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未来に恋する乙女心

図書館の一角、分類番号007.3の本が並ぶ書架の前でウサギは足を止めた。見慣れない専門書がぎっしりと並んでいて、彼女は思わず目をそらした。「AIって、やっぱり私には難しいのかも…」

ウサギの様子に気づいたカメが、そっと横に寄り添った。「AIって、実際に触れてみた方が、意外と親しみやすいかもしれないよ」その言葉に、ウサギは小さく頷いた。そして二人は、静かに図書館を後にした。

外苑前で電車を降りると、まだ葉の青い銀杏並木を眺めながら、二人は「きみとAIのワンダーな未来旅行展」へと足を向けた。
「ここはAIの考えた未来を、ちょっとだけ先取りできる場所なんだ」とカメは言いながら、静かに入口のドアを開けた。

ウサギは室内を見渡すと、未来のホテルコーナーに足を向けた。「砂漠のオアシスホテルに…スカイホテル? AIが考える未来のホテルって、どんな感じなのかしら」

「このVRで体験できるみたいだよ」とカメはVRヘッドセットを手渡した。画面の中に広がる光景に、ウサギは思わず息を飲んだ。「未来のホテルって、こんなふうなのね」

ウサギは弾むような足取りで、未来のレストランコーナーへ駆け寄った。「わあ、どれも美味しそう!」彼女は思わず声を上げ、期待に満ちた目で料理を見つめた。

未来のレストラン

メニューの中でも、ほのかに光るジェラートに彼女の目が留まった。「これ、美味しそうね。というより、きれいだわ…」

オワンクラゲのジェラート

「これはAIがレシピを考えたものなんだ。オワンクラゲの蛍光タンパク質を使っているから、こんなに光って見えるんだね」

「えっ、これってクラゲなの?」
ウサギは驚きと好奇心が入り混じった表情で、もう一度ジェラートを見つめた。
「どんな味がするのかしら…」

「私、AIのこと、もう少し図書館で勉強してみようかな。だって、あんな素敵なホテルに泊まれたり、クラゲのジェラートも食べられるんだもの」ウサギの視線はジェラートにしっかりと向けられ、その心の奥に、小さな切なさがそっと広がっていった。

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