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本日のオススメ本【隣のずこずこ】+店長のオススメフェア【すこし不思議小説】


行ける人には、すぐ行ける 行けない人は、ずっと行けないそんな街、宵待町。

…どうしました、キョロキョロして。ふむふむ。「猫目堂」をお探しなのですか?それなら、けんびきょう座2-1番地を…? ああ、この町は初めてですか?

なら、駅を出たら宵待ち通りをまっすぐ行って、二番目の路地をちょっと右に見て御覧なさい。そうそう、曲がってすぐの煉瓦の建物です。

こじんまりした入口なんで見逃しそうですが、お探しの本屋「猫目堂」はそこにあります。

営業日も営業時間も店長の気まぐれなんで気を付けて下さいね。入口に看板が下がっていたら、その日は店が開いているって事です。

お店には本好きだけど、仕事はまだまだ見習い中…でも趣味のお料理の腕は、なかなかの店員、柊くんと

本を読み始めると窓の外が暗くなっても気づかないし、ごはんを食べるのも忘れちゃうくらい本が好きな店長がいます。

そうだ、良いことを教えておきましょう。合言葉です。

「本日のオススメは?」

そうすると、あなたは店の奥のカフェに案内されるでしょう。少し待つと店長がオススメの本をいそいそと持ってきますし、柊くんが読みながら食べるのにうってつけのおやつを用意してくれますよ。

いえいえ、私は用事があるのでここで失礼。ここへはよく来るので、またお会いすることもあるでしょう。サァ、「猫目堂」へようこそ。

よい読書を。

 店長「選考委員である恩田陸、森見登美彦、萩尾望都先生らが絶賛していたので読んでみたのですが読み終わった後「なるほど、これは面白い」と思いました。」

「そんなにですか?」

 店長「2017年4年ぶりに再開された、日本ファンタジーノベル大賞の受賞作なのですが、そうか「現代の」ファンタジーとはこういうものなのかもしれない、と思いました。

 「へぇぇ~ぼくも読んでみようかな…どんなお話なんですか?」

 店長「人口300人程度の小さな集落「矢喜原」には「権三郎狸の話」という昔話が語り継がれています。巨大な権三郎狸が現れると、村は火で焼かれ村人は一人残らず呑み込まれる、というものです。

ある日、その権三郎狸が「狸憑き」の女性あかりさんと共に村に現れます。」

「ひえええ」

 店長「村が権三郎狸に呑み込まれるまであと三週間。住んでいなくとも、狸が村に来た時点で村にいた人間はどこに逃げても権三郎狸に呑み込まれます。」

 「それはひどい…」

 店長「ひどいですね。なかなかに理不尽です。別の町に住んでいてたまたま村を訪れていても呑まれます。

しかし、主人公のはじめを含む村人たちは急に告げられた最後に対して諦め、悟り、受け入れます。「そんなバカな」と思いつつ「三週間後に起こる悲劇」を前提に過ごし始めます。知らぬ間に権三郎狸のシステムに組み込まれて育ってしまったのです。

村人たちは各々、その日までを過ごします。いつも通りに農作業をする人もいれば、毎日バーベキューをし始めたり…もう終わりなんだから、と自棄になって犯罪に走る人も現れます。」

「村の人たちは村の外へ逃げ出さないんですか?」

店長「勿論、海外へ逃亡しようとする人もいます。でもどこかで「逃げられない」と理解して諦めてしまっているのです。

飄々としていてユーモラス。その中に混じる狂気。1m半の信楽焼の狸の置物そっくりの化け物がずこずこと歩くさまを想像してご覧なさい。奇妙に可笑しいです。

それでいて絶対的な抗えない物事を目の当たりにした人間の反応、絶対に終わる将来が描かれているので、どこか哀しく、そして怖いのです。」

「それにしても変わったタイトルですねぇ。」

店長「表紙イラストといい「となりのトトロ」を連想させようとしているのかなぁと僕は思うのですが…
 「あの世界観を期待すると痛い目にあうぞ」
という皮肉なユーモアを感じます。

ただ、投稿時は「権三郎狸の話」という題名だったようなので、なるほど、確かにこの題名の方が目を引くなぁと思いますね。」

「僕も読んでみます!」

 店長「そうですね、君は森見登美彦さんの本が好きなので、好みに合うかもしれません。少しテイストが似ています。一冊にこんなに色んなジャンルの要素を詰め込んだ作品を書く新人さんが現れて今後の作品が楽しみで、ワクワクしますね。」


【栗饅頭と玉露】
「作中に出てくる高崎ストアの栗饅頭ほどにおいしいかはわかりませんが…読んでいたら無性に食べたくなって、宵待ち通りの白鳳庵さんに行って買ってきました。中には栗が丸ごと一個入っています。」

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というわけで、こんな感じでオススメ本を紹介していこうと思っています。ただお勧めするのではなくどうやったら興味を持ってもらえるかなぁ…と考えた形でこうなったのと

私自身が店員さんが面白い本をオススメしてくれて、話に合うおやつまで用意してくれる本屋カフェがあったら通い詰めるな…といつも思っているので…猫目堂、店長店員共々お付き合い頂けたら嬉しく思います。


ここから先は店長が選書したフェアとなります。有料記事となりますが、こんな感じでオススメしていますよ~とわかるように、一冊だけ読めるようになっています。ご興味がありましたら宜しくお願い致します。

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いらっしゃいませ。店長の夜長と申します。こちらではテーマに合わせた本をご紹介するフェアを展開しております。今回は「ガッツリファンタジーというほどではなく、すこし不思議な、ファンタジー慣れしていない人でも読みやすい小説」を10冊ご紹介致します。


【竜が最後に帰る場所・恒川光太郎】

しんと静まる雪の夜、錫を鳴らして歩く赤い女に導かれ 町から町へと渡ってゆく怪しい集団。 巡礼めいた一行。その一行に加わった僕は 微妙に異なる世界から世界への旅に出る…(夜行の夜)

5編を収録した短編集です。恒川先生はその美しい文章で、独特の世界観というか不思議な空気感を感じさせる作品を多く書いておられます。幻想ホラー小説というのでしょうか。ただ、ホラーと言ってもエグイ怖さとは無縁の、怪談に近い郷愁や、美しく物悲しい怖さを余韻として残すのです。この本に収録された「鸚鵡幻想曲」などは何をどうしたらこんな発想が…?と引き込まれるばかりです。この本がお気に召したら、他にも「夜市」「秋の牢獄」などもオススメですよ。

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