「夢をかなえてドラえもん」楽曲分析(書記が音楽やるだけ#6)

今回は,長らくドラえもんの主題歌を務めてきた「夢をかなえてドラえもん」についての楽曲分析を行う。


曲の情報

作詞作曲:黒須克彦

歌唱:mao,ひまわりキッズ

アニメ「ドラえもん」のテーマ曲で,「わさドラ」時代の2007年から2019年まで使われた。10年以上テーマ曲として使われ,幅広い世代の人々に親しまれてきた,その理由を探るための分析の試みを,以下行っていくことにする。


全体について

BPMは126,4/4拍子だが4分音符=3連8分音符である,そこで本記事では表記の便宜上12/8拍子で書くことにする。基本となるスケールはF major


イントロ

冒頭で基本的なリズム感を与えつつ,小刻みな動きが始まりを予感させる。

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Aメロ

基本となるコード進行は「1251」である。

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おおもとは「1-51」というドミナントモーションで,さらに5の前に2をつけることでツーファイブとなる。「1251」はツーファイブの型でも最もシンプルなもので,知っておくとよい。


メロディラインは,上昇からの下降という大きなフレームと,♩♪♩♪というリズムにより構成される。

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Bメロ

コード,メロディともに一旦落ち着くところ。歌詞の切なさと曲構造が見事にリンクしているスラッシュコードがあるのは,ベースラインを滑らかにするためだろう。

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後半では,明転するかのように暗さを取り払っている。ここではセカンダリードミナントが用いられており,サビへの期待感を一気に押し上げる。ここでは部分的に属調であるC majorを借りていると考えられる(Ⅵm→Ⅱ→Ⅴ7)。

また,Ⅱ→Ⅴ7→Ⅰ(サビ頭)の進行は,ドッペルドミナントからのドミナントと読むこともできる。

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サビ

Bメロまでで期待感を上げていき,基本となる「1251」がまさに示されるところがサビである。

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後半では,半音上昇sus4といった装飾が施される。

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メロディラインは,音域が高くなり,リズムがより多様になり,いかにもサビといった感じで盛り上げてくれる。

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ポイントは「1251」進行とBメロでの「暗→明」の流れ。全体を通して,まさにコード進行の手本そのものという感じ。わかりやすい曲調で,幅広い年代に受け入れられることにも納得がいく。


追記:間奏について

2番が終わった後の間奏はアニメでは流されないところで,流行への影響は少ないだろうから飛ばしてもいいところなのだが,一応取り上げておく。ここでの転調はなかなかトリッキーで,何の前触れなしにD♭ majorに飛ぶ。


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互いは同主短調の関係にあり,C7→D♭という半音階的な進行を経て転調する。


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8小節のみでありながらも割と忙しい。ベーシックなものもあるが,ここでしか使わないような隠し味的要素を含む場面である。


本記事のもくじはこちら:


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