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2021年6月の記事一覧

「人間性」は暗黒森林に対抗できるか?:読書録「三体Ⅲ 死神永生」

「人間性」は暗黒森林に対抗できるか?:読書録「三体Ⅲ 死神永生」

・三体Ⅲ 死神永生<上・下>
著者:劉慈欣 訳:大森望、光吉さくら、ワン・チャイ、泊功
出版:早川書房(Kindle版)

いやはや、もうなんと言っていいのやら。
前作「暗黒森林」を読んだときにも、その壮大なスケールにタメ息をつくばかりでしたが、本作に至ってはもう…。
「このラストから<先>があり得るのか?」
前作を読み終えてそう思ったし、多分トーンの変わった続編になるんじゃないかなと予想してたん

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引越しできないご近所が抱えるリスク:読書録「『ネオ・チャイナリスク』研究」

引越しできないご近所が抱えるリスク:読書録「『ネオ・チャイナリスク』研究」

・「ネオ・チャイナリスク」研究 ヘゲモニーなき世界の支配構造
著者:柯隆
出版:慶應義塾大学出版会

作者の柯隆さんは伊藤洋一さんのラジオ番組(Round up world now!)に年に何回かゲスト出演され、中国経済について語ってらっしゃいます。
そのバランスの取れた語りっぷりが好きなんですよね。
先日、番組の中で本書が紹介され、それで読んでみた次第です。

「チャイナリスク」と言う意味では、

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ほんと、酔狂な・・・w

ほんと、酔狂な・・・w

大借金して数寄屋造りの家を建てた山下和美さんが、今度は洋館の家主に?
まだ借金も残ってる(らしい)のに。

う〜ん…。

個人的には、こういう歴史的建築物は残るものは残るし、失われるものは失われる…ってスタンスで、何でもかんでも「古いものは残すべき」って立場じゃないんですけどね。
失われるものには失われるだけの何かがあるんであって…。

まあしかし、こういう風に酔狂な人が絡んできて、「残す」ために

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煎じ詰めれば「CMとして成立してるか?」って話かも:読書録「炎上CMでよみとくジェンダー論」

煎じ詰めれば「CMとして成立してるか?」って話かも:読書録「炎上CMでよみとくジェンダー論」

・炎上CMでよみとくジェンダー論
著者:瀬地山角
出版:光文社新書(Kindle版)

定期的にやってる光文社新書のKindleセール(50%OFF)で購入。
直近で購入したのが「Z世代」だったんですが、割と「ビミョ〜」なラインをついてきますな、このセールはw。

本作は近年で「炎上」したCMを具体的に取り上げながら、その「炎上」を「ジェンダー論」の視点で、どういう観点から生じたのか、解説してくれ

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謀を巡らせるのは…:読書録「黒牢城」

謀を巡らせるのは…:読書録「黒牢城」

・黒牢城
著者:米澤穂信
出版:KADOKAWA(Kindle版)

織田信長に叛旗を翻した荒木村重。
籠城する彼の元に訪れ、捉えられ、牢に押し込められた黒田官兵衛。
…その史実を背景に、有岡城籠城中、「閉鎖空間」である城で発生する奇異な事件の解決を、城主の村重が、囚人である官兵衛に依頼する…というスタイルでの連作短編集になります(収録されているのは4編)。

それぞれの事件の背景には「謀(はかり

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事件は邦題のまんま。でも読後感は原題に…。:読書録「P分署捜査班 誘拐」

事件は邦題のまんま。でも読後感は原題に…。:読書録「P分署捜査班 誘拐」

・P分署捜査班 誘拐
著者:マウリツィオ・デ・ジョバンニ  訳:直良和美
出版:創元推理文庫(Kindle版)

ナポリを舞台にした「87分署」スタイルの警察小説。
問題分署「ピッツォフォルコーネ署」に集合した個性溢れる面々が、それぞれプライベートの悩みを抱えながらも、チーム一体となって事件に向かう姿が描かれます。
「集合編」だった前作よりもこなれたメンバーのチームワークは万端。
…なんだけど、な

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地獄への道は善意で舗装されている:読書録「悪の処世術」

地獄への道は善意で舗装されている:読書録「悪の処世術」

・悪の処世術
著者:佐藤優
出版:宝島社新書

次から次へと著作を出版する佐藤優氏の近作。
対談本あたりになってくると、
「さすがに粗製濫造では…」
と思わざるを得なかったりもするんですがw、ベースとなる「知識量」と、外交官時代の「経験量」には「さすが」と思わざるを得ません。
本作なんかは、その「本領発揮」の一作かもしれません。(ご本人にとっては「お蔵出し」かもしれませんがw)

現代世界史におけ

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