホットスボットといえばイオンモールらしい


将 
味方を作る 地の利を知り尽くした人に
ターゲットを絞り込んで 具体的に戦略をたててから相談に挑む 
「この街でチケット売るにどうしたら?」
ではなく25歳独身仕事に悩み生活に追われ
笑いを忘れた人たちは何処で何をしている?
その人達にコンタクトするにはどうすれば?
など、質問が具体的であれば 相手も動く




ルール これがないと組織が崩壊する
例え二人でも お互いの意見が尊重しあうことは難しい役割分担を明確にする

手伝ってもらう人達にも例えばダイレクトな宣伝はNG 

当然だが、犯罪的要素はNG 職質されるレベルはダメ→田舎では奇抜 派手 ほ逆効果 
など最低限のルール予め必要だ

…………………………………………………
話し合いは深夜へ続く

「駄目だ煮詰まってきた」
「そうだな、休憩しよ」

「孫子の兵法 完璧にハメるのでなく
なんとなくザックリ 決めて 6割程度
後は具体的行動 → 自分達の行動と
他力本願 勝手に宣伝もしくは 
チケット売れちまう方法を考えようよ!」

「翔!流石だね僕はどうしても形式やルールにこだわってしまう本質は実験であり経験することどもんね!」

「いいや、やるからには稼ぎたい!小劇場キャパがMAX150席 2日間で300人!」

「でも、ご時世的に 人もあんまり出歩かないし日にちもないし、知名度もないし〜」

「なんだよ!ハル戦う前に出来ない理由並べてたら、逃げ道ばかり探してたら負け戦だぞ!」

「じゃあ、どうすれば〜」

孫氏曰く算多くにこしたことなく?だったかな?まずは先輩達のお客に手渡しで QRコードを「おめでとうございます~」と思いっきり笑顔で来そうな人に渡す

「駅前マックの近くで額縁をもって興味をそそりサクラを雇って行列を作ったり」

チラシは配ったりしてもお店に置いてあっても見ないけど相手からチラシをほしがるようにしかけたり舞台当日雨が降ってもその場所へどうしても行きたくなる理由を作ったり

「あー、恋人と待ち合わせとか?」

そーソレ 色恋健康 自分との関係性だね!
人は自分との関係性がない場合動かないけど興味ない物でも自分の置かれている立場や
状況で感情が動くじゃない?僕ら役者なんだから感情を動かそうよ

「ハル!思いっきりヤリきって後悔しないくらい走ろうぜ!」

「ゆっくり眠るなら墓の下でいいさあ!」

「とにかく知り合いとか 使えるものは何でも使う! 

金を稼ぐのに綺麗も汚いもないSNSも今までわざと使わかったけど、こーなったら全て出し切ってやる!

「どうせ道化を演じるのだ小さなプライドなんて売れてから持てばいいや、結果出してヤル! 」

「いいね!ハル、狩人の目つきになってきたよ!」

「翔、君は昭和の目つきだね」




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