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映画記録祭2020

今回は「今年観た映画の感想」。まだこのNoteで言及していない作品を取り上げています。次に見ることがあっても同じ感想にはならないだろうし、今の私が思ったことを備忘録がわりに綴ってみました。ちなみにネタバレありです!読みたくない方は回れ右。前置きはほどほどに、本題いってみましょう。

唯一の真実は愛の衝動だけ

『胸騒ぎの恋人/Les amours imaginaries(2010)』の冒頭に登場するアルフレッド・ド・ミュッセ(1810~1857)の言葉です。グサヴィエドラン作、カナダのロマンスドラマ映画。端的に表すなら「カラフルで洒落ている映画」。

演出も衣装も音楽もすごくお洒落で気に入りました。フランス語だから字幕追ってないとわからないのだけど、訳される前はどんなニュアンスだったのかなあと…きっとセリフまでお洒落だったんじゃないかな。キャッチ―な挿入歌『Bang Bang』も選曲センスがいい…暫く脳裏に焼き付く。でも恋模様はださくて生々しいんです。見てると恥ずかしくなるくらい痛い。

キーとなる人物は3人。繊細で感情的なフランシス、人間~!って感じがするタバコ女マリー、天性の人たらし二コラ。3人ともすごくいいキャラしてて誰も憎めません。悪者がいない映画っていいよね…。

フランシスは不器用なんだけどマイノリティの宿命的な部分を受け入れながら苦悩と戦っている。マリーは空回りしている感じ。惚れた男の好みの女になりたくて、それはもはや無意識で、下手なウソついちゃったり、似合わない格好してみたり、すっぴんの方が可愛いのが微笑ましい。二コラは立ち位置としては悪者かもしれないけど、実は一番かわいそう。友達が欲しかっただけなんじゃないかな…家庭背景も考えると誰か一人を愛することへの抵抗もあるだろうし。

皆に程よく感情移入できる。見ているほうとしても誰か一人の味方につかなくていいので、淡々とストーリーが進んでいくのを眺めていればよくて、疲れない。うまくできてる。当時21歳のドラン監督自らフランシス役を演じているの、天才すぎます…。

クスっと笑えるオチと、親友であり恋敵である二人が異性だということが相俟って、後味はスカッとする系。恋愛ものらしからぬエンディングな気がしました。個人的には大好き!

平凡な風景が突然意味のあるものに包まれる

"That's what I love about music. - One of the most banal scenes is suddenly invested with so much meaning! All these banalities - they're suddenly turned into these... these beautiful, effervescent pearls. From music."

こちらは『はじまりのうた/BEGIN AGAIN(2013)』より。とても素敵な音楽デートにて、ダンが音楽の好きなところをグレタに語っているシーンでの一節です。”すべての平凡なものが美しさを持つんだ。ピカピカの真珠になるんだ。音楽によって”と続きます。

Effervescentをピカピカと訳してしまうのはせっかくのダイナミクスが失われている感(静的の対義語としての。伝われ)あるなと思いつつ、音楽かじってきた身としてもとても染みるというか、月並みだけど音楽って最高だなと再認識。

余談ですが昔お付き合いしていた人が「世界の共通言語は音楽だ」と言っていたのをふと思い出しました。その前の恋人は「スポーツだ」と、そして他にも「科学だ」「笑顔だ」「絵画だ」といった意見から「下ネタだ」という可笑しい意見にまで触れてきたけど、言語を超えたコミュニケーションツールになりうるものって底知れない力を持っていますよね。

さあ話を戻して、映画の感想をつらつらと書いていくのですが、まずタイトルの良さ!洋題と邦題の間にこんなに乖離があるのに、「こっちのほうが好き」がないんです。どちらもハマり題というか…秀逸だなと思いました。まれにみるパターン。

次に映画の温度感。ぬるくて楽に見られる。これも悪者がいない映画だからなのかな、登場人物全員推せました。でもやっぱり一押しは主人公のGretta。シンプルにかっこいい。こうなりたい。綺麗だし着飾るとまるでモデルさんなんだけど、歌っている時は決まって格好がださいの、音楽に対しての本気度が伝わってくる。欲がなくて「好きなことを楽しんでいる」のが羨ましいな…。

