蛇足

私の後輩である神楽の出自は、それはそれは数奇なもので、そもそもそれはハッキリとしないものなので、出自と言う言葉が正しい物なのかすらも分かりませんでした。
それは二月の寒い夜に、私の誕生日プレゼントを買おうとして父と遊びに行ったショッピングモールの事で、そこで初めて私達は出会いました。出会った時私は父とはぐれていて、泣きだしそうだったのを覚えています。はぐれた父を探している私に、彼女は何故か話かけて来たのです。ショッピングモールなのですから同い年くらいの子供は沢山いましたが、何故か、私に。
私は家族の事など忘れて、近くの子供用のスペースで二人で遊んでいました。恐らく必死に探していた父は、ようやく私を見つけて苦笑いしていたのを覚えています。そして、隣の神楽を見て驚いた表情をしていた事も、何故か今でも鮮明に覚えています。
その時、神楽の名前は神楽ではありませんでした。父は何故かそれが解っているかのように少女に名前を訪ねましたが、少女は名前というシステムすら知らないかのようでした。
その後、神楽は病院の血液検査で出自不明の子供として昔孤児院に勤めていたシスターに引き取られました。バースレートも低下したこの二千三十二年に孤児などは珍しく、孤児院はあまり必要とされなくなって姿を消していましたが、幸い父の知り合いのそのシスターに引き取って貰いました。神楽という名は、父が引き取って貰う前に名付けたそうです。引き取った月が二月だったので、如月を取って、少女の名は如月神楽となりました。それが、私の親友、如月神楽の出自です。