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コロナが「日本社会の老化」を加速させた:読書録「未来のドリル」

・未来のドリル  コロナが見せた日本の弱点
著者:河合雅司
出版:講談社現代新書



「未来の年表」シリーズの河合先生の新作。
「未来の年表」には物凄く感銘を受けたのですが、近作は、「フォローしなくてもいいかな」…とか思ってましたw。
でも「コロナ禍」がどういうインパクトを「未来年表」に与えたかってのは気になるところ。
久しぶりに読ませていただきました。


もちろん「未来年表」的には一番インパクトがあるのは「出生者数」。
2020年の出生者数見込みは「84万人」。
2021年は「75万人」に減少することも予想されています。
19年は「92万人」ですから、減り幅はかなり大きいです。
「コロナ後」に反動することもあり得るでしょうが、20年・21年の出生者数が増えるわけではありませんからね。
それに人口動態や年齢構成、育児環境なんかを考えても、どこまで戻るか…はかなり「?」です。


本書はこれ以外に各種データを基にして、
「高齢化の進展と、高齢者の消費意欲の減退」
「高い比率で非正規労働者の割合を占める女性・若者への経済的逆風」
等を指摘しています。
そういう意味では作者は「コロナ対策はあまりにも経済を痛め過ぎている」というスタンス。
その認識には賛同できるものの、対策(高齢者とそれ以外の層の分離対策)はちょっと雑な感じがするかなぁ。
医療機関のアンバランスさがコロナ禍に機能しなかったことについてはデータベーシに基づいてしっかり把握されているので、その対策の「難しさ」については理解されてるとも思うのですが…。
(「検査」がポイントなのではなく、その後の「強制力を持った隔離」や「医療機関の柔軟な連携・医療資本の移動の強制」がポイント。この「強制力」に踏み込めないことが脆弱な日本の医療体制につながっていると、僕は考えています)


本書が指摘しているのは、
「コロナ禍で、日本社会の<老化>は一気に進んでしまった」
ということでしょう。
その根本的対処は「若返り」。
作者の提言にはそれが表れています。

①国政選挙に「若者枠」を新設
②中学卒業時から「飛び入学」導入
③「30代以下のみが住む都市」の建設
④大学を共同キャンパス化する
⑤若い人々に英才教育をする

「現実性」?
その厳しさは作者も承知の上。
それでも提言するのは「危機感」の表れです。



コロナ後の社会がどうなるか。

正直、僕には分かりません。
ある程度は旧に戻るでしょうが、(出生者数のように)取り返しのつかないこともあり…。
何よりもこの「コロナ禍」が日本社会の弱点を炙り出したことは、間違いありません。
行政のアナログ仕様やら、政治・行政組織の「昭和」体質やら…。
新聞読んでたら、ため息つきたくなる毎日です。
しかし、

コロナ禍のインパクトをネガティブに捉えるのではなく、これを契機として日本社会のトランスフォーメーションを実現する。

作者のこの視点には僕も賛同します。
そういう議論を、政治の場でしてほしいですけどね。


そこに期待できそうもないってのも「弱点」の一つかな。


#読書感想文
#未来のドリル
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