最後になんといっても曲!すごくいい。当然と言えば当然だけど、本当にいい。Dave役はあのMaroon 5のボーカルですもの、うまくないわけがありません。引き込まれちゃいます。Lost Starsの”Take my hand let's see where we wake up tomorrow~"というフレーズが大好きで2日間くらい永遠に口ずさんでいました←

ちなみにNo.1お気に入りシーンは、楽器が勝手に動き出す、脳内編曲の映像化。紹介したセリフのシーンではないというね。←

もう少し暖かくなったら、スプリッターで音楽を聴きながらお散歩するデートをしたいですね。それまでにとっておきのプレイリストを作らなきゃ。(あととっておきのお相手も。!)

フォースと共にあれ

"May the force be with you." - 有名すぎるフレーズ。台詞は知っていたけど、実はスターウォーズシリーズを見たことがなく、今更ながら公開順に従い4~6を見てみました。

第一印象としては映像がすごくチープ(当たり前ですね)。登場人物とドロイドは皆愛せます…いいキャラしてる。コアファンがいるのもわかる。ただ全体的にぬるっとしているというか、現代の映画に慣れすぎた私たちには若干物足りない感じがするね、と話していました。分かり易いストーリー展開なので、もうちょっとメリハリのある演出ができたらよかったのかも。

例えばオビワンケノービが死んでしまうシーン、ダースベイダーが父親だと告白するシーン、ハンソロ解凍シーン、ダースシディアスやっつけるシーン、なんかぬるっとしていてあっけないんですよね。最後の例だと例えばダースベイダーとルークが親子の力を合わせてなんとか倒せる描写があってもいいのかなとか、そもそもダースシディアス登場時にもうちょっとピリッとした緊張が走る演出が欲しいなとか思いました。

誤解のないよう書いておきますが酷評とかではないです、けして。公開時期を考えたらめちゃくちゃ素晴らしい映画だと思う。戦闘シーンは総じてエキサイティングだったし、なんなら今でも楽しんで鑑賞できました。きっと宇宙が物語の舞台である、ということそのものが既に大事で、あの時代にここまでのクオリティの”老若男女楽しめるSF作品”を出せるのはすごいとしかいいようがないです。1~3、7~9も楽しみ。

私たちは一組の古い靴下みたいね

『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス / Maudie(2018)』という、実在した画家モード・ルイス(*)とその夫エベレットの一生を描いた作品。障害を患っていて社会に馴染めずにいるものの、豊かな心を持っているモードと、孤児院育ちでたった一人で暮らしている短気で暴力的で不器用なエベレット。この二人がいびつな愛と絆を育んでいく様子がとても自然で素敵

この作品の推しポイントとしては主演二人の圧倒的表現力の高さ。サリー・ホーキンスもイーサン・ホークも、”お芝居上手”なんて言葉じゃもったいないくらい、観客を引き込む力が確かにありました。

素直に素敵だなと思うしこんな夫婦或いはこんな生き方、いいなあ…って思うんだけど、どこか羨望とは違う不思議な感覚。この二人そしてアシュリングウォルシュ監督にしか作れない世界観だったと思います。本当に美しい物は何か、本当に守るべきものは何か、を考えさせてくれる名作でした。素朴で可愛い絵もあとから調べた本物とそっくりで、じわじわと温かい、カイロみたいなお話。お気に入りです。

P.S「Like a pair of odd socks」が「一組の古い靴下」と訳されていたのはodd/oldの聞き間違いなのか、わざとなのかだけ気になりました。←

(*Maud Lewis(1903-1970)はカナダのフォークアートの画家。色彩豊かで温かみと幸福感のある画風。動物、草花が中心の「窓から見える田舎の風景」が主なモチーフ。)

希望はいいものだよ。多分最高のものだ。

―いいものはけして滅びない。と続く名言が印象的な『ショーシャンクの空に/The Shawshank Redemption(1995)』。圧巻のラストが清々しい2時間半の大作。有名なのにちゃんと見たことはなかったからこの機に。邦題ちょっと微妙じゃない…?と思いつつ中身最高なので好きな映画になりました。

まずエンディングがとても好み!伏線が本当にすごいとしか言いようがありません…。どんどんそれが回収されていく脱獄シーンは気持ちいいくらい潔くて、でもヒューマンドラマなのでちゃんと余韻も残る。

