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人は結論がもっともらしいと信じてしまう 「信念バイアス」

「認知バイアス大全」マガジン

人間には頭の良さに関係なく非合理的に考えてしまったり、行動してしまう傾向があります。これを認知バイアスと言います。

ミューラー・リヤー錯視

これはご存知、ミューラー・リヤー錯視というものです。これ、わかってても下のほうが直線が長く見えます。この錯視に似て、認知バイアスもわかっていても影響を受けてしまいます。そんな認知バイアスを集めたマガジンがこちらです。


三段論法とは

三段論法は、A = B、B = C、ゆえにA = Cというもの。英語では「Syllogism(シュロギズム)」といいます。論理学における論理的推論の型式のひとつです。大前提と小前提と結論の3つの命題で構成されます。結論が真であるためには前提が真である必要と論理の法則に則っている必要があります。ここで問題です。

問題

2つの三段論法を紹介します。これらの結論は正しい(真)でしょうか?

例1
•すべての人間は、いつか死ぬ存在である。
•ソクラテスは、人間である。
結論:ゆえに、ソクラテスは、いつか死ぬ存在である。

例2
•10代の女の子は、みな野心的だ。
•10代の女の子は、よく勉強する。
結論:ゆえに、女の子は、野心家なのでよく勉強する。

答え

例1は、正しい(真)。しかし例2は間違い。結論はもっともらしいけれど、前提と合致していません。この前提からは、野心的なことと勉強することは、関連づけられないからです。

結論がもっともらしいとその説をなんとなく正しいと思ってしまうことのは認知バイアスのひとつ「信念バイアス」です。(※1)

信念バイアス

信念バイアス(Belief bias)とは

論理的に正しいが信念に反する主張よりも、論理的に間違っているが信念に合致する主張を信じる傾向

です。論理が間違っていても、結論が「言われてみたらたしかにそうだ」と思えるもの場合、人はつい信じてしまいます。

人間は「結論が大好き」

人間は、結論が大好きです。結論がわかりやすくまとっていたり、自分が信じていたものと合致していると、論理が破綻していても、人は信じてしまいます。これには、人間の判断機構が、システム1とシステム2というふたつのシステムで構成されていることが原因です

システム1は(早い)直感であり、システム2は(ゆっくりした)思考です。

思考であるシステム2は、システム1である直感が出した刺激を材料にして思考します。ゆえにシステム1が間違うとシステム2も間違えてしまいます

システム1とシステム2を詳しく解説しているのは、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』(すごく面白くて、わたしは人生観が変わりました)です。


信念バイアスの要素

時間:判断できる時間が短いほど、信念バイアスは形成されやすくなります。

倫理的な内容:政治や人道に関わる内容になると信念バイアスが形成されやすくなります。


対策・応用

認知バイアスの多くは、発生を避けることができません。そのため、自分を疑う、という習慣を形成することになります。

対策

直感を信じない。計算する。論理を確かめる。ルールを作って守る。

優れた投資家は自分の直感よりうえにルールを設けます。これはバイアスがあることを前提とした処置です。そして自分もまたバイアスの影響を受けると考えています。信念を強く持つというのは良いことにように思われますが、実際にはその信念の検証を怠ることに繋がります。信念よりもゴールを持つことのほうが有効です。それでもわたしたちは間違った行動をします。また間違っていなくとも、トラブルの原因になりやすい行動ををしてしまいます。なので、それを経験したら、ルールを形成するのが良いでしょう。「こうきたらこうする」というルール。ルールを作る起点は、失敗や後悔です。

後悔というと聞こえは悪いんですが、「ああすればよかった」という思考は実は有益。これについては反事実的思考で詳しく述べています。


応用

もっともらしい結論を用意しておく。

人に行動を起こさせたいとき、ロジックよりも「そうあって欲しい」と思うであろう結論を提示すると人は、ロジックよりも“美味しい”結論を信じる可能性が高いでしょう。

関連した認知バイアス

•反事実的思考
すでに起こった出来事に対して、実際に取った行動とは違った選択肢について考える傾向(前向きと後ろ向きがある)


確証バイアス(Confirmation bias)
仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向。



認知バイアス一覧

認知バイアスは200以上あるので、こちらの記事では一覧にしています。


参照

※1:Belief bias

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