見出し画像

「人間性」は暗黒森林に対抗できるか?:読書録「三体Ⅲ 死神永生」

・三体Ⅲ 死神永生<上・下>
著者:劉慈欣 訳:大森望、光吉さくら、ワン・チャイ、泊功
出版:早川書房(Kindle版)



いやはや、もうなんと言っていいのやら。
前作「暗黒森林」を読んだときにも、その壮大なスケールにタメ息をつくばかりでしたが、本作に至ってはもう…。
「このラストから<先>があり得るのか?」
前作を読み終えてそう思ったし、多分トーンの変わった続編になるんじゃないかなと予想してたんですが、全く予想外れ。
ド「続編」…でしたw。


(ちなみに冒頭に1作目・2作目の簡潔なまとめがあります。
「あ〜、そういう話やったっけ」
とか思ったりして。
まあ、でもやっぱり読んだほうがいいですよ。1作目も2作目も)



翻訳版の出版が決まって、事前予約で購入したんですが、しばらく手を付けずにいました。
まあ、長いですからw。
でも読み始めると、物語の推進力にすぐに取り込まれ、
そのドライブ感の気持ちよさに、むしろ先を進めるのが惜しくなって、無理に読むペースを落としたりして、
それでも3日ほどで読み終えてしまいました…。


SF的な発想の壮大さには、多分「粗」もある
物語としても「う〜ん」ってところもある(「冬眠」はチョットずるいw)
オチについても…


しかしそれら全てを踏まえても、


「圧倒された」


これが読み終えての感想です。
(とか言いながら、ハードSF的なアイデアについては「はあ、そうですか」と流し読むしかなかったんですけどw)



文革によって人類に絶望した「葉文潔」
彼女を起点とする壮大なSFは、
極めて「人間的」な(そういう意味では一般の人でもある)「程心」
によって締め括られます。


葉文潔を絶望させた「人間性」は、暗黒森林が制する「宇宙」において「人類」を生き延びさせることができるのか。


そういう物語だったのかなぁ、とか思ったりもして。


このシリーズ、Netflixで映像化が決まっているはず。
いやぁ、むっちゃ楽しみですわ〜。
(「インターステラー」のスタッフとかが関係してくれると、なお面白そう)


<以下、若干のネタバレを含みます。間違いなく、「傑作」ですので、先に本編をお読みください>



2作目の主人公であった「ルオ・ジー」。
本作でも彼は主人公(程心)との<対極>において重要な役割を担います。(もう一人、「トマス・ウエイド」とともに)
どっちかっていうとチャランポランなキャラだった「ルオ・ジー」が、こんなキャラに変貌してるとは…ってのも読みどころの一つ。


ただそのことで「程心」のキャラが弱くなってるってとこもあります。
ある意味、「人間性」の象徴みたいなところもあるので、仕方ない面はあるんですけど、
「葉文潔」
という、むちゃくちゃ印象に残る女性キャラクターを生み出した作品だけに、チョット惜しい感じもするんですよね〜。
なんかチョット「マッチョじゃないとね」みたいなノリも感じたりもしてw。
作者にそんな意図は全然ないとは思いますが…。


しかしこのシリーズの中国版って、どんな感じなんでしょう。
「基本エンタメ」
なのは間違いないんですが、そこここに共産党批判を感じるところも…。


なんか余計なことが心配になっちゃったりもしましたw。

#読書感想文
#三体
#死神永生
#劉慈欣

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?