自由と束縛、生と死、そして希望と絶望、というふわっとした概念が、上手に対比されながら描かれていたのがとてもよかった。特に映画内でもフォーカスされていた希望はやはり大事なんだけど、希望を持つことの怖さやリスク、それに打ちのめされている人間の弱さが表されていて心にぐさぐさと刺さりました。

やはり不朽の名作と言われているだけあってしっかり2時間半釘付けだったし感動できる作品ですね。アンディとレッドの固い絆で結ばれていて絶妙な距離感のある唯一無二の友情が最高…ティム・ロビンスとモーガン・フリーマンの演技力たるや。原作になった小説も、ストーリーを忘れかけたころに読めたらいいな。

『40歳の童貞男』

終始笑っていたのでセリフが一言も思い出せない。ということでシンプルに題名を見出しとさせてください。ちなみになんだこの邦題、ってなると思うんですけど、原題も原題で、『The 40 Year Old Virgin』です。どっちもどっち。

ただのお下品な映画かと思いきや、男同士の友情がとにかくアツい。意外とハートフルなコメディ映画でした。相手となる女性とその子供の親子関係も、思春期ならではのすれ違いと根底にある愛がちょうどよく描かれている。まあ下ネタは下ネタなんですけど、いやらしくないというか。見ていて不快になる感じではまったくありません。エンドロールの奇妙なダンスも最高。

個人的に大好きなHangoverやTEDと近い雰囲気を感じ取りましたが、101回目のプロポーズ感あったと言っている人もいたので見てみようかな。

毎年同じことができるってことが幸せなんだなって

ガラッと真面目な映画になりますが、大好きな本のひとつである森下典子さんの『日日是好日』が映画化されたものです。本を先に読んでいたのでストーリーは知っていたのですが、お茶を始めて2年目になる今年、映画を見たらなんだか作品と自分との距離が縮まった気がして嬉しかった。(本の方も、お茶を始めた後に読んだ2周目は脳が栄養を吸収するかのように楽しんで読めました)

これはまさに「考えず、感じる」ことが是とされる題材を扱うお話。なのであまり思考せずにいたく、多くを語りませんが、とにかく私の大事なもの、大事にしたいものが詰まった作品です。特に激動の年だった2020年、”日常の幸せ”を改めて認識する余裕も失いそうになるけど、そんなときこそこのお話だな、そんな時こそ茶道だなあと。

ビリーはたった11歳の子供だよ。小さな子供だ

『リトル・ダンサー/Billy Elliot(2000)』の涙なしでは見られないシーンより、お父さんのセリフを持ってきました。「自分の人生何に懸けるか。何のためにならすべてを犠牲にできるか」ということを再考させられる物語でした。

大筋としてはよくある”好きこそものの上手なれ系”の映画なのですが、時代背景を反映している裏テーマがお話にアクセントを与えていました。まず社会問題。労働組合でストライキを先導するのは主人公のお父さんとお兄さんです。そして性差と世間体。男の子はボクシング、女の子はバレエと、偏見を持って決めつける大人に疑問を呈した主人公の純粋な心がよかった。親友的ポジションのクラスメイトもおそらく今でいうLGBT。

とはいえテンポのよいストーリー展開やリズム感の心地よい音楽、コミカルな演出とちりばめられたジョークのおかげで全然重すぎない。むしろ軽いくらいです。笑いあり涙ありで、家族、友情、恋愛、恩師と教え子…といろんな愛が盛り込まれていて、心温まる青春ストーリーでした。

「愛している」と明示的に言わない(言えない)登場人物たちですが、それぞれの中に確かに愛は存在して、それがうまく見ている人に伝わるのがいい。親になってから観たらまた心の違う部分を打たれるんだろうな…ミュージカルやバレエ作品も見に行きたいなと思いました。

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あくまで自分のメモ用に書いてみたけど、同じ映画を見た人と感想をシェアできたり、おすすめの映画を教えてくれるお友達がいたら嬉しいなと思って公開。(笑)

最後まで読んでくださった心優しい方、よかったらハートマークを押してくださると嬉しいです(ログインなしで押せます)!それでは良いお年を。


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