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大学時代の後輩(現在大学4年生)と久しぶりに話す機会があった。彼がしきりに「くさっ」と言うので何が臭いのか気になっていたら、どうやら「草」と言っていたらしい。聞き間違いだった。
ネットスラングにおいて、笑うという意味で「草生える」という使い方があるようで、それをさらに簡略化し普段の会話に活用していた。ハハハ、と笑うタイミングで「草」と言う。言ってから笑う。「マジ草」「草すぎ」などバリエーションは豊富だった。

聞き間違いだと判明しても、しばらくは「草」という言葉に耳が慣れなかった。僕がジョークを飛ばしても笑うことはなく「ジェロニモさん、今のジョークは草ですね」と丁寧に草認定をしてもらうことに終始していた。

「YouTubeのネタ動画観てますよ。アレは『草草の草』ですね」

草だけでは表現しきれないほど面白いときは「草草の草」と言うらしい。要するに、面白ければ面白いほど草が生える、そういう原理のようだ。

お笑いのバトルライブにおいては、お客様の笑いの量によって勝敗が決定することが多い。その笑いが「草」だとしたら、お客様が笑った分だけ草を生やす「植林ライブ」というのがあってもいいのかもしれない。お客様がたくさん笑えば笑うほど、芸人は嬉しいし、地球に優しい。なんだか、素敵じゃないの。ネットスラングにも風情がある。
「草草の草」よりも面白いときはどうなるの?と聞いてみると、

「それより上は無いですね。つまり『無』です」

キングオブコント2019は2回戦で敗退した。とてもとても悔しかった。結果発表から数日は何をするにも身が入らないような、いわゆる無気力な日々を送っていたのだが、もしかしたらあれが無の正体なのかもしれない。だとしたら案外、悪いことではなかったのだろうか。

「すみません前言撤回します。『草草の草』の上、ありました。『大草原不可避』です」

無気力はやはり良くない。小さなことからコツコツと。草の根運動。雑草魂。

大きくて安い水