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思い出「深夜の夜明け」

【レトロな車】

20歳の時。

友達の車で深夜、2人でドライブに行こうと言う事になった。

友達の名前は「葛西昭」くん。

彼が持っていた車は「GTS-T typeM」と言う車だった。

この車は、当時大人気だった「GT-R」の排気量ダウン版だという

排気量1998ccなのに、215馬力も出た化け物だ。

エンジンが、GT-Rと同じR-32と言う物を使っているらしい。

でも電装系が弱く、たまにヘッドライトが一瞬消えたりする。

マフラーの取り付けも悪く、走る振動で少し揺れる。

それもそのはず、この車は、中古車のノーマルタイプだった。

彼は、少し程度の悪い車を安く買ったのだった。

でも、GT-Rの弟分の車だから十分速いと言っている。

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【クルージング】

実際に乗ってみたら、確かに凄い加速が出る。

最大加速すると、かなりのGがかかり十分早く感じた。

でも、低速トルク仕様なのか高速では、伸びが悪い。

明らかにノーマルは、街乗り用のセッティングだった。

我々は、この車で一般道をドライブする事になった。

しばらく走ると、音楽を聴きながらの一般道ドライブにも飽きてきた。

そして我々は、高速道路を走ろうと言う事になった。

高速道路の入り口方面に走っている時、俺は少し眠くなってしまう。

そして、ウトウトし始めていた。

薄れゆく意識の中、前を走っている車の挙動がおかしい事に気が付いた。

俺は急いで、車を運転している友達に、前の車の事を伝えた。

そうしたら少し前からあの車は、挙動がおかしいと言う。

我々は、凄くヤバき気がして前の車から離れる事にした。

その瞬間、前を走っていた車が急加速し始めた。

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【深夜の衝撃】

我々は、何かおかしなことが起こっていると感じた。

そしたら急に、右側のコンクリートの中央車線に前の車が突っ込んだ。

その車は、大きく空中に跳ね上がり、右前輪が吹っ飛んでいった。

今度は、そのままスピードを緩めず左の方に走っていく。

そしてそのまま、民家に突っ込んでいった。

その時「ドカン!」という物凄い音がして、民家の1階部分を破壊した!

それを見た我々は、即左に車を止め救急車を呼び助けに行った。

事故を起こした車に向かう途中、我々の頭に嫌な予感がよぎった。

もし事故った車に近づいた時、車が爆発したら死ぬかもな?

民家の人も車に乗っている人も、確実に死ぬなと。

でも、止まるのはカッコ悪いし俺だけは助かるだろうと感じて向かった。

そして、事故った車に到着して中を覗き込んでみた。

そうしたら、5人乗っていてみんな意識があり無事なようだった。

しばらくすると、家の住人がパジャマのまま慌てて1階に降りてきた。

父親らしき人がこの光景を見て、ビックリしていた。

そして慌ててエンジン部分に消火器をかけ始めた。

俺は、この時周りを見渡したら、1階部分の駐車スペースが大破していた。

そして事故った車の中に目を向けると、5人とも放心状態で固まっている。

よく見ると、高校生か中学生らしき子たちが乗っていた。

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【事故処理】

しばらくすると、周りの住民もワラワラと集まってきた。

そして、やっと消防が到着する。

パトカー3台、救急車4台、消防車5台も来た。

この時は、もう完全にお祭り状態だった。

被害にあった住人の母親は、腰を抜かして座り込んでいる。

そこに警察の人が来て、事情を聴いていた。

そうしたらこの家の住人の父親が我々の方に向かってきた。

そして、お前らも仲間か?

そう聞かれたが、違うと答え事の事情を全部伝えて解ってもらった。

その後、事故を起こした少年達は、3名だけ救急車に乗せられた。

残りの2名は、パトカーに乗せられて事情聴取の為、警察署に向かった。

我々は、その場で30分位かけて事情を聴かれてしまった。

そうしている内に、1階の車庫に向けて消防車が勢いよく放水し始めた。

警察は、家が崩れる恐れがあるから全員離れてくれと叫んでる。

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【危険地帯】

放水が終わると消防隊員達が、どでかいジャッキを持ち出してきた。

大きさは、地面から1階の天井まであるジャッキだった。

それで家を支え始めた。

俺は、あんなジャッキがあるなんて信じられなかった。

俺は、この家の住人に警察が話している事が聞こえてきた。

どうやらこの家は、改修が必要でしばらく住めないらしい。

この家の住人は、都が用意する仮の家にしばらくの間住まないとならない。

家の改修費用は事故を起こした側の保険で支払ってもらうと言う事だった。

その話を聞き、この家の住人達は、荷物をまとめに家に戻っていった。

この時周りを見ると、50人位人が集まっていた。

道路を走っていて、たまたまこの状況に出くわした人も来ているようだ。

周りにはトラックや、乗用車も10台位止まっている。

この家の住人も、事故を起こした子達も、大災害だ。

それを思うと、どちらも可愛そうな気がした。

我々は、この場から立ち去り、ドライブの気分になれず家に帰っていった。

寝る間際にふと事故った時に吹っ飛んだ右前輪タイヤの事を思い出した。

あのタイヤは、今頃どこにあるのだろう。

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