週刊・主観 その33 『短編小説 思春期の、』

 現在11月21日(月)の19時45分。今回まじでなんも思いついてません。「うーん」って唸ってるうちに久々の2連休が終わろうとしている。
 明日は仕事なので遅くとも22時には何かを書き終わりたい。とりあえず宣伝!

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もりげき八時の芝居小屋第178回公演 片目で立体視プロデュース
片目で立体視 みっつ目
『マリエ考』
演出:嵯峨瞳
脚本:佐藤由希・嵯峨瞳(片目で立体視)・丹波ともこ・藤原五月(スワンボート)・橋本佳織(バーニーズ・マウンテン・ドッグ)

【場所】
盛岡劇場タウンホール

【日時】
11月23日(祝水)20:00~
  24日(木) 20:00~
  25日(金) 19:30~
※開場は各30分前

【料金】
前売り 1000円
当日  1200円

【予約フォーム】
https://www.quartet-online.net/ticket/8siba-178katame

★公演詳細はこちら
片目で立体視Twitter:https://twitter.com/rittaic

  

 いよいよ今週本番です! 前回書き忘れたんですけどチラシビジュアルまじで最高ですよね。この「マリエ」主人公の漫画読んでみたい。
 今回わたしは『恋とおばけ』の脚本以外にはほぼノータッチ(受付お手伝いに立ったりはするよ)なので、あんまり説得力のある宣伝もできないのですが、改めてチラシ見るとコンセプトだけでかなりそそられる企画じゃないですか? 脚本だけは全部読ませて頂いたんですけど、全部アプローチも色も味付けも違うので、上演時間以上の満腹感があるのではないかなと思ってます。コスパがいい。
 あと、個人的には「夜に観る」っていうのがかなり良いなと思っていて。「昼間なら行けるのに・・・」って方には申し訳ないのですが。観終わった後劇場を出て、夜道をひとり歩きながら、徐々に冷えていく頭で物思いに耽りたくなる後味だと思います。
 25日(金)の回は予約完売だそうです! 全ステージ予約は22日(火)21時までですので、どうかお早めに!

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現在20時30分です。お題箱に頂いてたテーマで反射で短いの書きます。反射で申し訳ないので、後で改めて同じテーマで何か書きます。
 もう26年生きてるんですけど、信じられないくらい計画性って身に付かないね。困ったもんだ。

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 「空が飛べたら良かったのにな。」
 灰沼くんがフェンスの網目に指を絡めて呟く。
 「そーらをじゆうにーとーびたーいなー。」
 「脳死で歌うなよ。」
 僕は真面目に言ってるんだ。と灰沼くんは口を尖らせる。彼の白い息だけがフェンスを通り抜け、冬の空気と混ざり合うのをあたしはぼんやり眺めた。
 「どこ行きたいの。」
 「そういうんじゃない。」
 「飛んで行きたいところがあるんじゃないの?」
 「行きたいところに行くだけだったら、別に飛ぶ必要ないだろ? 車も飛行機もあるわけだし。」
 うちの高校は比較的簡単に屋上の鍵を貸して貰える。その代わり、事故防止の為フェンスが野球場のネットくらい高い。金かけてこんなの置くなら完全閉鎖とか教師が同行とかすればいいのにとも思うけど、屋上解放の恩恵を一番受けているのは我々天文部だ。
 その壁のようなフェンスよりもっと高いところを灰沼くんは見上げている。細い首が折れそうで怖い。
 「じゃあなんで飛びたいの?」
 「僕が空飛んだら、"弾み"が生まれるかもしれないだろ?」
 「弾み? え、飛ぶってそういう? ボールみたいなこと?」
 「ちがくてぇ。"弾みでやっちゃいました"の"弾み"だよ。」
 無意識だろうか。もう灰沼くんは自重を全てフェンスに預け、つま先立ちで少しでも空に近づこうとしている。
 「あり得ないことひとつ起こせたらさ。こう、ドミノのスタートみたいに、全部ひっくり返せるんじゃないかな。」 
 足をプルプルさせながら背伸びをする灰沼くんは見たことない姿過ぎて面白い。面白いけど、でも灰沼くんの飛び方はおそらくそんなんじゃないよ。もっと、まるで子供の手から離れた風船のように、音もなく、遠くへ行ってしまうんだ。
 「あほらし。」
 あたしは鼻で笑って、風船の紐をギュッと握りしめる。
 「今日曇ってるしもう帰ろ。英語の課題やんないと。」
 「新田さんは夢がないなぁ。」
 「灰沼くんが言ってんのは夢っていうかさぁ、中2くさい。」
 「ひっでぇ。」
 「もうちょい地に足着いたこと考えなよ。あたしら来年受験だよ。」
 「すーぐそんなつまんない話題に持ってく。」
 灰沼くんがブーブー言うのを無視して、あたしは望遠鏡を片付け始める。
 今日話したことを、10年後あたしたちは覚えているのだろうか。もし覚えていたら、振り返って何を思うのだろうか。願わくば、黒歴史に見えていてほしい。「僕そんなこと言ってた?」なんて顔を赤くしててほしい。
 思春期の終わりかけを生きるあたしたちは、「10代」の名のもとに平気で自分勝手な破壊衝動を言いふらし、その責任を取らない。でも灰沼くんは、灰沼くんだけは、そのルールから少しはみ出てしまっている気がして、そう感じる度にいつもあたしは、今よりお腹が出て頭頂部の薄い未来の灰沼くんを想像する。あたしの立っている現実に、灰沼くんも縛り付けて仮初の安心を得る。

 

 あの日から1年と数日後、あたしの脳内努力も虚しく、灰沼くんはいなくなった。
 卒業式の前日、空を自由に飛び回り口からビームを放つ灰沼くんを、あたしはいつもの屋上から眺めていた。「灰沼くん!」と呼び掛けても、彼は可笑しそうに笑うだけで答えてくれない。やがて現実を破壊し尽くすと、灰沼くんは遠くへ遠くへ飛び去ってしまった。フェンス越しに校庭を見ると、灰沼くんがつくった「受験」や「校則」や「先生」の瓦礫の上を、卒業生になるはずだった生徒たちがウロウロ不安げに歩き回っている。
 「灰沼くんのせいで、あたしたち卒業できなくなっちゃったよ。」
 もう届かない文句を虚空に投げかけるあたしは、消えていった風船に向かって手を伸ばす子供にそっくりだった。

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♦ 作者コメント ♦  
21時55分、投了です。
 
★質問箱でお題募集してます


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