黒と白とは闇に抗う
鬱蒼と生い茂る闇の中、俺は身を潜め、闇をすくい取りリボルバー銃に弾丸を装填する。詰め込むのは殺意。6発の殺意が武器だ。
(やつは俺に気づいているか?いや、気づいている前提で動け)
俺はいつもの言葉を心の中で唱える。闇はすべてを飲み込み侵色する異常だ。異常に染められないためには、強い自我が必要だ。あるいは、染められてよいという自暴自棄にも似た覚悟が。
「グワォッ!!」
ようやく俺に気づいたのか、巨大な猪のような闇獣が飛びかかってくる。俺はすかさずリボルバーを構えて殺意を打ち込む。1発、2発、3発。
「グゴォッ!?」
闇獣は弾丸をまともに食らって悲鳴を上げると、ジタバタして動かなくなった。
「フゥー……」
俺は緊張感を失わないように深く息を吐く。残心というやつらしいが、いつの間にか身についていたクセみたいなものだ。
巨大な猪のような闇獣だった死骸に近づくと、命を包み込んでいた闇が散り、猪の死体だけが残っていた。今日の闇狩りも無事に終えた。
いつのころだったか、太陽が滲み始めてからこの世界はおかしくなってしまった。所々にあらゆるモノを飲み込む闇が生い茂り、近づく命を飲み込んでいく。飲み込まれた命は闇を広げる。それをどうにかするために闇に入り込む職業が生まれた。自ら闇を纏い闇に向かう者、闇人。俺もその一人だ。
俺は猪を持ち上げようとした。その時、ぞわりと嫌な予感が闇を歪めた。
(闇が歪むだぁ?オイオイ、いや、まさか……)
すべてを飲み込む闇だが、例外的に飲み込めないものがいくつかある。もっとも、そうそうお目にかかれるものではない。なら、俺の状況は奇跡的な幸運か、あるいは……。
「アンタ、あれ、倒せる?」
俺の背後に立っていた女は、全身を白装束に包み、眩しい白髪をなびかせ、恐ろしいほど美しい白眼で俺を見る。
「ちくしょう!」
女が指差す方向から原型不明の闇獣が飛びかかってくる。
俺はとっさに銃を構える。弾丸はあと3発。
【続く】
サポートされると雀botが健康に近づき、創作のための時間が増えて記事が増えたり、ゲーム実況をする時間が増えたりします。